体験場所:群馬県内各所
これは私が学生時代のこと。
母が他界してから1年ほどが経ち、悲しみも薄れ始めた頃の話です。
中学生の頃、私達の学年を受け持つ理科教師の授業は、先輩方からも「死ぬほど退屈」と言われる程で、実際私が授業を受けている時も、40人いるクラスの内、実に30人程が居眠りをしているというとんでもない授業でした。
当時、優等生の部類だった私は、そんな授業でも滞ってしまうことが嫌で、出来るだけ積極的に発言して授業が円滑に進むよう努めたのですが、その教師は早く授業が進んでしまうことを良しとせず、私に発言を控えるように言いました。
それからしばらくは、自分でどんどん先まで教科書を読み進めたりしていたのですが、次第にそれにも飽きてしまい、私も30人の側に行きそうになっていた、そんなある日の事でした。
その日の理科の授業も驚くほど退屈で、私は睡魔に抗いながら教科書を眺めていたのですが、一瞬だけ意識が飛んでしまった時、
トントン
と、誰かに肩を叩かれました。
まずい!と思ってハッと我に返りました。
最初、生徒の席を巡回していた教師に居眠りがバレたのだと思って慌てて顔を上げたのですが、教師はいつも通り単調な口調で、黒板に向かって退屈な授業をしています。
ひとまず注意を受けることは無いと分かり安堵して、ではクラスメイトの誰かが起こしてくれたのかと周囲を見回すも、私の席の周囲の人間は軒並み夢の世界に旅立っていました。
その日は春の陽気が心地よく、教室中を見回しても意識を保っている人間は、誰かに起こされた私と、もう一人の優等生が真面目に板書を取っているだけでした。
社会人である今にして思えば、そんな状況でも単調な授業を続ける教師の方がよほど怪奇に思えるのですが、当時はだいぶ緩かった上に、その教師も自分の授業で居眠りされることを半ば諦めていたのかもしれません。
次の休み時間、周辺の友人たちに授業中起きていたか?と尋ねると、全員が口をそろえて「起きてる方がおかしい」と言って笑っていました。
やはり私の肩を叩いた人間がそこにいるはずもない様子です。
ですが勘違いにしても、あまりに肩を叩かれた感覚が鮮明過ぎて、それがどうしても気になり、私自身あまりそういったものを信じる質ではないのですが、霊感が強いと言われていた友人にダメもとで相談してみたところ、こう言われたのです。
「どうせお前の母さんが見かねて起こしたんだろ」
その時は「そんなバカなっ」と鼻で笑っていたのですが、それから数年後、高校でも似たようなことが起こりました。
昼食後の昼下がり、非常に眠い時間帯の授業でのこと。
やはり中学の時と同じような状況で、退屈な授業、私の周囲のクラスメイトは居眠りしているか、机の下に隠してマンガを読んでいたり携帯ゲームをしていたり。
そんな中、ご多分に漏れず私にも強烈な睡魔が襲いかかり、一瞬意識が飛んだ瞬間、
トントン
あの時と同じように肩を叩かれハッと我に返りました。
やはり教師は前で誰も聞いていない授業を進めているし、周りのクラスメイトには、そもそもまともに授業を受けている者もいないわけで、私を起こす道理がありません。
それなのに、肩を叩かれた感覚だけは正に目が覚める程に鮮明で、中学の時の体験と同じでした。
その後の学生時代にも、更に社会人になって会社の研修を受けた時にも、それに今現在でも度々、居眠りしそうになると肩を叩かれる時があります。
これはやはり、本当に亡くなった母のおせっかいなのでしょうか?
それは一体いつまで続くのでしょうか?
嬉しいような、怖いような。
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