【怖い話|実話】長編「廃病院の処方」心霊怪談(愛媛県)

投稿者:ポムポム さん(31歳/男性/介護職)
体験場所:愛媛県S市

当時、愛媛県S市に住んでいた私が実際に体験した話です。

あれは高校3年生の7月頃だったと思います。

「学校の近くに数十年前に潰れた廃病院があるから、肝試しに行かないか?」

と、友人から誘われました。

もちろん怖いもの見たさの興味はありましたが、私も含め他に誘われた友人達も、廃病院というのは流石に怖かったので、せめて昼間にということで肝試しを決行することになりました。

その日、私を含めた6人で午後の学校を抜け出し、30分程自転車を走らせ、雑木林の中にひっそりと佇む廃病院に向かいました。

実際にその廃病院に到着して私たちは息を飲みました。

ガラスは割れ、空き缶やゴミ袋、不法投棄物などが散乱していて、壁にはヤンキーちっくな落書き。

その姿は正に私たちが想像した通りの廃病院でした。

雑木林の中の廃病院
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2階建てだったので、3人づつに分かれ探索することになり、AとBとCは2階へ、DとEと私が1階を調べることになりました。

床板が腐っていたり危険な箇所もあり、気を付けながら探索していると、ふと『診察室』と書いたプレートが掛かっている部屋が目に入り、何となくガラガラっと扉を開けた次の瞬間、

(ここはダメだ・・・)

直感的にそう感じました。

何故なら他の部屋はガラスが割れていたり落書きがあったりで荒れ放題なのですが、その部屋だけが異様に綺麗なのです。

異様に綺麗な診察室
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確かに部屋の中は埃を被っているのですが、埃の上には足跡も無く、荒らされた形跡も人の入った形跡も全くありませんでした。

私は直ぐに扉を閉め、その部屋を後にしました。

引き続きCとDと他の1階の部屋を探索していると、2階組のBから電話が掛かってきました。

「Aが居ないんだけど、そっち行ってない?」

1階2階に分かれて以来、こちらの誰もAの姿は見ていません。

仕方がないので一度みんなで集まりAを探すことになりました。

ですが、5人で1階2階と隈なく探したのですが、どこにもAの姿はありません。

あと探していない場所は先ほどの診察室です。
なぜかそこだけは誰も手を付けていませんでした。

私は意を決して先頭を切って診察室へ向かい、恐る恐る部屋の扉を開け中を覗きました。

・・・異様に綺麗な部屋。
廃病院らしからぬその異質な光景に、友人達も恐怖しているようでした。

その時です。
ふと部屋の奥の方から誰かの声が聞こえてきました。

Aが居るのかと思い部屋の奥に進むと、そこには、こちらに背を向けたAが丸椅子に座り、向こう側にあるカーテンで仕切られた診察スペースの方に目を向けていました。

「何してんだ!?」

と呼ぶと、Aは振り返り、

「何って…あれ?何でこんなところにいるんだっけ?」

とAはとぼけたことを言いました。

何があったのか詳しく聞くと、

「2階を散策していたら、BとCが先に1階に降りていくのが見えたから、置いて行かれると思って階段を駆け下りたんだ。そしたら診察室の扉が半開きだったから、中を覗いた所までは覚えてるけど…」

…そのあとが思い出せないとのことでした。

それを聞いた私たちは皆、猛烈に気味が悪くなり、肝試しは終了。
急いでその廃病院を後にして家に帰りました。

廃病院から逃走
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その次の日です。

私が学校に行くと、いつも30分前には登校しているAが来ていません。

遅れているだけかと思いましたが朝のホームルームの時間になっても現れず。

先生に聞いてみると

「Aは体調不良で休んでいる」

とのことでした。

昨日のこともあって心配ではありましたが、

「きっと明日には来るだろう」

と、私たちは単純にそう思っていました。

ですが、2日経っても3日経ってもAは登校してきませんでした。

メールを送っても返事は無く、流石にこれはおかしいと思い、肝試しに行ったメンバーでAの自宅までお見舞いに行くことにしました。

その日、学校終わりにみんなでAの家に行くと、お母さんが出てきて、

「気分が悪いからAは病院に行ったのよ」

と言われたので、病院の場所を聞き、念のため様子を見に行くことにしました。

その病院の受付の人がちょうど私の知り合いだったので、Aのことを聞いてみると、

「A君?今日は来てないけど?」

と言います。

じゃあどこに行ったんだ?となった時、Cが言いました。

「あの病院に行ったんじゃないか?体調不良になったのも、あの病院に行った翌日からだし…あの時も様子が変だったし…」

そんなはずは…と思いながらも、私たちは自転車を走らせ例の廃病院に行くと、入り口にAの自転車が止まっているのが見えました。

私たちを言い知れぬ不安に駆られました。

緊張した面持ちで廃病院の中に入り、誰が言ったわけでもないのに、皆まっすぐに診察室へ向かいました。

扉越しに診察室の中を覗くと、3日前に私たちが入り込んだにも関わらず、埃の上には足跡が無く、この前と同じように部屋全体に均一に埃が積もっています。

恐る恐る扉を開けると、この前と同じようなAの話し声が奥から聞こえてきました。

中に進むと、丸椅子に座ったAが、誰も座っていない向かいの椅子に向かって何かを話し掛けています。

「A!何やってんだ!!!」

と大声で呼ぶと、振り返ったAが涙を流しながら笑っているんです。

泣きながら笑っている友人
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やばいと思い、みんなでAを引っ張り部屋から連れ出しました。

その間際、ふと奥を見ると、診察スペースのカーテン越しに確かに誰かが立っているのが見えたんです。

診察スペースの人影
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もう半狂乱で私たちはAを連れて廃病院を出て、自転車に飛び乗り一目散に逃げ帰りました。

落ち着いてからAに事情を聴くと、3日前のあの日、病院から帰って来ると、ポケットの中から妙なものが出てきたと言います。

それは、その廃病院が廃業する前に使っていたのであろう『処方薬を入れる袋』だったそうです。

気味が悪くなったAは、家のゴミ箱に捨てるのも嫌だったので、自転車を走らせ近所のコンビニのゴミ箱に捨ててきたそうです。

その翌日から、体調が悪くなったようなのです。

学校を休んでいつもの病院に行こうと家を出るのですが、どうしても何故かあの診察室に呼ばれている気がして行ってしまったのだと…

あまりのことに私たちは言葉も出ず、ただただAの話に耳を傾けていました…

もちろん誰もAの話を疑うことはありません。

みんなあの診察室で、カーテン越しに立つ誰かの姿を見ていたから…

その後、Aにも私達にもおかしな現象は起きず、皆無事に高校を卒業しました。

因みに、卒業後は進学なり就職なりで、みんな各地に散り散りになりましたが、Aだけは地元に残ったままでした。

そんなAに先日聞いた話によると、例の廃病院は既に取り壊されたそうです。

その跡地は、未だに買い手のつかない売り地となっていると言うことです。

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