【怖い話】心霊実話|短編「背の高い女」広島県の恐怖怪談

投稿者:はな さん(32歳/女性/会社員/広島県在住)
体験場所:広島県K市の某駅ビル
【怖い話】心霊実話|短編「背の高い女」広島県の恐怖怪談

私がまだ大学生の時、広島県K市の駅ビルで雑貨店のアルバイトをしていた頃の話です。

当時、夜のシフトで働いていた私は、レジ締めや店の施錠なども任されていて、大体いつも最後は一人で作業することが多かったんです。

元々私は霊感というものが強い方で、夜遅くまで一人で仕事をしていると、誰もいないはずの店内から物音や人の話し声が聞こえたり、揃えたはずの雑貨品が倒れていたりと、おかしななことが度々起こっていました。

ですが危険が及ぶほどの事はなかったので、あまり気に留めないように仕事に専念していたんです。

そんなある日、同じバイト先の先輩からこんなことを聞かれたんです。

「夜遅くまで一人で仕事していて怖くない?」

時々気になることはあるけれど特に怖い思いはしていないと答えると、先輩はバツが悪そうにしてこんなことを話してくれました。

先輩の話によると、元々夜のシフトはその先輩が担当していたそうなのですが、夜遅くまで作業をしていると、誰もいなくなった店内の隅に、うずくまっている女性の姿を見るようになったのだそうです。

それがあまりにも毎日続くので、怖くなった先輩は夜のシフトを断り、その結果、私にお鉢が回ってしまったらしく、それで心配した先輩は私に声を掛けてくれたようなのです。

先輩は責任を感じたのか、

「これから夜のシフトは私と二人で担当しよう。」

と言ってくれました。

一連の話を店長に告げ、店の隅々に盛り塩をするなど対処した上で、その日、私たちは初めて2人体制で夜のシフトに臨んだんです。

すると、夜遅くにいつも通りの締め作業をしていた時のことです。
ふと思うと、辺りの空気が普段よりひんやりしていることに気が付きました。

注意深く辺りを窺うと、普段は聞こえるはずの空調の音や近くを走る車の騒音までもがピタッと止んでおり、お店の中は冷たい静けさに包まれていました。

なにか変だと思い、店の奥で掃除をしていた先輩を呼ぼうとした時でした。

物凄い形相で先輩が私に駆け寄ってきたんです。

「足音が聞こえる!!!」

上擦った声で先輩がそう言うので、私も耳を澄ませてみると、

『コツコツコツコツ…』

と、確かに先輩が言う通り、高いヒールを履いたような女性の足音が聞こえるんです。

いつも以上に静寂が漂う店内に、それはすごい存在感を示すように響いていました。

駅ビル内の店舗なので、他のお店の従業員や駅利用客の足音だろうと思ったのですが、異様に静かな店内では妙にその足音が気になって、しばらくの間、私たちはその足音に耳をそばだてていました。

コツコツコツコツと、ハイヒールで歩く音が遠くの方から近付いて来たかと思うと、その後ゆっくりと遠ざかるように小さくなっていたので、やはり店の前を人が通り過ぎただけなのだと安堵しました。

すると、小さくなっていた足音は踵を返すようにコッコッコッコッコッコッと戻ってきて、今度は先ほどより大きな音を立て走って近付いて来るのが分かります。

余りの気味の悪さに先輩と二人震え上がると、降ろしきらずにいた店のシャッターの隙間から赤いハイヒールを履いた足が見え、タタンッとそこで止まったのが分かりました。

誰だか分からないその女の余りに奇妙な行動に鳥肌が立ち、私たちはそのまま固唾を飲んでシャッターの隙間を注視していると、足は店の前をうろうろと歩き回り、まるで何かを探している様にも見えます。

私たちは声も出せず、ただただ2人で震え、その足が早く通り過ぎるのを待つことしか出来ませんでした。

足は店の前を行ったり来たりして、たまにピタリと止まっては店の方を向いています。

すると突然先輩が悲鳴を上げたんです。

顔を後ろに背け声も出せずにいる先輩が、指差す先を恐る恐る見てみると、シャッターと天井の間に設けられた採光用のガラス窓から、睨みつける様にこちらを見下ろす女の顔が覗いていたんです。

あまりの恐怖に私と先輩は抱き合ったまま腰を抜かし、そのまま放心してしまいました。

どのくらいの間そうしていたのか、しばらくすると、なかなか店が閉まらないのを心配して来てくれた警備員の方に声を掛けられ、私たちはハッと我に返りました。

すぐに窓の方を見ましたが、女の姿はありませんでした。
周りを確認しても誰の姿もなく、そんな私たちの様子に警備員さんは首を傾げていました。

それからしばらくして、先輩と私はバイトを辞めました。

天井下の採光窓から女の顔が覗いていた時、シャッターの隙間からはハイヒールを履いた足が確かに見えていました。

つまり、女はゆうに3mを越える程の身長だったと言えます。

とてもじゃありませんが、あれが人間だったとは思えません。

そして何より、あの怨みの込もった女の視線を思い出すだけで、今でもあの時の恐怖が蘇ってきます。

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