【怖い話|実話】長編「城跡公園の夜桜」不思議怪談(千葉県)

投稿者:ゆきお さん(20代/女性/主婦)
体験場所:千葉県S市 某公園

これは、私が中学2年生になった春の話です。

春になると毎年、我が家は家族4人で必ず花見に行っていました。

当時私が住んでいた千葉県のS市には、城跡を公園にした有名な花見スポットがあります。
広い公園にたくさんの桜が植っていて、花見の季節は本当に綺麗で、朝から晩まで人が溢れ、屋台なども出て賑わっています。

公園に隣接している広い駐車場でも車が入りきらないくらい大勢の人が訪れるので、近くのスーパーに車を停めて、そこからわざわざ数十分も歩いて来る人も珍しくありませんでした。

有名花見スポット
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その日はちょうど良いポカポカ陽気でした。

家族で買い物に出かけた際に、目に入った公園の桜が満開で、それがあまりに綺麗だったので、私は思わず父と母に「今日花見をしよう!」と提案しました。
その提案はすんなり受け入れられ、買い物後に一旦家に戻り、荷物を降ろしてから再び公園に花見に向かうことになりました。
しかし、父の買い物が思った以上に時間がかかり、家路に着く頃には日も暮れかけ、すっかり夕方になっていました。

買い物後、家に向かう車内で「花見は延期しよう。」と父が言い、私はとてもガッカリしました。

その時、後部座席にいた小学高高学年になった弟が「別に夜に行けば良いんじゃない?」と言いました。
我家では、父が夜の外出を固く禁じていたため、どうせ無理だろうと思っていましたが、意外なことに、あっけらかんと「そうするか。」と父が言うのです。
(え?いつもなら我慢しろって怒るのに…)と思いましたが、今思えば、父は昼の花見の混雑に巻き込まれるのが嫌だったのかもしれません。

「夜だと屋台はないけど、いいのか?」「大丈夫!」という父と弟のやりとりを、私は後部座席で聞きながら、ふと外を見ると、辺りはすっかり日が沈んでいました。

一度家に帰り荷物を置き、再び公園へ向け出発。
有名な桜のスポットですから、夜とはいえ沢山の人出だろうと思っていたのですが、駐車場の車はまばらで、全く混雑した様子はありません。
駐車場に車を止め、「今日来てラッキーね」と言う母の声を聞きながら外に出ると、私たちは公園へと続く大通りを歩き始めました。

公園内に入ると視界はより暗くなり、街灯がないと足下が見えないくらいです。

肝心の夜桜はと言うと、ところどころに立っている街灯の、光が当たる部分だけがほんのり桜色に照らされ、他は全て真っ暗という、何とも綺麗とは言い難い景色でした。

「夜桜どころか道も見えないな」と父が言い、母も「なんか思ってたのと違うわね」とブツブツと文句を垂れながら歩く二人に続き、私たちは一番大きな桜がある場所を目指しました。

「お、ここは綺麗だな」

と、その目的の桜の木を見つけた父が言いました。

一番大きな桜の木
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そこは広く開けた場所で、大きな桜の木が一本そびえ立っていて、夜桜用のライトアップがされていました。

屋台がないので本当に桜を見るだけでしたが、私は人生で初めての夜桜体験に興奮してパシャパシャと携帯で写真を撮りまくりました。

「そろそろ帰るか」の父の声で、私たちはその場を後にし、駐車場へ向かって歩き始めました。

帰りは来た道を戻れば良かったのですが、夜の公園にはあまり来たことがなかったので、私たちは少し探検しながら帰ることにしました。

言い出しっぺの父を先頭に、私、母と弟の順で、街灯の少ない暗い道を歩きます。

しばらくして目が暗闇に慣れた頃、私も不思議と楽しくなっていて、ペチャクチャと父と喋りながら歩いていたのですが、ただ、どういうわけか歩いても歩いても全く駐車場に辿り着きません。

次第に疲れてみんなの口数もり出した頃から、私たちは徐々にある不安を抱き始めました。

案の定、私たちは道に迷っていたのです。
とても広い公園で、ましてや慣れない夜道でしたので、道に迷うのはしょうがないことだったのかもしれません。

そんな時、ちょうど公園に設置されている地図看板を発見しました。
「良かった~」と私は安心し、父に帰り道のルート検索を任せ、私たちは父の後を追うように再び歩き始めました。

