
体験場所:佐賀県佐賀市の神社
神社で夏祭りって、よくありますよね。
僕の近所の神社でも夏祭りがあるんです。コロナ禍の中止期間を経て、今年ようやく復活するという年のことでした。近所の小学生とかも楽しみにしてて、僕も久しぶりだったのでそれなりに心待ちにしていました。
その神社は学校からの帰り道にあって、僕にとって数少ない友達との下校時には、別れるのが名残惜しくて、よくその神社に寄り道してたんです。
ある日、友達と一緒に帰っている時でした。夏祭りが控える夏休み直前、だから多分一学期の終業式の日かな、いつも通りその神社に寄り道して、僕らは手水舎のところで話していました。するとどこかから、小さな鈴の音が聞こえたんです。
音が鳴る方を見ると、鳥居の外。そこに狐みたいな生き物がいたんですよ。神社の中に入りたそうにしていて。
そんなに大きな神社でもないので、僕らがいた手水舎は鳥居のすぐ近く。もし、その生き物の首についた鈴の音だとしたら、もっと大きく聞こえるだろうなと漠然と思いました。
友達に「狐みたいなのいる!」って言ったら、どうやらその友達には見えていないらしく、すごく不思議そうな顔をされました。
その間も狐みたいな生き物は神社の中に入ろうとしていて、その必死さがすごく怖かったんです。
嫌な感じがして、鳥居から距離をとった時、それを待っていたかのように拝殿の手前から、すごいスピードで何かが僕らの脇を抜けて、鳥居に向かって走っていったんです。
狛犬でした。
びっくりしました。狛犬が鳥居の前まで行き、内側から吠えたんですね。そしたら狐みたいなのが飛びのいて走って逃げていきました。
僕は唖然としました。
少しすると、境内の外から町の喧騒が聞こえてきました。そこで初めて気付いたんですけど、この一連の出来事の間、鳥居の外の音が何も聞こえていなかったんです。友達もそれには気付いたらしく、さすがに怖くなって僕らは神社を飛び出しました。ちゃんと一礼してから。
そんなおかしな体験も忘れかけた夏休み中盤、ついに神社の夏祭りの日がやってきました。
もちろん僕も行ったのですが、するとその地域のおじいさんたちが、拝殿の前に陣取って話をしていたんですね。僕も近くでこっそり聞き耳を立てていたら、途中でこんな話があったんです。以下は覚えているだけの会話文です。
「ようやく今年から浮立ば始められるばいね」
「そろそろ奉納ばせにゃ、神社にも入ってくるさいね。せにゃならん」
「そろそろ近くで見た子供もおるんやないと?」
「子供やけん、わからんよ。ただの動物ち思っとるかもしれん」
こんなことを話していたんです。
『浮立(ふりゅう)』っていうのは、地域の神社を回って奉納する踊りみたいなものなんですけど、コロナの間は夏祭りと一緒に中止になってたんですね。僕も参加したことがありました。
僕が思うに、あの日見た狐みたいなものは、おじいさんたちが話していた「入ってくるもの」だったんだと思うんです。本来そこにいてはいけないような。浮立をすることによって神様の力を高め、そういう者たちが入れないようにしていたのではないか。あくまで僕の想像ですが。
僕は今でも浮立に毎年参加しています。また、その神社に参拝した時は、必ず狛犬にも頭を下げています。あの時、あの狐みたいなものを追い払ってくれなければ、僕らはどうなっていたか分からないので。
ちなみにその体験以来、僕はなんか変なものや、神社の境内では狛犬が見えるようになりました。狛犬はその神社の規模などによって、犬種やサイズが違います。中でもあの神社の狛犬に限ってですが、僕が行くと足元にじゃれついてきます。かわいいですけど、「動物みたいなもの」を追い払う時は怖いです。でかくなるので。


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