【怖い話|実話】短編「条件付きの部屋」心霊怪談(静岡県)

投稿者:komaki さん(20代/女性/看護師)
体験場所:静岡県S市 某大学の女子寮

私が大学生の時の話です。

私は静岡県S市の某大学の女子寮で生活しており、寮には寮を管理してくれる「寮母」と呼ばれる年輩の女性がいました。

その寮は、築30年以上経った古い3階建ての建物で、1人に1部屋づつ割り当てられてはいたのですが、壁は薄く、隣の部屋の声が漏れ聞こえてくるくらい粗末な造りでした。

それでも寮内で友達も出来た私は、とても楽しい寮生活を過ごしていたのです。
あの日までは…

寮生活
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6月の梅雨時期のある日、私の部屋は最上階の3階だったのですが、その部屋が雨漏りをしていることに気が付いたのです。
少量ではありますが、雨水がポタポタと天井から落ちてくるんです。

私は寮母に相談したのですが、

「他に部屋がないから、誰か友達と相部屋にしてもらいなさい。」

と、冷たくあしらわれてしまいました。

しかし相部屋と言っても、どの部屋も狭く、2人で寝るのは難しいというのは寮母も分かっていたのでしょう。

「1階の1番奥の部屋があるけど、条件付きよ。」

と、寮母が渋々と言った感じで切り出したんです。

条件と言うのは、その部屋はずっと物置として使っていたからカビ臭いということ。
それと、クローゼットは絶対に使ってはいけないということでした。

出来ればクローゼットは使わせて欲しいと伝えたのですが、

「中のハンガーをかける棒が壊れちゃってて、使えないのよ」

と言われ、私は泣く泣くその条件を了承しました。

私はすぐに荷物を持って、1階の1番奥の部屋に移動すると、寮母がクローゼットにガムテープを貼って開かないようにしていました。

「とにかく、ここ、開けないでね」

と、寮母は念を押すように私に言いつけると、そのまま部屋から出て行きました。

改めて部屋の様子を窺うと、確かに長く使われていなかったのでしょう。部屋はカビ臭く、窓の縁には埃が溜まっていました。
それでも雨漏りする部屋よりはマシだと思い、私は引っ越しを完了させたのです。

その夜のことです。
深夜2時頃、私は誰かの話し声で目が覚めました。

寮の壁の薄さは誰もが知ることなので、私は隣の部屋の人の話し声だろうと思い、あまり気にせず再び眠りに就きました。

ですが、翌日も深夜の2時頃になると、話し声が聞こえてきたのです。

翌朝、寮内の友人に、

「隣の部屋の子が夜中に携帯で話してるみたいでね。結構うるさいんだよね。」

と話したところ、友人から帰ってきた言葉は、

「その隣の部屋の子、今教育実習で実家に帰ってるから、先週からいないはずだよ。」

驚きました。
それなら私は一体、誰の話し声を聞いていたのでしょうか?

(更にその向こうの部屋の人の声だろうか?)

腑に落ちないまま、その日も夜を迎えると、やはり深夜2時頃に、どこかから話し声が聞こえてくるんです。

どこから聞こえる声なのか、私は布団に入ったまま考えていました。

すると、

『コンコン、コンコン』

その日は話し声だけでなく、板を叩くような音も聞こえてきたのです。

いや~な汗が湧き出てきました。

だってその音は間違いなく、すぐそこにあるクローゼットの中から聞こえるのです。

クローゼットはガムテープで止められていて、誰かが入ったような形跡はありません。

まさか寮母がガムテープを張り付ける前から誰かが潜んでいたはずもありませんし、もしそうだとしても丸2日もクローゼットの中に潜んでいられるわけがありません。と言うか、そもそもそこに潜む理由が分かりません。

ですがどういう訳か、板を叩くノック音や、どうやら話し声も、確かにクローゼットの中から聞こえるようなのです。

恐る恐る私はクローゼットに近付くと、

「…誰か、いるの?」

と聞いてみました。

すると話し声が止んだのです。

私は気味悪く感じながらも、クローゼットのガムテープをゆっくりと剥がし、静かにクローゼットを開けてみました。

「ぎゃーーーーーー!!」

次の瞬間、私は大声で叫んでいました。

するとドタドタと叫び声を聞きつけた寮生たちが集まってきて、寮母も何事かといった感じで入ってきました。

たくさんの好機の目に晒されながらも、私の震えは止まりません。

なぜなら、私は見てしまったのです。

「あの、あの、クローゼットの中に、首を吊った女の人がいて…」

首を吊った女性
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「ええ?!」

私の言葉に驚きの声を上げた人達がすぐにクローゼットの中を覗き込みました。

しかし、そこには何もない、空っぽの空間があるだけでした。

私が見た時は確かに首を吊った女性がぶら下がっていたはずなのに、今見るとそこはもぬけの殻。何も入ってない、ただのすっからかんのクローゼットなのです。

唖然とする私を眺め、どよめく寮生たち。
それを寮母がなだめ、部屋に戻るように言って追い出しました。

ダラダラと寮生たちがそれぞれの部屋に戻った後、私と2人だけになった寮母が溜息混じりの声で怒りました。

「だからクローゼットは開けないでねって言ったじゃない!」

私はその寮母の剣幕に驚きながらも、

「だって、クローゼットの中から話し声やコンコン叩く音が聞こえたんです」

と言うと、ハーッと再び深い溜息を吐いた寮母が静かに話してくれました。

「ここの部屋でね、10年程前に自殺があったんだよ。クローゼットの棒に紐かけて首吊ってたのよ。だから棒が壊れちゃってね。それでもしばらくは寮生に使わせていたんだけどね、この部屋に入った子がみんな変な音がするとか言うから、結局、開かずの間にしちゃったのよ。やっぱり何年経ってもダメね。」

その後、私は寮母の部屋で寝たのですが、クローゼットの中にいた女性の事を思い出してなかなか眠れませんでした。

そして、私は雨漏りした部屋の修理が終わる前に寮を出て、アパートで独り暮らしを始めました。

現在その大学の寮は取り壊されてなくなったそうです。

今でもふと家のクローゼットを見ると、中で首を吊っていた女性のことを思い出してしまうことがあります。

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