【怖い話|実話】短編「タクシー運転手の話」心霊怪談(千葉県)

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投稿者:りんちゃん さん(24歳/女性/看護師)
体験場所:千葉県Y市の某病院

私は千葉県Y市の病院で看護師として働いています。

勤務シフトは夜勤を含めた3交替で、場合によっては帰宅が深夜になる事も珍しくありません。
そんな日は帰りにタクシーを利用するのですが、今回お話するのは、そのタクシーの運転手さんから聞いた話です。

その夜も、仕事終わりが深夜1時を回り、私はタクシーを呼んで帰路に就きました。
家までの乗車時間は3~40分ほどあります。

「お互いに遅くまでご苦労様です」なんて、少しだけ、最初は運転手さんとそんな他愛ないやり取りをしていたのですが、しばらくして、運転手さんが急に思い出したように、

「そういえば、お客さん。あの病院の、看護師さん…なんだよね?」

おもむろにそんなことを聞くので、

「え?…ええ。そうですけど。」

と、私は少し身構えてそう答えると、運転手さんはこんなことを話し始めたのです。

「そうそう、話してみたいことがあったんだよ、あの病院の看護師さんに。
いや、私ね、いつも仕事が終わるのが夜中の2時頃なんだけどね、会社の営業所から家まで近いからさ、いつも歩いて帰っているんですよ。
その時にね、〇〇病院(私の職場)の前を通るんですけどね、その門の前を通り過ぎる頃かな、ふっと私の前を自転車に乗ったお年寄りが横切ったり、門の前に女の人が立っていたりってね、いつも誰かしら見かけるんですよ。おかしいなぁ、こんな夜更けに、しかもこんな場所に人がいるなんて変だよなぁ、そう思ってね、振り返ってもう一度見てみるんですけど、もう居ないんですよ。私も仕事上がりで疲れているから、見間違えかな?っとも思うんですけどね…。」

運転手さんの話し声を聞く限り、悪い冗談を言っているようにも聞こえません。
かと言って、夜中はもちろん病院は閉まっているはずですし、近隣にはお店などもありません。
それに運転手さんの目撃時間は深夜の2時。病院の前は真っ暗な田舎道です。そんな夜更けにお年寄りや女の人がいるなんて、あまり考えられない事です。

辺りはシーンと静まり返った深夜、ほんの少し街灯があるだけの病院前の田舎道に、そんなちょくちょく人がいる?私も不思議に思って、

「それって、どの辺りですか?具体的に」

と、運転手さんに尋ねました。

「ほら、あの、門のところ。職員の方たちが出入りする駐車場の、入口のところだよ。あそこに白っぽい建物があるでしょう?いつもその辺りなんだよなぁ、誰かとすれ違うの。」

それを聞いて私はゾッとしました。

その白い建物とは、病院の建屋の奥の方に当たり、そこは霊安室が納められた建物です。
もしかして、運転手さんが夜中に見かける人たちって…

私は怖くなって、車窓を眺めていた目を伏せると、あることを思い出したんです。

その霊安室の近くには、女子職員の仮眠室が幾つかあるんです。
その中で、最も霊安室に近い奥の方の仮眠室がやばい、という漠然とした噂が病棟内にありました。
(なにがやばいのか…?)なんて私は思っていましたが、タクシーの運転手さんの話を聞いて、何となくそれが分かった気がします。

「でもね…」

と言って、運転手さんは話を続けます。

「そのお年寄りとか女の人を見ても、不思議と怖いとかは思わないんだよなぁ~。あれ?誰かいたよな?こんな時間に?おかしいなぁ、って思うだけで。」

そんな風に話す運転手さんに、

「その白い建物って、霊安室が入ってるんですよ」

と私が言うと、運転手さんはただ、やっぱりそうだったのかぁ、とだけ呟きました。

深夜の2時頃、病院の前に現われる人達って、一体誰なのでしょうか…結局は謎のままです。

ところで、この運転手さんのタクシーに乗り込んで病院から出た時、タクシーの車窓から見えた病院の門、その近くにいた女の人って・・・

その日はあまり考えないようにしながら眠りました。

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