【怖い話|実話】長編「老婆の恨み」心霊怪談(群馬県)

【怖い話|実話】長編「老婆の恨み」心霊怪談(群馬県)
投稿者:みはる さん(49歳/女性/パート)
体験場所:群馬県高崎市

私が小学5年の頃の話です。

当時は夏休みになると、群馬に住む祖母の家に、母と二人で1週間ほど泊まりに行くのが毎年の恒例行事でした。

私のような普段都会に暮らす普通の子供にとって、田舎に行くのは楽しみでもあるのでしょうが、私にとってそれは少々苦痛なものでした。

祖母は孫の私が来たからといって特別嬉しそうでもなく、素っ気ない態度でした。
母は祖母の家でも忙しく動き回り、私の事などほったらかしです。
近所には他に子供の姿もなく、私は家の中で一人引きこもって外を眺めたり、絵を描いたりして1日を過ごしていました。

ある日のことです。
田舎なので滅多に人が通ることもない家の前を、カーテンを開け放した部屋から一人で眺めて過ごしていると、珍しく人の姿が見えました。

足取りのおぼつかない感じの、かなり高齢のお婆さんでした。

白髪の長い髪をしたお婆さんは少し異様な雰囲気を醸し出していて、私はどういうわけか胸がざわつき、恐怖心を覚えました。

それと同時に、少し言い方が悪いかもしれませんが、子供の私から見てもお婆さんの姿は余りにヨボヨボで、怖い反面、大丈夫かなと、そのお婆さんのことを心配して見ていました。

そんな時でした。

急にお婆さんはこちらを振り向くと、鋭い目で私を睨み付けたのです。
その目に恐れ慄いて、私は直ぐにカーテンと窓の鍵を閉めました。

(お婆さんが家の中に入ってきたらどうしよう…)

一人で留守番中だった私はそんなことを考えた挙句、直ぐにその恐怖心に耐えられなくなり家を飛び出しました。

少し走った先で立ち止まり、恐る恐る家の方を振り返ってみると、お婆さんの姿はどこにも見当たりませんでした。あのヨボヨボなお婆さんが、こんなにも早く姿が見えなくなるくらい動けるものなのか、私は疑問に感じました。

しばらくして帰ってきた母に、家の前から知らないお婆さんに睨まれたことを話してみても、「お前が怖がっているからそう見えただけでしょ」と、相手にもしてくれません。

祖母に聞くと、そんな人は見たことがないと言います。
あのお婆さんは明らかに近所の人だったように思います。こんな田舎で長年暮らしていて、今でも近所に知らない人がいるなんて有り得るでしょうか?

「ほんとに見たんだから!」

とにかく信じて欲しくてそう訴えましたが、二人は全く信じてはくれませんでした。

それからしばらくの間、私は一人きりにならないように母か祖母のどちらかにべったりとくっ付き過ごす内に、少しずつ恐怖心も和らいでいきました。

祖母の家で過ごす最終日のことでした。
祖母と母が地元で行われるお祭りに連れて行ってくれました。

毎日退屈していた私は大はしゃぎで、たこ焼きを食べたり群馬名物焼きまんじゅうを食べたりして楽しんでいました。

そんな時です。
屋台のお店が並ぶその先に、一人異様な雰囲気を醸す白髪のお婆さんの後ろ姿が目に入り、私は直ぐに顔を伏せました。

(え?まさか・・・あの時のお婆さん?…じゃないよね?)

またあの恐怖心がじんわりと蘇ります。

ただ、ここなら人もたくさんいるし怖くないと思った私は、本当にあのお婆さんなのか一人で確かめてみようと決心し、顔を上げた時でした。

さっきまでお祭りの喧騒の中、所在なさげな後ろ姿を見せていたお婆さんがこちらに振り向き、また鋭い目で私を睨みつけていました。

その恨みがましい目付きと、見つかってしまったという恐怖のあまり、私は身体が硬直して直ぐに走り去ることが出来ませんでした。

それでもどうにか無理やり身体を反転させ、母の元へ急ぎ、

「あの時のおばあさんがいたよ!」

そう言って指差した先に、お婆さんの姿はありませんでした。

母はお祭り会場で偶然会って話し込んでいた地元の同級生たちに、

「この子、怖いおばあさんを見たって言ってきかないの。もう5年生なのにね。」

笑ってそんな風に話している始末で、全く信用してくれません。

ただ、話を聞いていた母の同級生の男性Aさんが、

「そのお婆さんって、どんな人だったの?」

と聞いてきたので、その特徴を話してみると、Aさんはハッとしたような顔をした後、私に優しくこう言いました。

「お嬢ちゃんが見たおばあさんのこと、おじちゃん知っているかもしれないよ。」

私は驚いて藁にもすがる思いで、

「おじちゃん、それ誰なの?お母さんは信じてくれないから。お願い!教えて!」

と懇願したのですが、Aさんは少し考えて、

「ごめんね、子供には話せないこともあるからね」

そう言って、結局何も説明してくれませんでした。

その後、母はそのまま同級生たちと飲みに行くというので、私は祖母と二人で先に家に帰り寝ることにしました。

その夜、祖母は年寄りなのですぐに寝てしまいましたが、私はあのお婆さんのことが気になるし怖いしで、中々寝付けませんでした。
それでも布団に入って寝よう寝ようと無理にでも目を瞑り、ようやく少しウトウトし始めた時でした。

