【心霊スポット】神奈川県|観音崎の怖い話「非日常」実話怪談・短編

【心霊スポット】神奈川県|観音崎の怖い話「非日常」実話怪談・短編
投稿者:joy さん(22歳/男性/学生)
心霊スポット:神奈川県横須賀市観音崎

あれは、私が日々の生活にマンネリを覚え、何か面白いこと、刺激的な非日常を求めていた大学3年の夏のこと。友人の田中(仮名)と一緒に横須賀市の観音崎へ肝試しに行った時のことだ。

観音崎は観光地として知られ、灯台や美しい海岸線が広がる名勝地だ。
しかし地元では、「夜になると女の霊が出る、日本兵の魂が彷徨っている」などと噂された。おそらく戦時中の旧日本軍の要塞跡や軍事施設跡が点在していること、そうした歴史の重さがこの噂の信憑性を担保しているのだろう。中でも「旧観音崎トンネル」は地元の若者の間では特に有名な心霊スポットだった。

田中がそこを目指そうと提案してきた時、正直私は気が進まなかった。やはり前述の噂話が引っ掛かっていたからだ。しかし、「そんなの信じてんの?ただの噂だろ」と笑う彼の言葉に気圧され、私はしぶしぶ同意することになった。

8月のその夜、ジッとしていても汗がにじむ蒸し暑さのなか、私の運転する車で現地へと向かった。

近くに車を停め、辺りに外灯はないが月明かりを頼りに歩いて目的地へと向かう。するとそこに昼間とは全く違う姿のトンネルが現れた。

昼間はただの古い穴道にしか見えなかったが、夜のトンネルはまるで異界への入り口のような闇が奥まで続いていた。その姿に田中もたじろいでいるのが分かる。

とにかく田中がまず一歩目を踏み出した。
懐中電灯を片手にトンネル内を進む。冷たい空気が肌を撫でる。さっきまでの蒸し暑い夏の夜はどこへ行ったのか、鳥肌が立つような寒さだった。

5分ほど歩いた頃、突然「ザッ……ザッ……」という足音が後ろから聞こえ、振り返ったが、誰もいない。

「おい、今の……聞こえたよな?」と田中が言う。

私は、良かった聞こえたのは私だけではないと安堵し、頷いた。
(きっと風の仕業だろう)と私は自分に言い聞かせた。

さらに奥へ進むと、今度は壁に設置された古びた非常灯が一瞬、赤く光ったように見えた。田中も気が付いたようで「壊れてるのかもな」と言った。私はすでに引き返したい気持ちでいっぱいだった。

ようやくトンネルの逆側が見えてきて、ホッと気が緩んだ瞬間だった。

「……かえして……」

不意に耳元で女性の声が聞こえ、私は凍りついた。

田中を見ると、顔が青ざめている。
「今の、聞こえたか?」と聞くと、声が出せないのか田中は無言で頷いた。

瞬間、田中が振り返ってダッシュした。私もそれに釣られて全力でトンネルの入り口を駆け抜け車へ戻った。慌ててドアを開いて中に乗り込むと、肩の力が抜けると同時に背中がびっしょりと汗で濡れているのに気がついた。夏の夜の蒸し暑さが戻っていた。

その後、近くのコンビニに立ち寄り、冷たい飲み物を買って、少し落ち着けたと思う。

再び車に乗り込むと、誰もいないはずの後部座席の窓に、フウっと手形が浮かび上がった。
驚きはした。けどさっきのトンネルの経験で恐怖感覚がマヒしていたのか、その時は自分の車に何をすると腹が立ち、まず後部座席を覗き込み誰かいないか確認した。が、やはり誰もいない。

直ぐに手形を拭き取ったが、再び薄っすらと浮かび上がってくる。拭いても拭いても、なぜかその手形は完全には消えなかった。

それから家に戻って数日間、私の部屋では奇妙な現象が続いた。夜中に勝手にテレビがつく。来客もないのに玄関のチャイムが鳴る。枕元に誰かが立っている気配で何度も目が覚めた。

仕方なく地元の寺でお祓いを受けると、ようやく現象は収まった。

私は一体あのトンネルから『何』を連れ帰ったのか。「かえして」とは『何』のことだったのか。未だに分からない。

ただ一つ言えるのは、横須賀の観音崎には確かに『何か』が存在しているということだ。

私が求めていた非日常を味わえたと言えば味わえた日々だった。しかしあれ以来、私は夜の観音崎には近づいていない。

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