
体験場所:兵庫県 自宅の押し入れの中
高校生の頃に、今でも忘れられない不思議な体験をした。
その日、自宅に遊びに来ていた小学生の従姉妹たちと一緒にかくれんぼをしていた。高校生の私が本気で隠れてしまっては、小学生のこの子たちにはなかなか見つけられないだろうと思い、少し手を抜いて隠れた場所は、リビング横の和室にある押し入れの中だった。
昼間でも、押入れの中は真っ暗だった。高校生とは言え少し怖かったが、とにかくジッと隠れていた。
外からは従姉妹たちの楽しそうな声が聞こえていた。
「どこー?」
「絶対この部屋にいるでしょ!」
そんな声を聞きながら息を潜めていた時、暗闇の奥に何かがいた。
最初は気のせいだと思った。だけど目をよく凝らし、押入れの奥を凝視していると、急に暗闇の中に大きな目が二つ浮かび上がった。人間の目の何倍も大きな目だった。
心臓がドキドキして、慌てて押し入れから出ようとしたけど、身体が動かなかった。子供の頃から私はよく金縛りに遭っていた。その時と全く同じで、頭だけはハッキリしているが、目以外の身体がどこも全く動かない。声も出せない。
恐怖で泣きそうになった時、大きな目の下あたりに、ゆっくり何かが現れた。
それは、大きな鳥のくちばしみたいなものだった。ペリカンのような、妙に長くて大きなくちばし。
しかも、そのくちばしが動いて言った。
「どうしてここにいるの?」
はっきりと人間の声だった。
男の人みたいな、アニメで聞くような不思議な声だった。
恐怖のせいか、それとも金縛りのせいか、私は何も答えられなかった。
すると、ペリカンは続けて言った
「歌を歌おう」
なぜ?と思いながらも、歌を歌われたら何かが起きてしまう気がして、怖くてパニックになりかけたが、とにかく身体が動かせない。耐えるしかなかった。
目を閉じれば消えるかもしれないと思い、私はぎゅっと目を閉じた。
ペリカンはその後も何か話していたけれど、恐怖で内容はほとんど覚えていない。おそらく日本語じゃない言葉も混じっていたと思う。
ただ、「歌を歌おう」という言葉だけは、鮮明に記憶に残った。
30秒くらい経って、声が聞こえなくなった。
恐る恐る目を開けると、ペリカンの顔はなくなっていた。目の前は暗闇だけだった。
普通に身体も動くようになっていた。
私は押し入れから飛び出し、たまたまそこにいた母をつかまえて言った。
「今、人の声聞こえなかった?」
事情を説明して、ようやく母は答えた。
「何も聞こえなかったよ。」
そんなはずはないと、私は従姉妹たちにも聞いてみた。
でも誰一人としてそんな声は聞いていないと言う。
もう一度、押し入れの中を確認したが、何もいない。
家族はみんな笑っていた。
「夢でも見たんじゃない?」
「寝ぼけてたんでしょ~?」
そう言われた。
でも私は断言できる。
あれは夢ではない。
押し入れの中に入ってから出るまでの間、眠ってもいないし、意識も途切れていない。高校生とはいえ、もう子供でもない。夢と現実を取り違えることはない。
だから私は本気で思った。
「あの押し入れには、ペリカンのお化けが住んでいるんだ」
それ以来、私はその押し入れに近付かなかった。
しばらくは夜になると、あの大きな目が暗闇の奥からこちらを見ている気がして、怖かった。
でも結局、今に至るまであの押し入れで同じ体験をした人は誰もいない。誰もペリカンのお化けを見ていない。
だから今となっては、正直よく分からなくなっている。やっぱり幻覚だったのか、私だけが見てしまった何かだったのか。
ただ一つだけ確かなのは、あの暗闇の中で見た大きな目とくちばし、それがアニメのような声で「歌を歌おう」と言ったことだけは、今でも私の中に鮮明な記憶として残っている。
やっぱり今でも実家に帰り、その押し入れを見る度、今もここにペリカンのお化けがいるのかな?と思ってしまう。

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