【怖い話|実話】短編「覗く子供」心霊怪談(千葉県)

投稿者:カナミヅキさん(20代/女性/イラストレーター)
体験場所:千葉県T市 ショッピングモール内レストラン

今となっては懐かしく、けれど思い出すたびゾッとする、そんな私の実体験です。

あれは私が大学生の頃でした。
当時私は、千葉県T市の某有名ショッピングモール内にあるイタリアンレストランで、キッチンのアルバイトをしていました。

こじんまりとした店でしたが、地元のお客さんで賑わうレストランでした。

地元客で賑わうレストラン
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とある平日、忙しいランチ時間も過ぎ、私一人でキッチンを任されていた時のことです。

レストランはランチ時間を過ぎると、ディナーの時間まで混雑することもなく、店内は落ち着いていたため、私は暇な時間を過ごしていました。

仕込みも終えて暇を持て余した私が、唯一時間を潰すことができるのは、キッチンに設置された店内のモニター映像でした。

飲食店のキッチンや裏方で働いたことがある方ならご存知かと思いますが、店舗によっては、キッチンでもホールの様子が分かるように店内モニターが設置されています。

ホール業務が忙しい時に私達キッチンスタッフがすぐに補佐できるように、また、有事の際の証拠映像の撮影もかねて設置されているものです。

その店内モニターで、顔見知りのお客さんや、小さなお子さんを連れたお母さんがドリンクバーの前に立っているのを、ぼんやりと眺めていた時、ふとあるものが目に入りました。

ショッピングモールの通路と店内を仕切るガラスには、中央部分にフィルム装飾が施されているため、通路を歩く人の姿は、店内からは頭部がほんの僅かに見える程度です。

その通路に面して設置している一人席に、通路に背を向ける形で、おそらく50代の常連女性Aさんが座っていたのですが、その背後にある仕切りガラスの上部から、Aさんを覗き込んでいる人がいたんです。

覗き込む誰か
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(子供・・・かな?)

最初はそう思いました。

ランチやディナーの時間は非常に混雑するため、お客様にはご案内をお待ち頂くこともあり、そのため並ばられるお客様のために、仕切りガラスに面する形で通路に椅子を並べてありました。

お昼が過ぎた今のような時間帯には、お客様がそこに座ることはまずないのですが、たまに買い物に疲れたご老人が座って休憩をしていたり、知らない子供が椅子の上に立って店内を覗き込んだりということもあったので、最初はそれほど気になる光景ではなかったんです。

ですが、しばらくモニターを眺めているうちに、ふと通路に並べた椅子の数が気になりました。

通路に並べてある椅子の数は、レストランの入り口から数えて8個です。
Aさんが座っているのは一番奥の席でしたので、通路のその場所に椅子があるはずないのです。つまり、わざわざ椅子を動かしでもしない限り、子供がその場所から中を覗くことなんて出来ないはずなんです。

それに、もう一つ疑問がありました。

私は最初(子供かな?)と思いはしたものの、断定できない理由がありました。
判別出来なかったんです。

店内を覗いているその人物は、真っ黒い服を着ていて、恐らくフードも被っているのでしょうか、顔の確認ができません。全体的に真っ黒ではっきり顔が見えないんです。
その真っ黒な何かが、Aさんのことを覗き込んでいるんです。

嫌な予感がしました。
冷や汗というものを初めてかき、息が震えました。

その時、ホール業務から後輩のBちゃんが戻ってきました。

(…もしかしたら、モニター越しだから真っ黒に見えるだけなのかもしれない。)

そんな切実な願いを抱き、私はBちゃんを手招きしました。

「Bちゃん、ちょっとちょっと」
「どうしたんですか?」

Bちゃんは明るく素直ないい子です。
そんな子に『そうかもしれないもの』を見せる事はとても心苦しかったのですが、私はモニターを指差し、声の震えを必死に抑えて言いました。

「あの、黒い人。ずっとAさんのところにいるんだけど、何か知ってる?」

そう言った瞬間、Bちゃんの表情が凍り付きました。
徐々に瞳に涙を浮かばせるBちゃん。すると、慌てて謝る私の手をBちゃんは無言で掴み、ホール全体が見渡せるレジカウンターまで引っ張り出されました。

…Aさんの後ろには、誰もいませんでした。

誰もいない
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子供も、真っ黒な何かも・・・

ガラスの向こうには、ショッピングモール内を歩く人の頭が時々通り過ぎていくだけです。

ぞわぞわっと身震いし、嫌なものに取り憑かれたかのように、私とBちゃんはこっそりとキッチンへ戻りました。

そして恐る恐るもう一度、目の錯覚であって欲しいと願いながら、ゆっくりとモニターを見上げました。

Aさんの後ろには、真っ黒な何かが、いました。

真っ黒い何か
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「なんで怖いもの見せるんですか!」

半泣きするBちゃんに、

「ごめんね、でもモニターの故障かもしれないよ。だって、いないんだから…」

と自分にも言い聞かせるように必死で説明します。

実際にAさんの後ろには何もいなかったのだから、モニターの故障も十分考えられます。
私はBちゃんをそう説得し、モニターから目を逸らしたんです。

本当にそうだったら、どれほど良かったでしょう。

それから暫くして、Aさんがお会計を済ませ退店しました。

その後でもう一度、私はBちゃんと一緒にモニターを確認してみました。

「え!?」

誰も映っていない
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何も映っていませんでした。
時々ショッピングモール内を歩く人の頭が通るだけの、いつも通りの光景でした。

「Aさんが、連れて行っちゃった・・・?」

その後、ショッピングモールの改装と同時にレストランは潰れてしまい、今ではAさんに会うことも、あのモニターを見ることも出来ません。

あれは一体なんだったのでしょうか?
Aさんとあの黒い影は、その後どうなったのでしょうか?

今もなにも分からないままですが、

「もう二度と見たくない」

それだけは確かな、私の実体験です。

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