心霊スポット:佐賀県鳥栖市『河内ダム』
佐賀県鳥栖市に河内ダムという防災ダムがあります。
近くにはキャンプ場やテニスコート、ハイキングに最適な市民の森、夏場は川の水を利用した河川プールなんかも開かれて、田舎でありながら休日には家族連れでそこそこ賑わう場所です。
私は釣りが趣味で、いつもは呼子あたりまで足をのばして海釣りをしているのですが、その日は遠出するような気分ではなく、手近なところでバスフィッシングでもしてみようと、車で一人、河内ダムに向かいました。
このダムに向かう山道を運転していると、昔自動車学校に通っていた時の山道講習で、上り坂の途中で何故か急にエンストしてしまいズルズル後退していって「あぁ~~!」「馬鹿!どこ引いてんだ!(教官)」「あぁ~~!」とパニックになった嫌な思い出が蘇ります。
それはさておき、あれから10年も経ち、そこそこ運転も上手になった私は無事に釣り場に到着。
山道の空きスペースに車を停めて、釣り具を抱え、ポイントの良し悪しは分からなかったので、とりあえず、すぐ近くの岸で釣り始めることにしました。
平日の昼間だったせいか(無職ですみません)、他に釣り人は誰もおらず、鳥の声だけがのどかに響いてきます。
使い慣れていないバス釣りの仕掛けに手こずりながら竿を出していましたが、腕が悪いのか場所が悪いのか、2時間たってもアタリすらなし。
そのうち春の陽気に誘われて眠たくなってきて、諦めて昼寝も悪くないな、なんて思い始めた時、
「何が釣れるとー?」
後ろから子供の声がしました。
ルアーを回収している途中だったので、ダムの方を向いたまま、
「ブラックバスなんだけど、まだ一匹も釣れてないよ(笑)」
と返し、もう一投して振り向くと、そこには誰もいません。
ぐるりと辺りを見回してみたものの、少し草の伸びた河原が広がっているだけ。
案外遠くから話しかけてきたのかなと思って、気にせず釣りを続けていると、今度は耳元で、
「ふふっ」と笑うような声がしました。
もちろん近くには誰もいません。
「…えっ、やだ、なにそれ怖い。」
というかそもそも、学校がある平日の昼に小学生くらいの子どもが一人でダムなんかにいるのは普通に考えておかしい。
と思いつつも、きっと気のせいだったんだろうと気を取り直して、それからもしばらく粘ってみましたが一向に魚は釣れません。
あんなに穏やかで暖かかった天気も、だんだんと日が陰って肌寒いくらいに感じるようになっていました。
お腹もすいてきたし、何となく気味も悪いので、釣りは諦め山道をちょっとドライブして帰ることに。
車を少し走らせると、ダムをまたぐバード橋という橋があります。
その橋の近くの駐車場に若いカップルらしき人影が見え、一人でいるのが若干怖かった私は、トイレに寄るという口実のもと、駐車場に車を停めて、ダムを眺めながら世間話をしている2人の側で邪魔にならないように缶コーヒーをすすっていました。
すると彼女の方が、「やだぁ~、そういうのやめてよ~!」と彼氏をアタック。
そして「ほんとにここなの?焼身自殺とかマジヤバイんだけど!」と、カップルは気味の悪い話をしています。
私(…ええ…やだー、今そういう話やめてよー…)
そう思いながらも、気になってスマホで調べると、嘘か真実か、『かつて駐車場で焼身自殺があり、その幽霊が出るらしい』との記事が。
私は完全にテンションが下がり、コーヒーを一気飲みして車に乗り込むと、そのまま真っ直ぐ帰宅しました。
やれやれ、初めてのバス釣りは散々だったし、もう二度とあそこには行かないぞと、釣り具をおろすためトランクに手をかけると、リアガラスの左端には、まだ水滴の乾いていない子供らしき小さな手形がついていました。
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