
体験場所:宮城県仙台市青葉区 山中の廃神社
2018年の夏、俺が27歳の頃の話。
仙台に住む大学時代の友達、ケン(仮名)と一緒に、青葉区の山奥にある廃神社に行った。そこは地元ではちょっと知られたスポットで、20年くらい前に神主さんがいなくなって以来、放置されてる神社らしい。心霊スポットってほどじゃないけど、「なんかヤバい雰囲気」って噂があって、軽い肝試し気分で夜の10時頃に車で向かった。
場所は仙台市内から車で40分くらい。山道を登って、舗装も途切れた細い道の先に、苔むした鳥居が見えた。
駐車スペースもないから、手前の路肩に車を停めた。鳥居まで徒歩で5分くらい。ケンは「マジで暗えな、熊出ねえよな」って、懐中電灯にぎりしめてビビってた。俺もスマホのライトつけて、ジメジメした空気の中を進んだ。夏なのに肌寒くて、虫の声がやたら響いてた。
鳥居を抜けると、参道の石畳は草に埋もれてて、狛犬は片方倒れてるし、賽銭箱は錆びだらけ。社殿はボロボロで屋根に穴が開いてるしで、全体的に廃墟感がすごい。
ケンが「写真撮ろうぜ」とか言ってスマホ構えてパシャパシャやってたけど、俺はなんか落ち着かなくて、その場で境内をぐるっと見回してた。
そしたら、急に女の子の笑い声が聞こえた。「クスクス」って、めっちゃ近くで。
10mくらい先の社殿の裏側から聞こえた気がした。ケンはまだ写真撮ってて気づいてない。俺、凍りついて「なんか聞こえなかった?」って小声で言った。ケンは「は? 何も聞こえねえよ」とか言って笑ってたけど、俺がマジ顔だったから「マジかよ、ちょっと静かにしてみ」って、ライト構えて一緒に社殿の裏に向かった。
何もいない。
ライトが照らしたのは木々と雑草だけ。風もないのに葉がザワザワ動いてる気がした。
「気のせいじゃね?」ってケンは言うけど、俺はハッキリ聞いた。子供っぽい、でもなんか浮世離れした笑い声。
もう一回耳を澄ましたら、「ヒヒヒ」って、今度は別の低い声が境内の反対側からした。
「うわ、なんそれ!」って、今度はケンにも聞こえたらしく一気に二人そろってビビりモード。二人でライト振り回したけど、誰もいない。動物の声とも違う、人間の声だった。
「もう帰ろうぜ」って、怖くなって車に戻ろうとする道すがら、後ろから足音みたいなのがついてくる。振り返っても誰もいない。ダッシュで車に乗り込みエンジン掛けた瞬間、ダッシュボードに置いてた俺のキーホルダーが勝手にカタッて動いた。「やべえやべえ」ってケンは連呼してた。
帰りの車は二人とも無言。街の明かりが見えてやっとホッとした気がする。
後日、ケンの地元の先輩にこの話したら、「ああ、あの神社な。昔、あそこの山で、若い女が遭難して死んだって話があるな」って。詳細は不明だけど、戦後の混乱期に神主が村を出て、神社が荒れ始めた頃の話らしい。神主がいなくなったのは20年前どころじゃなかった。
ケンの先輩がそんなこと話すから、あとで地元の図書館であの神社の歴史調べたけど、特に怪奇現象の原因になりそうな記録はなし。ただ、近隣の山で、昔、行方不明者が何人か出たって記事が見つかった。
俺、霊感とか全くないけど、あの笑い声は絶対人間の声だった。動物や風の音じゃない。霊かどうかはわからんけど、実際説明つかないし、ケンも同じ声聞いたから気のせいじゃない。何かしら「そこにいるもの」だったとしか思えない。
なんであんな時間にあそこ行ったんだろって、今思うと後悔しかない。ケンは「二度と行かねえ」って今でも言ってる。もし仙台に住んでて、あの神社知ってる奴いたら、夜はマジで行かない方がいいよ。
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