【怖い話|実話】短編「母の霊感」心霊怪談(愛媛県)

投稿者:あおい さん(37歳/女性/在宅ライター)
体験場所:愛媛県M市

これは、私が幽霊の存在や霊感を信じるきっかけになった体験談です。

私の母は昔から自分には霊感があると言っていて、例えば、家族で転居先の物件を内覧していると、「部屋に誰かいる!」と言って騒ぎ出したり、職場に霊が出るという理由で転職を繰り返したりと、実生活でも度々トラブルを起こしていました。

「霊に憑かれて体調が悪くなった」
「女の生首が床から生えているのを見た」
「事務所が入っているあのビルはいわくつきに違いない」

などと言っては頻繁に仕事を辞める母に、霊感と呼ばれるものが微塵もない私からすると、同情するよりも半ば呆れていたと思います。

そんな日々を送るうち、いつしか母は、とあるお祓い師の下に通うようになっていました。
誰かの紹介がなければ会うことが出来ないというそのお祓い師は、知る人ぞ知る人物とのことでした。

知る人ぞ知るお祓い師
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お祓いの料金は相談者にゆだねられているとのことでしたが、母は絶対にカモにされていると思っていた私は、ある時、仕事の休みを取って母のお祓いについて行くことにしました。

向かった先は、愛媛県M市にあるお祓い師の住居。
のどかな田園地帯にある一軒家でした。
看板や目印が何もないので、見た目は何の変哲もない民家です。

その広い敷地内に車を停め、家に上がって長い廊下を進んで行くと、通されたのは立派な神棚のあるお座敷でした。

室内は日当たりが良く、大きな窓からはきれいに手入れされた中庭を見渡すことができます。
そのお座敷は、座っているだけで何故だか心が落ち着いていくような、不思議な空間でした。

初めて会ったお祓い師の方は、物腰がやわらかく、とても優しい声をした女性でした。

母はその頃、学校給食の調理場で働き始めたばかりだったのですが、何をしても治らない原因不明の腰痛に困っており、それについて相談する予定でした。

ですが、二人は他愛のない世間話をするばかりで、なかなか本題に入りません。

(母はお祓いというより、お喋りをしたくてここに来ているのだろうか?)と、拍子抜けしながらお茶を飲んでいると、唐突に、それまで笑みを浮かべていたお祓い師の女性の雰囲気が一変しました。

女性は視線をまっすぐ玄関の方向に向け、数珠を手に立ち上がりました。
その表情からは完全に笑顔が消えていて、氷のように冷たい表情に母も私も言葉を失いました。

部屋の空気がシンっと静まり返った、その時でした。
私の耳に、遠くから何かを叫ぶ男の人の声が聞こえました。

お祓いは完全予約制なので、相談中に他の人が訪ねて来ることはありません。

(配達員の人でも来たのかな?でもそれならどうして、この女性は1歩も動かないのだろう?)

そんな事を考えていた次の瞬間、突然右側からものすごい衝撃音がしました。

それはまるで、部屋の壁の向こう側にずらっと人が並んでいて、端から1人ずつ『ドン!』『ドン!』『ドン!』『ドン!』と、尋常ではない勢いで壁に体当たりをしているような音でした。

壁の向こうの音
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壁が壊れてしまうのではないかと思うほど激しく、私はなぜかその音に強烈な悪意のようなものを感じました。

呆然としているうちに、衝撃音は止み、私と母は黙って顔を見合わせました。

その後、私たちはすぐに神棚に手を合わせ、女性にお経を読んでもらってお祓いが終わりました。

後で聞いた話ですが、母と女性には、玄関の方から男の叫ぶ声がハッキリと聴こえたそうです。
その男は、翌日訪れる予定の相談者に憑いていた霊らしく、自分が祓われるのを阻止しようと、お祓い師の家の中に乗り込んで来ようとしていたとのことです。

目に見えない”何か”が、物理的にあれほど凄まじい音を出せることに私は恐怖を感じ、(もしもあの音の正体が家の中に入ってきていたら…)と思うと、背筋が凍る思いがしました。

「驚いたでしょう、ごめんなさいね」

と、何でもないことのように笑っていた女性が印象的でした。

それからというもの、母は嘘のように腰痛から解放されていきました。
いつも青い顔をして、階段を這うように登っていた姿を見ていただけに、それは信じられない回復ぶりに思えました。

因みに、母にも見えていなかったらしいのですが、お祓い師の女性には、悟られないように母の腰にしがみついている女の霊がハッキリと見えていたそうです。

母の腰にしがみつく女
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まさかと思って調べてみると、母が働く調理場では、過去に亡くなった女性がいたことを知りました。

それまでどこか半信半疑だった私は、今では母の話にきちんと耳を傾けるようにしています。

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