『ドンドンドンドンドンドンドン…』

けたたましくドアを叩く音がしました。

「お母さんが帰ってきた!」

寝入ってしまった祖母と二人きりで不安だった私は心底ホッとして、急いで玄関に向かいドアを開けると、外には誰もいません。

「…おかしいなぁ。いたずらかな?」

と寝ていた部屋に戻り、カーテンを開けて外を見ると、家の前にあの白髪頭のお婆さんがしゃがみ込んで下を向いていました。

今にも立ち上がってまたこちらを睨んできそうな予感がしたので、急いでカーテンを閉めて、寝ていた祖母を起こしました。

「またあのお婆さんがいた!早く!早く外を見てよ!」

と私が言うと、寝ぼけた祖母は、

「大丈夫だよ。もう死んでいるんだから…」

と意味不明な事をつぶやくと、直ぐに再び寝息を立て始めました。

結局、あのお婆さんに関する真相は分からず終いで、母には何度聞いてみてもはぐらかされる一方ですし、数年が経っても私の中で忘れることが出来ずにいました。

それから8年後。
祖母が亡くなりました。

そのお葬式でのことです。
私は、あのお祭りで会った母の同級生のAさんに再開したのです。

「大きくなったね~、あの時のこと覚えてるよ。」

と、Aさんは成長した私の姿を見て驚いた後、

「…今なら話してもいいかもね」

と、少し静かな声でそう言ってくれました。
やっと真実が解明できると、私はワクワクしていました。

Aさんによると、私が見たお婆さんというのは、私が見たよりも8年程前に既に亡くなっていたということです。つまり、私が見たお婆さんは『幽霊』ということになります。

正直、私も半信半疑ではありますが、そんな風に思っていた節もあったので、そこまで驚きもしませんでした。

なぜAさんが私の話を信じてくれたのかというと、それまでも同じようなお婆さんを見たという話を何度も聞いていたそうです。しかも目撃者はいつも子供ばかりとのこと。

あのお婆さんは、昭和初期の生まれの方だったらしいのですが、先天的な知的障害があったそうで、当時は障害に対する世間の理解も低く、おばあさんは地域の人にも家族にも迫害されていたのだといいます。

特に子供たちには石を投げられ、「出来損ない」と罵られ、大変つらい思いをしていたようです。

大人になってからも子供たちにからかわれ続けていたお婆さんは、遂に怒って子供に石を投げつけてしまいました。

それを切欠に家族がお婆さんを家に閉じ込め、それからは誰もお婆さんの姿を目にすることはなかったそうなのです。

その後のおばあさんの生活がどの様なものだったのかは分かりません。
ですが、最後は餓死により亡くなったそうです。

(なんて辛い人生だったのだろう…)

と、お婆さんに対する憐れみを感じていると、更にAさんは言い難そうにこう続けました。

「実は、あのお婆さんと、あなたのおばあさんは同級生だったんだよ…」

私は驚きました。あのお婆さんと私の祖母が同級生だったなんて初耳です。ましてや祖母はそんな人は知らないとまで言っていたはずです。
一体どういうことなのか、頭の中を整理出来ずにいる私に、更にAさんは言い淀むようにこう話を続けました。

「あの婆さん、あなたのおばあさんを含めた同級生たちにいじめられていたらしいんだよ…」

「・・・え?」

一瞬、話が呑み込めませんでした。
祖母がいじめに加担していたなんて、と、ショックを受けました。

ですが、あり得ない話ではありません。
と言うのも、私も祖母には少し冷たい所があると感じていたので…

Aさんの話を聞いて、私は色々なことに合点がいきました。

お婆さんがなぜ子供だった私の前に現われたのか?
それは恐らく、長年子供たちにからかわれ辛い思いをしてきたお婆さんは、子供を憎んでいたのだと思います。それまでAさんが聞いた目撃情報も子供ばかりだったのは、やはりそういうことなのでしょう。

ただ、私の前に現われたお婆さんの場合、祖母に対する恨みの念もあったのかもしれませんが…

足元がおぼつかない様子だったのは、もしかしたら家に閉じ込められた後の、家族からの虐待によるものなのかもしれません。おそらく、栄養不足によるものだと思います。

何一つ幸せを味わうことなく、餓死で亡くなってしまったお婆さんの無念は、今もこの世を彷徨っているのかもしれません。

ただ、大人になった私の前に現れることは、もうないのでしょう。

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