【怖い話|実話】短編「決起集会」不思議怪談(佐賀県)

【怖い話|実話】短編「決起集会」不思議怪談(佐賀県)
投稿者:han-kun さん(30代/男性/休職中<交通事故>)
体験場所:佐賀県の田舎の公民館

私が20歳になってすぐぐらいのお話になります。

佐賀県の私の地元では、一年中、色々なスポーツ大会が催されています。

卓球にバドミントン、バレーボールや野球にソフトボール、他にも町の運動会なんかも開催されます。

そんな中で、私が住んでいた地区が特に力を入れて取り組んでいたのがソフトボールでした。

大会二週間前ともなると、地区のみんなが仕事帰りに集まって練習を致します。

その年も例年通り大会の二週間前には、「今年も優勝目指して明日から練習を始めるからな」と、私にも監督から連絡が入りました。

嫌だなと思いながらも「了解です」と返事をし、翌日から仕事終わりに練習に参加します。

本番一週間前ともなると、決起集会と称し、公民館でみんなでお酒を飲みながら「お前のポジションは何処何処だから」「サインはこんな感じでいくから」などと話し合うのが恒例行事となっております。

その年も、本番一週間前の練習終わり「決起集会をするから公民館集合な」と監督に言われ、みんなダラダラと会場に向かいました。

そんな中、Mさんという男性が、「すんません。ちょっと俺、今、仕事でトラブルになってるから、後で合流しますんで先に始めておいて下さい」と、監督に申し出ました。

監督は少し機嫌悪そうに「じゃあ先にやってるからな」と言いました。

公民館の周辺には民家など全くなく、いくら騒いでも問題ないのですが、その代わりというか、建物の一方には墓場が広がっていて、正直一人では居たくない場所です。

一階の玄関から建物の中に入り、廊下の先の小さな階段を上ると六畳ぐらいの個室があり、そこを宴会場としてみんなで飲み始めました。

始まってしばらく経った頃、お墓が広がる方の窓から「トントン・トントン」と、ノックするような音が聞こえてきました。

曇りガラスの窓にはハッキリと人の影が写っております。

みんな一瞬ギョッとして静まり返ったのですが、一人の男性が「Mが驚かせようと思ってノックしているのさ」と言うと、なるほどと笑い声が上がり、次に監督が大声で言いました。

「そんなのにビビらんから、早く入ってこいよM!」

すると誰か男性の高笑いが聞こえたかと思うと、窓の影が消えていきました。

「あいつ、ビビらせるの下手すぎだろ!」などと、再びみんなが笑い声を上げて話していると、監督の携帯電話が鳴りました。

電話に出ると、相手はMさんからでした。

「仕事が終わらなくて、今日の集会には参加できません。すみません。」

申し訳なさそうにそれだけ伝えると、Mさんの電話は切れたようでした。

「え…?…じゃあ、さっきノックしたのは、誰だ?」

と、またみんな静まり返りましたが、すぐに誰かが「それなら、どうせ近所のヤツが俺たちをビビらせようとして立ち寄ったんだろ」と言ってまた笑い声が上がった瞬間でした。

「トントン・トントン」

と、再び窓をノックする音が聞こえました。

曇りガラス越しに、やっぱり人の頭の影も見えます。

すると監督が私に「お前裏に回って見て来い」と言うので、正直とても怖かったのですが、若輩の私に断ることなど出来ず、仕方なく窓裏の様子を見に行くことにしました。

外から回り込み、目の前には墓場が広がる窓の前をソーッと覗いてみると、誰もいません。

「よかった~」っと、ホッとしたのも束の間、私はふと気が付いてしまいました。

窓の位置が高いのです。

そういえば宴会をしている部屋は、一階玄関から入った後、階段を数段上がった場所にあります。

その分、外から見ても部屋の窓の位置が高いのは至極当然のことで、つまりそれは、外からその部屋の前に立ったとしても、普通の人間が窓から影を覗かせる事など有り得ない高さなのです。

スーっと、目の前に広がる墓場から、何だか得体の知れない冷気を感じた気がしました。

急いで私はそこを離れ、慌てて部屋にいるみんなにそのことを報告すると、

「そんな事あるか!だってみんな頭の影を見てるんだぞ」

監督がそう言った直後、また男性の高笑いする声が聞こえてきます。

すぐに窓際にいた男性が窓を開けたのですが、やっぱり、外には誰もいないんです。

窓を開けた男性が、そのまま窓の下を覗き込んで言いました。

「本当だ…確かにこれは、脚立でもないと頭は出せないな…」

その言葉に引き寄せられるように、みんなは窓から顔を出し、下を覗き込んだまま、しばらく呆然としていました。

私は、下を覗くみんなの頭の上から、暗闇に鎮座するたくさんの墓を見ていました。

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