体験場所:神奈川県 K駅付近の某カラオケチェーン店
これは私が高校2年生の時、神奈川県K駅近くのカラオケ店で体験した話です。
当時、放課後に友達とカラオケに行くのが流行っていました。
でも、毎回同じメンバーで行くことに飽きてきた私達は、段々と『店まではみんなで行って、部屋は別々に分かれて1人カラオケをする』という流行りに移っていきました。(まだ1人だけでカラオケに行くのが恥ずかしかった年頃でした。)
その日の放課後も、女友達のA子とB子と私の3人で某有名カラオケチェーン店に行き、入口で分かれてそれぞれ1人カラオケをしようと約束をしていました。
そして放課後、じゃんけんで順番を決め、A子が最初に受付を済ませ6階の604号室に入っていきました。
次に私も受付を済ませようとすると、急にB子がモジモジして、
「私、実はまだ1人カラオケしたことなくて、いざとなったら恥ずかしくなってきて…だから今日は一緒にカラオケしよ!お願い!」
と言うので、仕方なく私たちは二人で、A子の部屋の隣の隣の部屋、602号室で一緒にカラオケすることになりました。
入室したのが16時半。
19時頃に店のフロントで待ち合わせの約束なので、時間はまだまだたっぷりありました。
私とB子はいつもと変わらず歌ったり踊ったり世間話をしたり、楽しい時間を過ごしていました。
どのくらい時間が経った頃でしょうか。
入店間もない17時頃に、A子から一通のメールが届いていたことに気が付いたんです。
『D君(A子の彼氏)に迎えに来てもらったので先帰ります。ごめんね。』
という内容のものでした。
そして間もなくしてD君からもメールが届きました。
『A子が電話口で泣き喚いていて慌てて迎えに行った。お前とB子にごめんって言ってる。もしかしたら支払いとかしてないかも。立て替えておいてもらってもいい?』
というような内容でした。
急にどうしたんだろうと不思議に思い、私たちはとりあえずA子がいた604号室に行ってみました。
すると、確かに伝票がそのまま置いてありました。それにカバンとか他の荷物もA子の持ち物が全部そのまま残っていて、慌てて出ていったことが窺えました。
「親戚が倒れたとか、そういう急用かな?心配だけど明日聞けばいっか。」
と話していると、テンションの上がっていたB子が「この機会に一人カラオケデビューする!」と言うので、604号室にB子を残し、私は1人で元の602号室に戻りました。
そして、別々の部屋に別れておよそ10分後のことでした。B子から慌てた様子で電話が掛かってきたんです。
「今すぐ604号室に来てほしい!」
電話口でそう捲し立てるB子の様子から、
(やっぱり1人じゃまだ恥ずかしかったかな?)
そう思って私は何だか可笑しくなり、とりあえず604号室に行って扉を開けました。
すると、部屋に入って直ぐのところに、呆然と立ち尽くすB子がいました。
何も歌っていないし、マイクも持っていない。ただ立っているだけ。それどころか、心ここにあらずと言うか、少しB子の様子がおかしいと思い、
「虫でも、出たの?」
と聞いてみると、B子はすごい勢いで首を横に振った後、
「…マイクの中から、声がする」
と、か細い声で言いました。
私には全くその意味が汲み取れず、
「マイク?マイクからする声って自分の声が跳ね返ってくるってこと?」
そう言うと、
「…違ったはず」
と、またしてもちぐはぐな答えが返ってきました。
(まさか心霊現象のようなことを言ってるのか?)
と、ここでようやく私も妙な雰囲気を察したのですが、それでも何が何だか分かりません。
このままB子に質問していても埒が明かなそうなので、とりあえず私は試しに当時人気だったJ-POPを流してみることにしたんです。
聞き慣れたイントロが流れ、次に液晶に歌詞が表示され始めました。特におかしな点は見当たりません。
ふとB子が使っていたであろうマイクを見ると、スイッチがOFFになっていました。
私は何の気なしにそのマイクを握り、スイッチをONにしました。
「あはははははははははははははははははははははは!!!!!」
途端に幼い少女のものと思われる笑い声がスピーカーから聞こえてきたんです。
心臓が飛び出しそうなほど驚いて、すぐにマイクのスイッチを切ったのですが声は止みません。
「あはははははははははははははははははははははは!!!!!」
気が狂いそうになる笑い声にB子は立ち竦んだまま涙目になっています。
私はとにかく音を止めようと演奏停止ボタンや音量をいじってみるのですが全く効果がありません。
そうこうしていると、次第に笑い声以外の声も聞こえてきて、
「ママ…」
「助けて…」
「(言葉が聞き取れないほどの苦しそうな叫び)」
そんな声がハッキリと聞こえて来たんです。
とっくに私たちは精神の限界を超えていました。
二人とも放心したままその声を聞き続け、A子はこれを1人で体験したんだな、と思うと涙が出そうになりました。
ようやく曲が終わると、声も全て聞こえなくなりました。
その瞬間、私もB子もブワーッと泣き出して、慌ててA子の荷物を持って部屋を飛び出しました。そのまま602号室の荷物も回収して逃げるようにしてそのカラオケ店を後にしたんです。
その日、家に帰るまで、私もB子もさっきの出来事は一切口にしませんでした。
お互い悪い夢を見たんだと信じ、必至に忘れようとしていたんだと思います。
次の日、学校でA子が昨日のことについて謝ってきました。
「一人だと怖くて、先帰っちゃった…ごめん!」
言葉を濁して何かに触れないようにしていることが分かりました。
やっぱり私たちと同じ体験をして、部屋を飛び出したのだろうと察しが付きます。
私もそれには触れないように、
「D君からもメールが来たんだよ。A子が電話で泣いてたから迎えに行ったって。優しい彼がいて良かったね。」
そう言うと、A子は不思議そうな顔をしてこんなことを言うんです。
「え?私、D君に電話した時、別に泣いてなかったけど?怖くて慌ててカラオケ店は出たけど、お店の前でD君に連絡して、そのまま歩いて待ち合わせの駅まで行ったから…」
「・・・・・・」
私はもはやそのことについては言及しませんでした。
A子の記憶違いであって欲しい…
D君が聞いた泣き喚く声があの声でなければいい…
そう願いつつ、私は言葉を飲み込みました。
(それにしてもなぜマイクの中に?)
今でも甚だ疑問は残っていますが、それを確かめる気にもなれず、それ以降604号室は使わなくなりました。
現在もその某有名カラオケチェーン店は、あの当時のまま営業しています。
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