【怖い話|実話】短編「ベランダの影」心霊怪談(群馬県)

【怖い話|実話】短編「ベランダの影」心霊怪談(群馬県)
投稿者:ちぇんらい さん(30代/女性/専業主婦)
体験場所:群馬県前橋市 自宅近く

私の家の近所には不思議な一家が住んでいます。

ご近所さんと挨拶や会釈を交わすこともなく、どことなく表情の乏しいご家族です。

私の知る限り、その一家のご近所トラブルが原因で数回は警察まで来たことがあり、我が家でも事情を聞かれたことがあります。

私の家の窓からは、その一家の家の二階のベランダが見えるくらい近くに住んでいますが、それまで私の家族には直接的な被害はなかったので、とにかくその一家には不必要に近付かないよう注意しながら生活をしていました。

そんな頃でした。

その一家に嫌がらせをされていると言う近所の奥さん(Kさん)と、私はとても仲良くなりました。

一緒にランチに行ったり、庭で世間話をしたり、子供同士仲良く遊ばせたり、とても気の合う関係になりました。

ただ、私とKさんが外で立ち話をしていると、必ずと言っていいほど問題の一家の奥さんが私たちの様子を窺うように表に出てくるようになったのです。

私はあまり気にはしなかったのですが、それまで私と楽しく会話していたKさんは眉間に皺を寄せ「また嫌がらをせしている。きっと私たちが仲良くしているのが気に食わないから見てるんだと思うよ。」と言っていました。

そんなことが度々続いたある夜のことです。

ふと窓の外を見ると、例の家の二階のベランダに人影がありました。

おそらく奥さんの人影です。

もう洗濯物を干す時間でもありません。

「え?もしかして、また見られてる?」と思って咄嗟に顔を逸らし、直ぐに視線だけそちらに向けると、既に人影は消えていました。

時間にして1秒ぐらいだったと思います。

また別の日の同じような時間帯のことでした。

出先から夫と一緒に帰宅し、カーテンを閉めようと窓に向かうと、窓の向こうのベランダに、またもや人影が佇んでいました。

え?っと思って目を逸らし、直ぐに見直すと、やはりその人影は消えていたのです。

夫もその様子を見ていて、「あれ、なに?今、いたよね?」と二人で顔を見合わせました。

でも、他所の家のベランダに人影があるだけのことで、特に対処する事も思い付かず、ましてやすぐ消えてしまうので、それが何なのかもはっきりとは分からずにいました。

その後も例の家のベランダから度々視線を感じることはあるものの、私はそれを無視していたのです。

Kさんとは相変わらず仲良くしていたものの、あまり事を荒立てるのも嫌で、私はこのことはKさんには言わずに過ごしていました。

そんなある夜でした。
例のベランダの人影が、今までとは全く違う何かに変化していたのです。

その夜もベランダからこちらの様子を窺っている人影に気が付き、ふっと目を向けた瞬間私は驚きました。

影の顔の部分が10倍ぐらいに膨れ上がっていて、もはや人影とは呼べないような形状をしていました。

しかもそれは、いつものようにぼんやりした影ではなく、もはや漆黒の闇のような暗さなのです。

「ついにやばいものになってしまった!」

そう思って、私はすぐにカーテンを引きました。

その後も度々現れる影は、その度に顔だった部分だけがぐちゃぐちゃと姿形を変え、時には屋根上まで伸び上がっていたこともありました。

夫もたまにそれを目にしていて、私たちはそれが何なのか二人で話し合い、ある仮説を立てたのです。

「…あの人影は、あの家の奥さんの生霊なのではないか。」

ご近所同士で仲良くしている私とKさんを妬みながらも、その様子がどうしても気になって、遂にその思念が生霊となって、外の様子が一番よく見えるベランダに現れたのではないか、と。

それについて、さすがにこんな話は引かれるかもしれないなと思いながらも、私は思い切ってKさんにも相談してみました。

するとKさんは全く疑うこともなく私の話を聞いてくれた上で、こんなことを言いました。

「本当に今まで嫌がらせされ続けてきたから、生霊を出しちゃうぐらい執着の強い人なんだと私も納得するよ。私たちが仲いいのが羨ましいんだと思う。もうこれ以上刺激しないように、私たちはあの人の目が届くような場所では話さない方がいいのかもしれないね。」

私もそれについては納得しました。

今でもKさんとは仲が良いのですが、外で会話をする時はあの一家が不在の時を見計らってするようにしています。

ベランダの生霊らしき影は、今では見ることは少なくなりましたが、今後も注意して生活しなければならないと思っています。

どんな事情があるのか分かりませんが、妬んだり恨んだりすると、あんなに真っ黒な影が自分から出てきてしまうのかと思うと、すごく怖いです。

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