【怖い話|実話】短編「父の秘密」不思議怪談(千葉県)

【怖い話】不思議実話|短編「父の秘密」千葉県の恐怖怪談
投稿者:三姉妹 さん(30代/女性/主婦)
体験場所:千葉県の実家

私の父について、最近になって初めて知ったことがあります。
どうやら父には、昔から「霊感」があったらしいのです。

家族に話せば怖がらせてしまうだろうと、ずっと黙っていたそうですが、母が亡くなって数年が過ぎた頃から、ポツリポツリと小出し(笑)にして、体験談を語るようになりました。

父は今でこそ定年退職しましたが、現役の頃は車に乗る仕事をしていました。

ある日、以前に交通事故があった場所を通りかかった時のこと。
道路脇に花束が供えられていた。そのすぐ隣に一人の女性がうつ伏せに倒れていて、それがまるで、花の香りを嗅いでるようだった…

それが初めて父が口にした体験談で、聞いた時は背筋が凍ったのを覚えています。

それ以来、父から霊に関する話を聞くのが日常になりました。
けれどここ最近は、少しニュアンスの違う、スピリチュアル?的な話を聞くようになりました。

私には姉がいます。
姉の結婚が決まり、両家の顔合わせの食事会が開かれることになった時のこと。

私は姉と仲が良く、婚約者の彼とも既に会った事があり、彼の写真をラインで見せてもらうこともありました。その中の一枚に、彼の家族写真がありました。
ある日、なんとなく父にその写真を見せると、父が妙な声を漏らしたのです。

「うん?……ちょっと拡大してみて。あれ~?……ははっ」

父は彼の母親を指さして、少しびっくりしたように笑ったんです。

(もしかして、元カノ!?)

複雑な思いが私の頭をよぎりましたが、父はこう続けました。

「いやーまいったなぁ~笑。このお母さん、家に来たんだ」

(え!?やっぱり元カノなの!?)

私は心の中で叫びました。

父が語ったのは数日前の出来事でした。
昼食をとっていた時、ふと玄関の方に視線を向けると、そこに一人の女性が立っていたのだと言います。

女性は心配そうな顔で、じっと父を見つめていた。
そして数秒後、影のようにすうっと消えてしまった。

普段からそうした出来事を経験していた父は恐怖を感じることもなく、ただ「誰だろう」と思っただけだったそうです。

そしてその答えを、写真で知った――

「ああ、やっぱりあの時の人だ。この人が彼のお母さんだったのか。……相当心配性なんだな」

と父は、驚いている私とは対照的に、合点がいったと呑気に笑っていました。

もちろん父は彼のお母さんと面識は無く、住んでいる地域も全く違うので見知るはずもありません。

けれど――彼のお母さんは確かに我が家に“現れていた”。

もちろん、食事会で初めて顔を合わせた彼のお母さんに、そんな話ができるはずもなく、何事もなく無事に両家の挨拶を終えました。

けれど、私は心の中でずっと思っていました。

――「数日前、うちに来ましたよね?」
なんて、口が裂けても言えない(笑)

それから数年が経ち、姉は彼の家族と二世帯暮らしで幸せな家庭を築いています。ですので、あの時の“母親の不安”も解消されているだろうと、密かに父と私は安心しています。

正直これまで、生き霊という言葉には恐ろしさしか覚えませんでしたが、息子を思う強い母の気持ちという、人の優しい思いも現れることがあるんだなと、少しほっこりしました。
そして父にはそれが見えるんだな、と。

父は今も不思議な体験談を語ってくれます。
「死んだ犬が枕元で鳴いていた」とか、「仏壇に二人の少女の顔が浮かび、お供え物を可愛いものに変えたらすごく喜んでいた」とか。
そんな話を聞くのが最近の私の楽しみでもあります。

そういえば、ふと思って一度だけ父に尋ねたことがあります。

「どうして亡くなったお母さんは出てこないの?」と。

すると父は少し笑って答えました。

「姿は見えないけど、気配は毎日そばにあるんだ」

それを聞いた時、私はふと気付きました。

――不思議な体験が出来る父は、幸せなんだな、と。

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