体験場所:北海道 ちほく高原鉄道ふるさと銀河線沿線
今から20年ほど前の事です。
私の妻は北海道の網走地方の出身で、年に一回、夏になると夫婦二人で北海道の妻の実家に遊びに行っていました。
私達が遊びに行くと、義父は道東の観光地に連れて行ってくれたのですが、その年はワインで有名な池田町に行くことになりました。
私はマニアというほどでは無いのですが、鉄道が好きで、池田町に行くのならば、当時池田町から北見市まで走っていた「ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」に乗ってみたいと思いました。この鉄道は、途中にいわゆる「秘境駅」も沢山あり、一度乗ってみたかった鉄道でした。
池田町でワイン工場見学を楽しんだ後、食事をしてから車で帰る義父と義母を見送り、私と妻はその足でふるさと銀河線の池田駅から列車に乗り込み、終点の北見駅を目指しました。
案外に乗客は多く途中までは立ち乗りでしたが、駅ごとに段々と乗客は減り、ようやく私と妻は列車の進行方向左側、窓際のボックス席に座る事が出来ました。
最初は晴れていた天気も少しづつ悪くなり、気が付くと曇り空になっていました。
私はずっと車窓から外を眺めていたのですが、何しろ沿線にはほとんど何もありません。ただ、ひたすら林や森が延々と続くだけの景色でした。
その景色をぼーっと眺めていた私の目に、不意に不思議な物が映りました。
なんと林の中で真っ裸の若い男女二人が笑いながら追いかけっこをしているのです。
木の間を回ったりすり抜けたり、「ここまでおいで」みたいにはしゃいでいる。
「え?」と私は思いました。
「誰かがふざけているのかな?」
最初はそう思いました。
でも、ここら辺は家も農場もない原生林です。
「目の錯覚かな?」と思い、目をこすってもう一度見てみましたが、やはり追いかけっこをしている裸の男女がいます。
列車は時速60km程で走っています。
もしあれが本当に人間ならとっくに見えなくなっている筈です。
「…嘘だろ?」
妻にも見えるかどうか確認しようにも妻は寝ています。
唖然としながら私はその信じられない光景に目を奪われ続けたのですが、暫くして二人の姿は忽然と見えなくなりました。
…およそ一分位の出来事だったでしょうか。
(うとうとして夢でもみていたのかな…?)と思いながら、そのまま列車に揺られ呆然としていました。
それから数年後の事です。
パソコンで2ちゃんねるの鉄道スレを見ていたら、私と全く同じ光景を見たという書き込みがあったのです。
それも私と同じ、ふるさと銀河線です。
その投稿者が見た時は、真冬で雪が降っていたそうですが、確かに私が見たのと同じで『真っ裸の若い男女が林の中でふざけた様子で追いかけっこをしていた』という内容でした。
投稿者は「本当に見たんだよ! 嘘じゃない!」と書き込んでいましたが、他の投稿者からは「幻覚だろ」「外は零下10度以下だぜ」と否定されまくっていました。けれども私は、他にも見た人がいるんだという事実を知り驚きました。
ちほく高原鉄道ふるさと銀河線は2006年4月に廃止されてしまい、今となっては確かめる術もありません。
本当にあれは一体なんだったのでしょうか?
私一人だけなら夢でも見てたと考えるべきかもしれませんが、他にも全く同じ光景を全く同じ鉄道で目撃した人がいるとなると、やはり私も実際に見たとしか思えません。
まだ、その時の光景は私の脳裏にはっきりと残っています。
もし誰かがふざけてやっていたとしたら、時速60kmで走っている列車からは一瞬で見えなくなるはずです。しかし、その光景は1分以上ずっと見え続けていたのです。
また、2チャンネルの投稿者が見たのは1月の厳冬期だったそうですが、ふるさと銀河線が通っていた場所は、日本でも最も気温が低い事で有名な陸別周辺で、冬の最低気温は-50度近くまで下がります。
そんな気温の中を真っ裸でいたら、あっという間に動けなくなってしまう筈です。つまり、人間がふざけてやっていた可能性は限りなく0に近いのです。
だとしたら、あれは一体なんだったのでしょう?
今でも全く説明が付かないのです。
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