
体験場所:東京都S区の某小学校
今からもう20年以上前に体験したことなのですが、未だにその時の恐怖を忘れることが出来ず、時々ふとした瞬間に思い出します。
当時、私が通っていた東京都S区の小学校では、何故か図書室が半地下にありました。
坂の途中にある小学校だったので、校門を1階とするなら図書室の半分は地下に埋まった位置にあり、いつも薄暗く少しカビ臭い印象がありました。どこから入って来たのか分からない巨大な蜘蛛がいたり、やたら虫の死骸も多かったのを覚えています。
そんな場所なので、嘘か本当か分からないような怪談話も沢山ありました。図書室の前のトイレまで、小学校の定番怪談「花子さん」や「赤マント」の噂が立ち、怖い話が好きな子達の間では色々と評判でした。
私も例にもれずそんな怖い話好きの1人だったので、あれやこれやと半地下の図書室について噂しながら友達と盛り上がっていたんです。
それで小学校6年の時、私は図書委員になりました。
あまり本に興味がある子供ではなかった私が図書委員を選んだ理由は、もちろん怖い噂の絶えない図書室に興味があったからです。
図書委員の仕事は、休み時間になると職員室で鍵を受け取って図書室を解放し、本を借りる子達の対応をして、次の授業が始まる前に図書室を閉めて職員室に鍵を返す、という簡単な流れでした。
それは、夏休み前の暑い日の事でした。
いつも通り昼休みに職員室から鍵を受け取り図書室に向かいました。
一連の仕事が終わり、私ともう1人の図書委員の男の子S君、それと図書室に残っていた女の子AちゃんとBちゃんの4人で、そろそろ時間なので教室に戻ろうと話していました。
図書室のドアはガラス扉の引き戸で、閉まっていても内外の様子が見えます。
そのドアを開けて図書室を出た時、私とS君の中にいたずら心が芽生えました。
先に外に出た私とS君は、AちゃんとBちゃんを中に残したまま、外からドアを押さえて閉じ込めるいたずらを仕掛けたんです。
中の二人は「出して!!出して!!」と叫んでいましたが、私達は笑いながら「やだよー」とふざけていました。
しばらくそんな悪ふざけをしていると、次の授業のチャイムが鳴りました。
「やばい!早く戻らないと!」と、私たちは慌ててドアを押さえていた手を離しました。それを見て中の二人はホッと一息ついて、ドアを開けようと手を掛けました。
でも、なぜかドアが開かないみたいなんです。
私はS君がまだ押さえているのかと思い、「いい加減にして…」とS君の方を振り返ると、S君はすでに職員室の方へ続く階段を登り始めています。
(え?どうして?)と思い、中の二人にわけを聞こうともう一度ふり返ると、2m以上ありそうな女の人が私の隣でドアを押さえているんです。しかも笑顔で。
その瞬間、中の二人もその女の人に気が付いて悲鳴を上げました。
私は腰を抜かしてしまい、その場に座り込んでしまいました。
すると二人の悲鳴を聞き付けたS君が戻って来て、ドアを開けようと必至に力を込めました。
中の二人は泣き出して、「助けて!!助けて!!」と叫び続けています。
私も座り込みながらも、なんとかドアを開けようと手をかけました。
その瞬間、
『だめよー』
と、なんとも言えない女性の低い声が聞こえ、それと同時にドアが開きました。
「うわ~!!」と泣き叫ぶように中からAちゃんとBちゃんが飛び出して来て、私たちはそのまま泣きながら教室まで走って逃げました。
教室に着くと、私たちの怯えた様子を見るなり「どうした?何があった?」と、慌てて担任の先生が駆け寄ってきてくれました。
私たちは涙が止まらないまま、しどろもどろ先程の出来事を話しました。
すると担任の先生は、フーッと少し長い溜め息をついて、
「またか…」
と、小さく呟きました。
どうやら私たちが見た謎の女性は、昔から図書室で目撃されることがあるそうなのです。
でもその女性については何も分からないそうで、そもそも生きている存在なのか死んでいる存在なのかすら謎。学校に何か曰くがあるのか調べてみても、図書館はおろか、学校全体でも女性の死亡事故などは全く起こっていないそうで、一体あの女性は何者で、なぜ現れるのか、なぜ図書室なのか、皆目見当が付かないそうなのです。
『やっぱり、あの図書室は、出る…』
それを確信して以降、私は図書室に行く度にまたあの女性がいるのではないかと、卒業までビクビク怯えて過ごしました。
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