
体験場所:沖縄県の実家
私がまだ小さかった頃の、母の体験談です。
当時、我が家は二世帯住宅に住んでおりました。
駐車場から外階段を上がると、祖父と祖母の家になっております。
親戚付き合いの多い家庭でしたので、叔父や叔母、従兄弟などが頻繁に訪ねて来て、祖母たちの家に行くついでに、一階の私たちの家にも立ち寄ったり、家には上がらなくても駐車場から声をかけられて立ち話をしたりしていました。(私たちの家の客間は、大きなサッシが駐車場側に面していて、中からも外からも丸見えな作りでした)
ある日、叔母さんが祖母に会いに来た時のことです。
叔母は上の階へ行く前に、駐車場からサッシ越しに私の母に話しかけました。
対応した母は、そこでキャップを被った男の子が叔母さんと手を繋いでるのを見て、『Yくん(叔母さんの三男)だけ連れてきたんだ~』と思い、特にそれ以上は気にすることも男の子に話しかけることもなく、いつも通り叔母さんと立ち話をしていたそうです。
しばらく話してから、叔母さんが「じゃあそろそろ上行ってくるね」と言い、母はそのまま見送りました。
数時間後、祖母の家から下りて来た叔母さんが「そろそろ帰るね」と再び母に声をかけました。
その声に「ん~」と返事をして振り返った母は、叔母さんが1人なのを見て不思議に思い、「あれ?Yくんは?」と聞きました。すると、叔母さんは怪訝な顔をして、「いや、私、今日1人で来たけど…」と言うのです。
「え?でもさっき来た時、男の子と手繋いでたよね?Yくんだと思ってたんだけど…」と母は続けましたが、「やめて、怖いこと言わないで!」と叔母さんに怒られ、それ以上は言えなかったそうです。
しかし、20年以上経った今でも、母は「絶対に見た!」と言い張っております。
母曰く、「キャップ被って黒のTシャツに半ズボンで、サンダル履いてた。俯いてたしキャップのせいで顔はあんま見えなかったけど、3歳くらいに見えたから、年齢的にも三男のYくんだと思ったんだけどな…」と、何度考えても記憶の中の男の子の姿があまりに鮮明なので、納得がいかないそうです。
「もしかして、仮にYくんではなかったとしても、確実に男の子はその場にいた」と母は、見たという事実を一歩も譲る気はないようです。
結局、そのとき叔母さんと手を繋いでいた男の子が誰だったのか、今でも分からないままです。
ただ、一概に母の見間違いとか、勘違いとも言い切れないところがありまして…
というのも、実は当時の私たちの家では、時折不思議なことが起こっていました。
玄関を開けて閉める音が聞こえて、母が「おかえり」と声をかけたのですが誰もいなかったり、母が1人で客間を掃除していると、誰かに髪を触られたような感触がしたりだとか。私自身も、兄の部屋が何故かとても怖くて、1人で入るのが嫌だったことを曖昧ながら覚えています。後になって知ったのですが、兄弟みんなその部屋には寄り付かず、当の兄ですらあまり使っていなかったそうです。
もしかしたらあのとき母が見た男の子も、叔母さんについてきたのではなく、私たちの家にずっといた存在だったのかもしれませんね。
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