【怖い話】人間が一番怖いと思う実話|短編「道を聞く男」東京都の恐怖怪談

投稿者:ぬんとぅん さん(40代/女性/自由業/山梨県在住)
体験場所:東京都N区
【怖い話】人間が一番怖いと思う実話|短編「道を聞く男」東京都の恐怖怪談

以前、東京N区の同じ職場で働いていた女性の話です。

その女性は出身地方が主催するミスコンを中心に、いくつものミスコンタイトルを持っていました。

当然ながらスタイルが良く、美人で、ハキハキとした、第一印象の魅力的な方でした。

ある時など、たまたまお昼休みにランチに出た先の人混みで見かけた際は、周囲がかすむくらいに、余りにその彼女が目立つので驚いたことがあります。
似たような年齢、似たような服装のOLの群れがひしめくビルの谷間で、大げさではなく、そこだけ光が射すように彼女の姿がはっきり見えるのです。
それくらいに圧倒的な美しさを持った女性でした。

仮に名前をMさんとしておきましょう。

Mさんは、上京して一人暮らしをしていました。

当時勤めていた会社は時間的に不規則で、しばしば帰りが遅くなることもありました。

終電が終わった場合はタクシーで帰宅することもあったのですが、そんな時はもうへとへとで、夕食を作る気力なんてあるわけがありません。

Mさんは自宅マンションからほど近いコンビニエンスストアの前でタクシーを降りて、お弁当やおかずを買い、徒歩で1~2分、ほんの目と鼻の先にあるマンションへと帰っていました。

わずかな距離とはいえ、深夜にそんな美人が一人歩きをすることを誰もが心配しましたが、大柄で運動経験も豊富だったことが気を緩ませるのか、Mさん本人はあまり気にしていないようでした。
おおらかな土地柄の地方出身だったことも関係しているのかもしれません。

Mさんは結局、周りの心配を他所に、深夜でも構わずいつも同じコンビニエンスストアに寄って、いつも同じルートで家に帰っていたと言います。

ただ、仕事がら時間は不規則で、コンビニエンスストアに立ち寄るタイミングは日によって3~4時間は前後するのが常でした。

ある夜、Mさんがコンビニエンスストアを出ると、

「あの、すみません…」

見知らぬ男にそう声を掛けられ、道を聞かれたのだそうです。

もちろん社交的なMさんは親切に笑顔で対応しました。

ところが、その翌日も、

「あの、すみません…」

と、昨日と同じ男が道を聞いてきたのです。

Mさんは(あれ?)と思ったものの、かと言って大して気に留ることもなく、昨晩と同じように笑顔で対応したそうです。

ですがそれからと言うもの、その翌日、さらに翌日も、それから毎晩Mさんは同じ男に道を聞かれるようになったのだそうです。

そんなことが半月ほど続いた頃、流石に寛容なMさんもおかしいと気が付いたのでしょう。職場で私たちにそのことを話してきたのです。

しかし、それでもMさん本人にとっては少し不思議だなという程度で、ごくごく軽い世間話のように笑いながら、そんな気味の悪い話をしていたのが印象的でした。

そんなMさんの態度とは対照的に、話を聞いた私たちの誰もが驚き、痴漢やストーカーかもしれないから直ぐに警察に相談することを勧めたんです。

その夜も、仕事がなかなか片付かず、Mさんの帰宅は遅くなりそうでしたが、話を聞いていた周囲が気を使いMさんは早めに帰されました。

いつもより早い時間だったので、Mさんは電車で帰路につき、駅からの道を歩いていつものコンビニエンスストアへ向かいました。

そして買い物を済ませ店を出ると、

「あの、すみません…」

やっぱりまた同じ男が道を聞いてきたのです。

周囲の注意もあり、さすがに警戒していたMさんは、よくよく相手を見てみました。

すると、毎日同じ道を聞いてくる男性は、同じ男であるだけでなく、服装も毎日同じであることに気が付きました。

その日も男はいつもと同じ駅までの道を聞いて、いつもと同じように会釈をして通り過ぎて行きます。

ですが、Mさんはたった一つ違うことに気が付きました。

時間です。

一昨日とは4時間以上、昨日とだって3時間は帰宅時間が異なっています。

考えてみるとこれまでも、なんなら6時間以上帰宅時間がずれていたこともあった・・・

それなのに、いつも私がコンビニエンスストアに立ち寄る度にこの男性は声を掛けて来る…

つまり、この男は私に道を聞くために、毎日何時間もここで待っているのかもしれない・・・

しかもこんな夜遅くに・・・

そのことに気が付いたMさんは流石に怖くなり、コンビニエンスストアに戻って店員さんに助けを求めました。

すると、実は店員さんも毎日何時間も店を出たり入ったりを繰り返している男がいて、不審に思っていたと言うのです。

流石にこれはMさんに対するストーカー行為だろうと気付いた店員さんは、コンビニエンスストアの店長さんへ相談。店長さんの計らいで、その晩は店長さんの奥さんが自宅まで付き添ってくれることになりました。

そのまま数日の内にMさんはお付き合いしていた男性の家へ引っ越して、ついでにそのまま結婚してしまったのでした。

その後、男の姿を見かけることはないと、Mさんは言います。

もしかしたら、最初は本当に道を聞いただけだったのかもしれない。
でも、美しいMさんがハキハキと笑顔で親切に対応してくれたことが嬉しくて、毎日話しかけるようになり、結果的にストーカーになってしまったのではないか・・・

後になって、Mさんはそのように旦那さんに指摘されたそうです。

以後、Mさんは強い防犯意識を持つようになったようです。

実際のところ、その男が何者だったのか、真実は今も闇の中です。

ですが、仮にその男がやっぱりストーカーだったとして、Mさんに声を掛けるためだけに、毎晩、毎晩、何時間もコンビニエンスストアをうろついていたのかと思うと、そういう執念って、少しぞっとします。

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