体験場所:兵庫県の自宅
数年前の話です。
当時、結婚前だった私は兵庫県の実家に住んでいました。
その頃、1つ年上の姉の結婚が決まり、姉とその婚約者さんは2人で住む賃貸物件を探している最中でした。
私は姉から、数件まで候補物件を絞り込めたけど、まだ最終的に決めかねていると聞かされていました。
そんなある日のこと。
私は夢を見ました。
夢の中で、私はとある2階建てマンションの前に立っていました。
初めて来る場所です。
時間帯はお昼前のような感じで、空はとても明るかったと記憶しています。
マンションの外観は女性が好きそうな可愛らしい感じではありましたが、明るい日差しの中、その建物は何となく暗い雰囲気を漂わせていました。
(…なんか、嫌だなぁ。)
漠然とそう感じていましたが、夢の中なので、自分の意思とは無関係に私はそのマンションに足を踏み入れ、1階のとある部屋へ、あたかも自分の部屋のように何の躊躇もなく入って行きました。
中は真っ暗でした。
ですがしばらくすると、足元からじんわりと周囲が明るくなっていき、気付くと綺麗な玄関に私は立っていました。
部屋の中は2LDKくらいの間取りでしたが、殺風景なほどに家具や家電がありません。
リビングにはテレビもなく、小さめのソファーがポツンと置いてあるだけ。
他に和室と洋室が一部屋づつありましたが、和室には何もありませんし、洋室にはベッドが1つ置いてあるだけでした。
どの部屋もカーテンが開かれていて、明るい普通の部屋のようでしたが、やっぱり私は何となく嫌なんです。
長い時間をかけ部屋を見て歩いた後、何故かふと私は「お風呂に入らなきゃ」と思ったんです。
それで浴室の前まで行って私は気付いたんです。
この部屋に対し抱いていた嫌悪感の原因が、不自然な程に暗いスリガラスの向こうの浴室にあると…
その先に何かの気配を感じ、開けるのが怖いんです。
でも、やっぱり自分の意思とは無関係に、私は扉に手を掛けました。
そこで、夢が終わりました。
何となく不気味な夢ではありましたが、よく夢を見る体質の私は、それをあまり気に留めることもありませんでした。
それから数日後のこと。
「部屋の見学に行ってきたよ!」
と、姉がはしゃいで報告してきました。
どうやら3部屋ほど見学して来たらしく、その中の1つを本命に絞ったようでした。
ですが、姉は少し戸惑ったように言いました。
「でもね、お風呂場がちょっと気持ち悪かったんだよねー。何がと言われると説明できないんだけど、何となく嫌な感じというか...でも他はすごく良かったし、◯◯(婚約者)はお風呂場も全然気にならないって言うし、やっぱりあの部屋で決まりかなー」
『お風呂場』の『嫌な感じ』という言葉が私はどうしても引っ掛り、それがあの日の夢のことだと思い出し、姉に聞いてみたんです。
「もしかしてその物件って、外観が~~みたいな感じで、外壁が~色で、間取りが…」
全てぴったりでした。
物件の外観や部屋の間取りから、備え付けの家具までも同じ。
しかもお風呂場に対する嫌な感じも一緒です。
姉の言う本命物件と、あの日私が見た夢の中のマンションの部屋は、同じ部屋だと確信しました。
いぶかしげにしている姉に夢のことを話すと、やっぱり何だか薄気味悪くなったらしく、すぐささまその物件は候補から外れました。
ですが、結局のところ私がその部屋を夢に見た理由も、その部屋のお風呂場に漂う嫌な感じの原因も、分からず終いです。
事故物件とかだったのでしょうか?
ですが某事故物件サイトで調べてみても、その物件にまつわる記載は特にありませんでした。
ただ、私は仕事柄、全ての事故物件がそういったサイトに反映されていないことを知っています。
ですので、間違いなくあの物件のお風呂場では、かつて凄惨な何かがあったはずだと私は今でも思っています。
もし姉夫婦が、その物件に入居を決めていたら一体どうなっていたのでしょうか?
あの夢は、誰かが私を通じて姉夫婦に警鐘を鳴らしてくれたのだと、私は今も思っています。
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