
体験場所:山形県上山市
数年前、山形の実家で飼っていた犬が死んだ。
名前はココ。茶色い雑種で、性格はおだやかで人懐っこかった。
私が20歳くらいの時に飼い始めた犬で、すごく長生きしてくれて、17年。大往生だったと思う。
ココは、家族だけじゃなくて、ご近所の人たちにも可愛がられていた。
その頃には私は結婚して宮城に移っていたので、これは母から聞いた話。
母がココを散歩に連れて行くと、いつも立ち寄る総菜屋さんがあって、ココはその店が本当に好きだった。
おかみさんが、コロッケとか唐揚げをちょっと分けてくれるらしい。
母が総菜屋さんとは違う道に進もうとすると、ココはぐいぐいとリードを引っぱって母をお店のほうへ誘導する。お店の前まで来ると、しっぽをぶんぶん振って、それはもう嬉しそうにしていたそうだ。
ドックフードを食べず、常に人間の食べ物を狙っていたような犬だったので、ココにとって総菜屋のおかみさんは神様のような存在だったのかもしれない。
ココが亡くなって数日が経った頃、その総菜屋さんにふらっと一人の女性客が来たらしい。
その人は買い物をしてる途中でふとこう言ったそうだ。
「……あれ? お店の入り口に茶色い犬が来てますよ」
おかみさんは外を見た。
けど、そこに犬の姿はない。
辺りを見回しても、どこにも犬の姿はなかった。
「あれ?おかしいな~」
女性客も狐につままれたような様子。
「どんな犬だったの?」っておかみさんが聞いたら、
「中型で、柴犬みたいな、茶色の犬でした」って。
その時、おかみさんの頭にすっと浮かんだのが、ココの姿だった。
ああ、サトミさん(母)のところのココちゃん、亡くなったって言っていたな…
もしかしたら、ココちゃんが最後にあいさつに来てくれたのかもしれないなって、おかみさんは思ったらしい。
後日、母がそのお店に立ち寄った時、おかみさんが、「ねえ、この前ね、こんなことがあって…」と話してくれたそうだ。それからしばらくして私が実家に帰った時、母がその話を聞かせてくれた。
私はただ、「犬でも、そういうことがあるんだなあ」って思った。
実は、父が亡くなった時にも、ちょっと似たようなことがあった。
近所の人の枕元に父が現れて、「サトミをよろしく」って言ったらしい。
葬式の時、その人が泣きながら話してくれたのを思い出す。
人って、本当に大切な思いは、ちゃんと伝えに来るのかもしれないなと思った。
たぶん犬だってそうなんだろうなと思うと、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。
ココはコロッケの恩義を忘れずに、最期に神様のところへ挨拶に行ったのだろう。
……ちなみに、私のところには、ココは来なかった。
結婚して宮城に移って、年に1回くらい帰省するだけだったから、忘れてたのかな?
実家にいた時、私はけっこう可愛がってたつもりなんだけど。
ちょっとだけ、悲しい…。
でも、私、霊感とかまったくないから、もしかしたら、来てくれてたのに気づかなかっただけなのかも。多分そうだと自分を納得させている。
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