
体験場所:岡山県倉敷市の祖父母宅
岡山県倉敷市に住んでいる祖父母の家の2階には、いつからか分かりませんが、大きくて黒いお坊さんが居るのです。
それに私が出会ったのは、まだ小学校低学年の頃で、週末、祖父母の家へ母と弟と一緒に泊まりに行った時のことでした。
日曜日は祖母と一緒に出かける予定だったので、前日の土曜日の夕方頃、私たちは泊まり仕度をして祖父母の家へ向かいました。
祖父母の家に到着し、ご飯を食べ、お風呂にも入った後、翌日早かったこともあり、私たち家族は早々に2階にある空き部屋で眠りに就きました。
みんなが寝静まってから数時間後、恐らく夜中の2時か3時頃のことです。
ふと目が覚めた私は、何の気なしに目を開けギョッとしました。
目の前に、とても大きくて黒いお坊さんのような格好をした人が立っていて、その人が私の顔を覗き込んでいたんです。
決して低くはない部屋の天井に届きそうなほど大きな人で、黒い法衣のようなものを身にまとっていたので、おそらくお坊さんなのだと思いました。
なんと表現したらいいのか分かりませんが、お坊さんの顔は薄っすらと靄が掛かった感じに見え、口元が見えるだけで、目や他の部分などはまるでモザイクが掛かっているような感じでハッキリしません。
私は驚いて声を上げようとしたのですが、金縛りに掛かっているのか体が動かず、声も出ません。
お坊さんはしばらく私の顔を覗いたあと、急に口を大きく開けたかと思うと、耳が割れるほどの大声でお経らしきものを唱え、そのまま私の周りをぐるぐると回り始めたんです。
一体何が起きているのか理解できず、私はそのまま気絶してしまったのか眠ってしまったのか、記憶はそこで途絶えています。
「早く起きなさい、出掛けるよ!」
翌朝、母の声で起こされました。
私はものすごく汗をかいていて服がびっしょり濡れていたのを覚えています。
当時小学生だった私でも、昨夜の出来事は余りに非現実的に感じられ、流石に夢だろう、それにしてもすごく怖い夢だったなと思う程度で、そのことは直ぐに忘れてしまいました。
それから数年後、私が中学生になった頃、また祖母の家に家族でご飯を食べに行った時でした。
たまたま放送していたホラー番組を見ている時、ふと母が、
「そういえば…前に2階の部屋で、すごく大きくて黒いお坊さんの夢を見たような…」
そんなことを言い出したのです。
それを聞いて、ハッと小学生の頃のあの晩の記憶が甦り、
「…それって、すごく大きな声でお経みたいなのを唱える人のこと?」
と言うと、母は驚いたような顔をして、
「そう!それそれ!なんで知ってるの?あんたも見たことあるの?」
そう聞いてくる母に、てっきり怖い夢だと思っていたあの夜の体験を話すと、母もあの部屋で同じような体験をしたらしく、私と同じく夢だと思っていたと言います。
でも、二人で全く同じ夢を見るなんてことある?と不思議に思っていると、それまで黙っていた祖父がこんなことを言ったんです。
「ああ、お前らも会ったのか。いつからか知らんが、2階にいるんだよ。黒いお坊さんが」
祖父も見たというそのお坊さんは、少しばかり気味が悪く、うるさいほど大きな声でお経を唱えたりはするが、それ以外に何をするでもないので、そのまま放っといてると言うのです。
そのお坊さんが家とどんな関係があり、何故あの部屋にいるのか全く分からないが、少なくともかれこれ20年前からずっといるのだそうです。
それからというもの、私は祖父母の家に泊まりに行っても、2階のその部屋で寝ることは避けるようになりました。
現在、私は結婚して他県に引っ越してしまい、祖父母の家に泊まることもなくなったので、あのお坊さんの所在は不明です。
ですが、祖父から話を聞いた時点で20年前から居たというお坊さんが、そう簡単に消えるとも思えず、おそらく祖父母の家の2階の空き部屋で、今も時どき大声でお経を唱えているんだろうなと思います。
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