体験場所:東京都町田市
これは私自身が体験した話です。
私が大学生の頃のある夜、一人暮らしをしているアパートの一室でくつろいでいると、突然携帯電話に知らない番号から電話が掛かってきました。
いつもは知らない番号からの電話には出ないことに決めているのですが、その日は気が緩んでいたのか、なぜかその電話に出てしまいました。
「もしもし」と応答すると、電話口の向こうから「覚えてる?」という男性の声が聞こえてきました。
全く聞き覚えのない声だったので、「誰ですか?」と電話口の相手に伝えると、「山田だよ」と答えが返ってきました。ですが、私はどの山田さんなのか全く見当が付きません。
もう少し詳しく聞くと、どうやらその電話口の相手は小学校時代に転校していった山田くんだと判明しました。
もう10年以上も会うことなかったので、若干の緊張感を抱きつつ、「久しぶり」と私はとりあえず応えました。
この段階で私の頭の中を一気に色々な疑問が駆け巡りました。
「彼が私に一体何の用なのか?」
「どうして今頃になって連絡を?」
「当時から別に仲が良いわけでもなかったのに、なぜ?」
「そもそもどうして彼が私の携帯番号を知っているのか?」
など疑問は尽きません。
少し戸惑ってしまった私は「何か用?」と、ひとまず彼に聞きました。
すると山田くんは、「借りていたモノを返したい」と言うのです。
私は彼に何も貸した覚えはありません。
一体どういうことなのかと思い「なにか貸してたっけ?」と聞くと、山田くんは「アレだよアレ」と言うだけで、なかなかそのモノの正体を教えてはくれません。
すると山田くんから、「借りたモノを返したいから、明日会えない?」と言われました。
そう言われた途端なんだか直感的に恐怖心が込み上げて、「ごめん、予定があって会えないわ」と咄嗟に嘘をついて電話を切りました。
電話を切った後もなぜか動悸が治まらず、ひとまずお茶を飲んで落ち着いて、その日はそのまま眠ることにしました。
その後、大学の授業が忙しくなり、山田くんから電話があったことは完全に忘れていました。
ですが、あの電話から3ヶ月ほどが経った頃、テレビを見ている時に偶然『山田』という名前がふと目に入り、そう言えばと先日の山田くんからの電話のことを思い出しました。
携帯の履歴を調べると、確かに山田くんから電話が掛かってきた記録が残っていました。
「貸したものって一体何だったんだろう?」
あの時は怖くなって嘘を付いて電話を切ってしまいましたが、今になって思い返すと、山田くんの言う『借りたもの』がどうしても気になってしまい、今度はこちらから電話を掛けてみることにしました。
プルルル・・・プルルル・・・
と、確かに何度か呼び出し音が鳴りました。その後で「この電話番号は現在使われておりません」という自動アナウンスが流れたのです。
「…え?」
先日掛かって来たばかりの電話番号が既に使われていないのも不信でしたが、それ以上に、そもそも自動アナウンスって呼び出し音の後に流れるものでしたっけ?
仮に山田くんがこの3ヶ月の間に訳あって電話を解約していたとしても、使われなくなった番号で呼び出し音が鳴るなんてことはないはずです。
一体どういうことなんだろうと思い、大学が休みの日を利用して、小学生時代の同級生で、かつ私の携帯番号と山田くんのことを知っている友人に片っ端から電話を掛け、私の携帯番号を教えたか確認しました。
結果は皆一様に「教えていない」の一点張り。
そもそも友人たちは漏れなく皆、山田くんのこと自体あまり覚えていないようでした。
だとすると、山田くんは一体誰から私の携帯番号を入手したのか。
それに彼が私から『借りたもの』とは一体なんだったのか。
結局、今なお真相は分かっていません。
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