心霊スポット:石川県金沢市「野田山墓地」
この話は今から10年前、私の身に起きた少し不気味な体験になります。
場所は私が住んでいる石川県内の金沢市にある野田山墓地。
高台で景色が綺麗な所ですが、地元の有名な武将一族のお墓があるという事もあり、
「落ち武者の霊を見た」
「白い着物を着た霊を見た」
「帰り道、車の上に人がしがみついている霊を見た」
などの怖い噂が絶えない地元では有名な心霊スポットです。
当時の私は高校を卒業し、自動車の免許を取得したばかりで、少し大人になれたような嬉しさもあって、夜な夜な友人と家を抜け出してはドライブを楽しんでいました。
幽霊なんか万に一つも信じていなかった私は、当時、友人達と気になる女の子を誘って心霊スポットを訪ね歩き、男女ペアになって肝試しに赴くという、ストレートに吊り橋効果を狙った遊びに夢中になっていました。なんといっても男の子ですからね。
その日も男女3:3で、心霊スポットを巡るドライブに出ました。
女の子が怖がる姿にドキマギしながら色々な心霊スポットを巡り、最終目的地である野田山墓地に到着した頃には深夜3時を過ぎていました。
余りに時間も遅いので、長居はせず、墓地から少し歩いた所から見える夜景を眺めたら帰ろうということで話はまとまり、駐車場に車を停めて私たちは6人で歩き出しました。
すると、墓地に近付くに連れ、遠くの方から何やらボソボソと『声』のようなものが聞こえてきました。空耳ではありません。私だけではなく、みんなに聞こえていましたから。
「もうムリ!!」
そう言って女の子たちは怖がって、やっぱり車に戻って行ってしまいました。
ただ、私たち男連中は気になってもう少しだけ進んでみたのですが、すると、直ぐに声の出所が判明しました。
声は、そこにあった建物から聞こえていて、もう少しだけ建物に近付いたところで、それが『お経』だということが分かりました。
建物には灯りが点いていて、おそらく2~3人くらいの声が、一定のリズムでお経を唱えているのが中から聞こえてきます。
まわりの空は少しずつ明るんできていました。
「お坊さんはこんな朝早くからお経あげて、大変やなぁ。なんか俺たち遊びまわってるのが申し訳なくなってきたわ。」
そんな友人の一言もあって、私たちは直ぐに回れ右をして駐車場に戻り、そのまま帰路に就いたのです。
翌日、私は別の友人の家に誘われ遊びに来ていました。
そこで昨夜の出来事を話すと、その友人はこんなことを言いました。
「俺、けっこう野田山墓地に肝試しに行ってて、その時間帯も行ったことあるけど、お経なんか聞いたことないぞ?それに、そもそもそんな建物あったか?」
その日は私も友人も他に用もなかったので、私たちは確認がてら、二人で再び野田山墓地に向かってみることにしました。
到着したのは深夜23時過ぎ。
車から降りると、深夜とは思えない生暖かい空気が頬を撫で、やっぱり気味の悪さを覚えます。
駐車場から少し歩くと、やはりそこに昨日の建物がありました。
「ほら!やっぱりあるじゃん!あの建物で昨日お坊さんがお経あげてたんだよ」
そう言って、私は勝ち誇ったように建物を指差すと、一気に友人の顔が引き攣っていくのが分かりました。
「いや…お前、あの建物って…まあ後でいい。とりあえず帰るぞ」
友人はそう言うと、私の手を強引に引っ張って駐車場まで戻り、急いで車に乗り込むと、無言のまま坂を下って行きました。
坂の下の赤信号で止まると、ようやく友人は一呼吸いて、こちらに怪訝な目を向けこう言いました。
「お前、あの建物、ただの公衆便所だぞ。」
私たちが聞いたあのお経は一体、誰が誰に向けて上げていたものなのでしょうか?
無念のまま死んでいった落ち武者への供養なのか?
肝試しに行った6人が全員聞いていたのです。
おそらく勘違いとかではないはずです。
ただ、その件について、私にはそれ以上調べる勇気はありませんでした。
それ以来、私はきっぱり肝試しに行くことはなくなりました。
以上が私が体験した不気味な話です。
コメント