意外と今いる場所から駐車場までは近いようで、「5分くらいでつくんじゃないかな、大通りじゃない道だけど」と言う父の言葉を励みに、母と私と弟は疲れている足を一生懸命動かしました。

しかし父は、どう見ても公園のメインの道とは違う少し外れた細い小道にどんどん入っていくので、(また道に迷ってるんじゃ…?)と再び不安に感じ始めた頃、一本の赤い小さな橋が見えてきました。

赤い小さな橋
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和風で小ぶりな橋で、落ちないか少し心配になるくらい頼りない橋です。

橋を渡った先は突き当たって左に曲がる道でした。

突き当たりスペースには、公園によくあるような大きなゴミ箱があります。
その横には、ゴミ箱と同じくらいの大きさの青白い光がぼや~と光っていて、その場所だけクッキリと見えたのです。

ゴミ箱横の青い光
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(小さい街灯かな?でも設置場所おかしくね?)

そんなことを思いながら突き当りを曲がると、ようやく駐車場を発見したのです。

直ぐに車に乗り込んで、私たちはやっとの思いで帰路に就くことが出来ました。

疲れのせいもあってか、帰りの車内はシ~ンと静まり返っています。

父が「いや~ずいぶん歩いて疲れたな。やっぱ昼間の方がいいね。」と言い、私も「たしかに。ちょっと疲れたよね。」と言うと、弟は「僕、もう夜に桜みたくない。」と言うんです。

「どうして?疲れたけど、結構綺麗だったじゃない。」と母がたしなめるように言うと、

「だって、女の人がこっち見て笑うんだもん。気持ち悪いよ。」

と、弟が眉間に皺を寄せて言うんです。

「だれだよ女の人ってw 誰ともすれ違ってないじゃん。」

と思わず私が突っ込むと、

「橋を渡ったところにいたよ。僕たちを見てた。」

弟の話をよく聞くと、橋を渡ったところのゴミ箱の横に、着物を着た髪の長い女の人がしゃがんだ状態でこちらを見ていた、と弟は言うのです。

ゴミ箱横の着物の女性
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私はゴミ箱の横にぼんやりと光っていた何かを思い出し、「もしかして、あれが着物の女の人?」と聞くと、

父が「ゴミ箱はあったけど、その横に人なんていなかったぞ。それに光ってもなかったし」と言いました。

どうやら私が見た青い光は、父には見えてなく、弟には髪の長い着物の女がニタニタ笑った姿に見えていたようなのです。

どことなく薄気味悪い空気が車内に淀み、しばらく重苦しい沈黙が流れました。

それでも弟は真剣に「絶対に見た!目があった!」と言い続けましたが、私たちは気味が悪く、誰も弟の話に取り合おうとはしませんでした。

その翌日のことです。
私は昨日の公園での体験が気になったままだったので、その公園の近くに住む友人にその事を話してみたんです。

すると、

「何年もあそこで遊んでるけど、そんな橋なんて見たことないよ。嘘ついてる?」

そんなことを言われてしまったんです。

驚きました。
確かに私たち家族は、あの小道の先にあった赤い橋を渡って駐車場に辿り着いたんです。
でも、公園をよく知る友人は、そんな橋はないと言う。

もしかしたら、弟にはニタニタ笑う着物姿の女性に見え、私には青い光に見えたあの不可思議な現象だけではなく、その手前にあった赤く小さな橋までもが、何か別次元のものだったのでしょうか?

よく考えてみると、夜とは言え桜が満開の時期にあそこまで人が少ない公園もおかしいような気もします。

もしかしたら、もっと前から私たち家族は、どこか異次元の中に迷い込んでいたのでしょうか?

しかもその友人が言うには、そこはかつての処刑場の跡だとか、池には幽霊が出るという噂があるとか、心霊スポットとしても割と有名な場所らしいことを教えてくれました。

よくよく考えたら、あそこは城跡です。
(昔はここで、何人も人が死んでるのかもしれないな…)と思うと、何だか不気味で、それ以来その公園には足を運んでいません。

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