体験場所:埼玉県にある某ファストフード店(店名は控えさせて頂きます)
私が高校生の頃、埼玉県のとあるファストフード店でアルバイトをしていた時の話です。
その日も一日学校が終わり、夕方からアルバイトに行きました。
一日中生暖かいジメジメした風が吹く日で、それに体育の授業で疲れていたせいもあってか、その日はどうも足が重くて、アルバイト先に到着したのは遅刻ギリギリの時間になってしまいました。
私が働いていたお店は大きな通り沿いにあるお店で、お昼時はもちろん、夜もドライブスルーの利用客が道路にはみ出すほどに溢れて、地域でも混むことで有名なお店でした。
でも、どういうわけかその日だけは、21時辺りを境にパタリと客足が止まり、店内にはスタッフしかいないような状況がしばらく続いていました。
ドライブスルーを担当していた私も暇を持て余してしまい、今か今かとお客さんが来るのを待っていました。
するとしばらくして、「ポーン」と、ドライブスルーの受付用パネルに車が近付いたことを知らせる合図音が鳴りました。
ようやくお客さんだと思って、私はマイクを通して注文をとります。
「いらっしゃいませ。ご注文お決まりでしたらお伺いします。」
そう元気にお声掛けしましたが、しばらく待っても全く返事がありません。
「どうしたんだろう?」と思うと同時に、「そういえば、車のエンジン音が聞こえないな?」という事に気が付きました。
あれ?っと違和感を感じながら、監視カメラで外の様子を確認してみると、ドライブスルー窓口の前には車も人の姿もありません。
なんだろう?受付用パネルのセンサーが壊れたかな?と思い、外に出て機械を確認してみましたが、特に不具合は見つかりません。
おかしいな?と思って、そのまま店の周囲を見渡してみると、誰もいない、風の音だけが耳に残る店外の様子に、何だか気味が悪くなってきた私は、すぐにお店の中に戻りました。
そのまま、出来るだけ外を見ないようにしていると、「ポーン」と、またセンサーの反応音が鳴りました。
恐る恐る、再びカメラで店外の様子を見てみるのですが、やっぱり誰もいない。
車も人も、誰の姿も映っていないのです。
いよいよそこに一人でいるのが怖くなり、私はすぐに店の奥の方に駆け込んで、そのまま店舗マネージャーに今自分が体験したことを伝えました。
すると、マネージャーは私の話を聞いた後、眉間に皺を寄せて少し険しい顔しながらこんなことを言うんです。
「ずーっと昔のことだけどね、この辺り一帯は古戦場だったんだ…」
マネージャーの話によると、650年ほど昔の事、新田義貞という群馬の武将が鎌倉幕府を落とすために挙兵し、その幕府軍と衝突して合戦の火蓋が切られたのが、ちょうどこのお店の辺りの地域なのだとか。
その日の勤務後、私はマネージャーの話が気になって、自分でも昔の合戦の詳細について調べてみたのですが、すると驚くべきことが分かったんです。
私が店で変な現象を体験したその日は、5月11日。
そして、かつてこの地域で血で血を拭う合戦が起きたのも、5月11日だったのです。
気が付いたら体中に鳥肌が立っていました。
翌日、私は熱を出してしまい、とても辛かったことを覚えています。
その週末の土日、シフトが入っていたため仕方なくバイトに行くと、ドライブスルーの映像を映し出すモニターが故障したとかで、電源がオフになっていました。
実際、電源を点けてみても砂嵐が映し出されるだけでした。
いつ故障したのかと他のスタッフに聞いてみると、故障に気が付いたのは5月12日とのこと。
私が怪現象に遭遇した翌日のことだったようです。
もうその日は原因不明のモニターの故障や、先日の怪現象のことで頭がいっぱいで、全く仕事に集中できずにミスばかり繰り返してしまいました。
それからというもの、バイトへ行くのも気が重く、いつからか体調まで崩して学校も休みがちになった頃、心配した両親に説得されてアルバイトを辞めることにしました。
すると次第に体調も回復し、今は元気に学校に通えています。
今でもあの時の事を思い出すと、鳥肌が立つほど気味が悪くて、友人達に誘われてもあの店にだけは絶対に行かないようにしています。
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