【怖い話|実話】短編「追いつけない…」心霊怪談(宮崎県)

投稿者:日野りこ さん(25歳/女性/個人事業主)
体験場所:宮崎県M市のバイパス

これは私が宮崎県M市内の某大学に通っていた頃の話です。

夜中にふと、友人に借り物をしていたことを思い出し連絡しました。
「暇だから今持っていっていいかな?」と尋ねると、友人はすぐに「気をつけて来てね」と言ってくれました。

すぐに支度をして、家を出たのは深夜2時頃でした。

深夜2時の出発
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友人宅は車で20分ほどの街から少し離れた場所にありました。

昼間なら車通りの多いバイパスも深夜はガラガラ、街灯も少なく道路の周りは畑ばかりで、やはり夜はほぼ自分の車のライトだけが頼りのような道でした。
昼間とは違う雰囲気に少し怖気付き、好きな音楽をかけて歌いながら車を走らせました。

片道2車線の左側を走行していました。
自分の車以外に周囲に車はありません。
たまに対向車線をタクシーがすれ違うくらいです。

ある信号を境に街灯は全くと言っていいほど消え失せ、道はほぼ完全に真っ暗になってしまいました。

ライトをハイビームにして車を走らせていると、突然、目の前に人影が見えました。

突然の人影
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女性です。
しかも2車線のど真ん中を走る女性。

今考えると異常な光景なのですが、その時の私は違和感を覚えるより先に、(こんな時間に大丈夫かな?乗せていってあげようかな…)と考えていました。

黒いショートカットヘアに白いカーディガン、赤いロングスカート姿の女性。

ハイビームだと眩しいかと思い、ライトを下向きに切り替えました。やっぱり真っ暗な道であることを再認識します。

(こんな暗い中を走ってて…彼女、大丈夫かな?)

と、心配しながら車を進めたのですが…
おかしなことに気が付いたんです。

追いつかないんです。

追いつかない
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(なぜ走る女性に車で追いつけないの?)
不思議に思うと同時に、そこから全てが怖くなりました。

まず2車線の車道のど真ん中を、ましてや街灯もない暗闇を、なんの明かりも持たずに走ってる人なんて普通に考えていませんよ。

もし彼氏と喧嘩して車から降ろされたとか、何かしら理由があって困っているのなら、私の車のライトに反応するはずです。
なのにその女性はただひたすら前だけ見て走っている。
後ろから来た私の車に見向きもしません。

そして何より車で追いつけないって…。

怖くなった私はひたすら車を走らせました。

ひたすら車を走らせる
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なんとか友人宅に到着すると、私は息も絶え絶えまずは今の体験を友人に話したんです。
すると、眉間に皺を寄せながら私の話を聞いていた友人は、聞き終えて一息つくと、こんな話を始めたんです。

「あのバイパスでさ、昔、事故があったんだよ。新婚さんがドライブ中に中央分離帯の木にぶつかって、旦那さんは即死だったんだって。奥さんは血だらけのまま走って助けを求めていたらしいよ。その奥さんも亡くなったみたいなんだけど…」

「事故でぶつかったその木には、なぜか今ではたくさんのツタが絡まっているんだよ。他の木にはツタなんて生えないのに。いくらツタをとっても、木を植え替えても、どうしてもツタは生えてくるんだって。この辺では有名な話だよ。」

生え続けるツタ
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「もしかしたらリコ(私)は、その懸命に助けを求める奥さんの姿を見たんじゃないかな?」

その日は怖いので、泊まってから次の朝に帰ることにしました。

翌日の帰り、昨日のバイパスを走りながら中央分離帯の木を注意して見ていると、確かに大量のツタが絡まっている木がありました。
そして今まで気が付かなかったのですが、道路脇にはたくさんの花が供えてあったんです。

道路脇に沢山の花
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私はこの辺りの育ちではなく、地元では有名なこの話を全く知りませんでした。

その日の学校で、昨日の体験を、純粋に怖い体験談として友人たちに話しました。

すると1人の女の子が、
「…私も見たことある」
と言い出したのです。

私も見たことある
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その子の場合、私と同じように夜中にあの道を運転中、ライトをハイビームにしたところ、向こうで赤い服の女性が手を振っているのが見えたそうで、何か困っているのかと近寄っていくけど、一向にその人の元へは辿り付けなかった、という話でした。

手を振る赤い服の女性
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それを見かけた場所も、私とだいたい同じ辺り。

怖がって私たちがキャーキャー言っていると、クラスの男の子に「その辺は心霊スポットになってるから、夜中にはあまり通らないほうがいいよ」と注意を受けました。
遠回りをすれば明るい道があるから、そちらから行った方がいいと。

クラスの男子の注意
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それ以降、夜はそのバイパスを避けて通っています。

その道路で事故があったニュースをよく見かけます。
かなり事故の多い道路のようです。

あの女性は今でも誰かに助けを求め、あのバイパスを彷徨っているのでしょうか?

そう思うと怖いというよりも、助けてあげたいたいという気持ちになります。
同じ場所で見たと言う友人もそう言っています。

怖いというか、悲しいというか……そんな心霊体験でした。

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