体験場所:東京都某区の病院
これは、東京都某区のとある病院で働いていた時に体験したお話です。
私が今年の夏まで勤めていたその病院は、開業からまだ十年も経たない新しくて綺麗な病院でした。
もともと病院が出来る前、その土地には使われなくなった古い団地があったそうで、それを取り壊して病院が建てられたそうです。
また、近くには度々自殺者が出るという曰く付きの水門がありました。
これから話す事にそれらが関係しているかどうかは分かりませんが、私が勤めていた間だけでも、この病院では色々な心霊現象が起きていたので、その幾つかをご紹介させて下さい。

私が勤めていた職場は、療養病棟と呼ばれる部門でした。
もはや積極的な治療は施さず、患者さんが苦しまないように最後の時間を療養する為の病棟です。概ね月に1~2名の方が亡くなっていましたが、どういう訳か年の瀬やお盆などには立て続けに5名ほどが亡くなることもありました。
年末の時期、その病棟で私と他二名の看護師が夜勤をしていた時のことです。
夜中の3時頃、元々注意して観察していた患者さんの容体が急変しました。
急いで当直ドクターを呼んで診てもらったのですが、恐らく間もなくお亡くなりになるだろうという事で、私たちは直ぐに患者さんのご家族に連絡を取りました。
夜中だったこともあり、ご家族の方々も直ぐには来られず、ご家族の到着を前にその患者さんは亡くなられてしまいました。
ご家族が到着した後、ご遺体を一旦お風呂場に運び、そのお身体を綺麗に洗いました。
洗い終えて、お身体を拭くために新品のタオルを出したのですが、なぜかそのタオルには真っ黒い手形が付着していたのです。

私は気味悪くなり、そのタオルは捨てて、別な新品のタオルを出し、他の看護師と一緒に急いで作業を終わらせました。
その翌日のことです。
患者さんたちの様子がちょっとおかしかったんです。
「さっき、黒い服を着た集団が歩いていたけど、何かあったの?」
と声を掛けてくる患者さんがいたり、
「あっち行け!!」
と壁に向かって叫ぶ患者さんが大勢いました。
昨日亡くなった患者さんと関係があるのか分かりませんが、その日の院内の雰囲気は、なんだか妙に気味が悪かったのを覚えています。

私ではなく、他の看護師が夜勤をしていた夜のことです。
「もうすぐ家族が来るから玄関に迎えに行って」
と、ある患者さんに言われたそうです。
もう夜も遅いですし、不思議に思いながら、
「この時間は面会できないのでご家族は来られませんよ?明日のお昼に来られるんじゃないですか?」
とその看護師が答えると、突然ナースステーションの電話が鳴りました。
「〇〇さん(その患者さん)のご家族が来ているので、入り口まで迎えに来てください。」
と、病院受付のスタッフから連絡が入ったそうです。
時間は夜の9時過ぎ、面会時間はとうに終わっているのに。
(患者さんの体調が悪いわけでもないし、なぜこの時間に来るんだろう?)
と不思議に思いながら、ご家族を迎えに下に降りたそうです。
しかし、病院の入り口に、面会者の姿はありませんでした。
変だなと思いながら、看護師はその足で当直の受付スタッフに確認に行ったところ、
「面会希望者なんて誰も来ていませんし、私もそんな電話していませんよ?」
と言われたそうです。
そもそも連絡手段を持たない患者さんが、家族の来院するタイミングを知れるはずがありませんし、ご家族の方も、夜遅くに連絡もなく来るなんてことは考えにくいです。
それなのになぜ、あの患者さんは家族が来るなどと言ったのか…
それに、家族の来院を知らせる電話は一体誰が鳴らしたのか…
その看護師は気味悪そうに私に話してくれました。

他にも、ナースステーションの水道から勝手に水が出て止まらなくなったり、誰もいない部屋からナースコールが鳴るということも度々ありました。
療養病棟の患者さんは、ご自分で歩けない方がほとんどで、他の部屋まで行ってナースコールを押すなんてことはあり得ないですし、話すことが出来る患者さんも少ないので、ナースコールを鳴らすこと自体珍しいことなのですが…
なぜあの病院では度々こんな奇妙なことが起こるのか分かりませんが、少なくとも私が退職するまでの間は、このような現象が続いていましたし、恐らく今も続いているんじゃないかと思っています。
何年も入院されている患者さんも多いので、もしかしたら、亡くなった後も病院から出られないままなのでしょうか…
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