体験場所:静岡県F市の某幼稚園
これは、私がまだ小さい頃に通っていた静岡県F市の幼稚園で体験した話です。
年齢はまだ4歳だったと思います。年中でした。
幼稚園の頃のことはほとんど記憶に残っていませんが、その出来事だけは今でも鮮明に覚えています。
それはクラスの園児がみんなで先生のお話を聞く『お話の時間』の時でした。
私は急にトイレに行きたくなったのです。
でも怖がりで小心者の私はいつも親か友達と一緒じゃないとトイレに行くことが出来ませんでした。
幼稚園ではその頃ちょうど怖い話が流行っていて、タイミングの悪い事にその日、先生が話してくれていたのは『トイレの花子さん』のお話でした。
そんな話を聞いてる最中ですし、余計に一人でトイレに行くのが怖くてずっと迷っていたのですが、もう漏らす寸前だったので思い切って手を挙げて「トイレしたいです!」と大きな声で言いました。
焦ってトイレに向かいながらも、怖くてまだ躊躇していたのですが、おてんばな一面もあった私は(何かあったら走って逃げればいい)と、自分に言い聞かせながらトイレに入りました。
幼稚園のトイレには個室が3つあり、誰も入っていなくてもドアが閉まっているタイプのものでした。
当然誰か入っていてもドアは閉まっているわけですから、まずは使用中かどうか、床とドアの隙間から誰かの足が見えないかを一通り確認しました。
全ての個室が空いている事を確認した私は、早く用を足して出ようと思い3つの個室のうち真ん中を選んで便座に腰をかけました。
怖いという気持ちを抑えながら急いで用を済ませ、個室を出て外の手洗い場で手を洗っている時でした。
『ガチャン!ガチャン!、ガチャン!ガチャン!』
3つの個室のうち右端と左端のドアの鍵が、突然閉じたり開いたりを繰り返したのです。
私は心臓が飛び上がるほど驚いて、恐怖のあまりバクバクと激しい動悸で息苦しくなりました。
怖すぎて声を出すことも出来ません。
私はとにかくみんながいる教室に向かって走り出しました。
あんなに近くの教室が妙に遠く感じて、いつまで経っても戻れないような不安に襲われました。
何とか教室に辿り着いて席に着くと、なんとなく異変を感じた隣の友達が「どうしたの?」と聞いてきました。
私はトイレで体験した事を話しました。
「それ花子さんだよー!」
友達はそう言って笑っていましたが、それを聞いていた周りの友達も、
「花子さん!?花子さんがいるの?」
なんて言いだして、怖がる私の気持ちとは裏腹に、友達たちは無邪気に楽しんでいました。
結局、その日は恐怖が消えないまま帰宅し、帰ってから家族に今日体験したことを伝えましたが、
「最初から誰かが入ってたんでしょ。」
「トイレしてる間に誰か入ってきたんだよ。」
家族もそんな風に言って笑っていました。
ですが、そんな事絶対にあり得ないんです。
トイレに入る前には誰もいない事を確認しましたし、もしその後に誰か入って来たのなら足音で分かるはずです。
それにわざわざ『お話の時間』に二人以上で教室を抜けて、トイレの左右の個室に別れて入り、鍵をガチャガチャして遊ぶなんてあまりにも不自然です。絶対にあり得ないと言い切れます。
結局、誰も信じてはくれませんでしたが、幼少期の私にとってはトラウマ級の体験で、あの恐怖は決して忘れられるものではありません。
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