体験場所:大阪府大阪市の私が昔通っていた小学校
これは私が小学5年生の時に実際に体験した話です。
当時、私はよく友人と放課後の教室に居残っておしゃべりをしていました。
私を含めて女子5人で、誰もいなくなった教室の真ん中に集まり、恋バナや怪談を話して大盛り上がりしている日々は本当に楽しかったです。
ある日のこと、いつも通り放課後の教室でおしゃべりをしているうちに、話題は「学校の七不思議」のことになりました。
私たちにとって身近な小学校を舞台にした怪談は最高にワクワクする話題で、特にその日の話があまりに盛り上がり、「実際にやってみよう!」と、気分が高揚した一人の友人の言葉に反対する人は誰もおらず、実際に七不思議の何か一つを試してみることになりました
友人の1人が、ちょうど最近『トイレの花子さん』についての怖い話を聞いたと言うので、私たちはそれをやってみることにしたんです。
その友人が、聞いた話を思い出しながら教えてくれた手順はこうでした。
場所は2階の女子トイレ。
その4番目の個室の前に立ち、扉を4回ノックしてから「花子さん、遊びましょ」と声をかけます。
すると中から「…はーい」という返事が返ってきて、花子さんと会うことができる、という内容でした。
私たちはみんなで何度も手順を確認した後、帰り支度を済ませ、そのまま花子さんに会いに2階の女子トイレへと向かいました。
ランドセルを揺らしながらトイレに向かう途中、怖さと緊張のためか、だんだんと、みんなの口数が減っていったのを覚えています。
そんな時、廊下の真ん中に不自然にボールなんかが転がっていたもんだから、もうみんなビックリしてトイレに着く前から叫んだりしていました。
そうしてようやく辿り着いた2階の女子トイレは、電気が消えて真っ暗でした。
誰もいない放課後に見るトイレは、静かで暗くて、普段とは違う不気味な場所に感じました。
私たちの小学校では、トイレはスリッパに履き替えて入ることになっていました。なのでトイレの入り口に誰かが脱いだ上履きがない場合、トイレの中には誰もいないということが分かります。
その時も入り口に上履きがないのをみんなで確認しました。
中には誰もいないと知った上で、まずは友人2人がトイレの中に入って行くことになりました。
私を含めて他の友人は、トイレの入り口からジッと様子を伺っていました。
すると突然、トイレに入って行った2人が大声をあげて、こっちに走って帰ってきました。
びっくりして一緒に大声を上げる私たちに、トイレから出て来た2人が、
「4番目のトイレ、鍵がかかってる!」
と、泣きそうになりながら訴えてきました。
みんなもう大パニックです。
しかし、それを聞いた私は逆に、なんだか冷静になりました。
古い鍵が何かの反動で動き、人がいないのに鍵が掛かってしまった個室を何度か見たことがあったからです。
どうせこれも一緒だろう、と、急に興醒めした私は、みんなが怖がるのを尻目に意気揚々と1人でトイレに入り、4番目の個室の前まで進みました。それを他の友人はトイレの入り口から覗いています。
がっしりとドアノブを握り、それをガチャガチャと回しながら前後に扉を揺らしてみました。
やっぱり鍵はしっかり掛かっています。
どうせ事故だろう、そう思った私は軽いリズムで4回扉をノックすると、
「誰かいらっしゃいますかぁ~???」
とふざけて大声で言いました。
その時でした。
誰もいないはずのその個室の中から、本当にか細い女性の声で、
「すみません…」
と聞こえたんです。
私は一気に血の気が引いて、声が聞こえると同時に大声をあげてトイレを飛び出しました。
声はみんなにも聞こえたようで、みんなも私とほぼ同時に叫んで走り出しました。
そのまま振り返ることもなく走り続けた私たちは、学校の出口の辺りでやっと立ち止まりました。
「聞こえたよ、ねぇ…ハァハァ」
「ハァハァ…聞こえた…」
「なに…あれ…ハァハァ」
「ハァハァ、花子…さん?」
みんなで息を切らしながら、さっきの声について確認し合いましたが、その正体など誰にも分かるはずもなく、もちろん戻る気にもなれず、時間も遅かったのでその日はそのまま解散しました。
その日以来、私たちが七不思議を試すことは二度とありませんでした。
あの時の友人たちとは別々の中学に進学したこともあり、もう長らく会っていません。
ただ、私の中で忘れられないエピソードとして、あの出来事が残り続けています。
あれは本当に花子さんだったのでしょうか?
最近知ったのですが、一般的に知られている花子さんを呼び出す手順というのは、3階のトイレの3番目の個室の前で3回ノックして、「花子さん、遊びましょ」と声を掛けるというものらしいです。
私たちが試したものとは数字が全く違います。
それに、私はあの時「花子さん、遊びましょ」という決まり文句も言っていません。
私たちが行った行為は、従来の花子さんを呼び出す手順とは全く異なるのです。
それなのに聞こえた、「すみません…」というか細い女性の声。
花子さんでないのなら、あの声は、あれは一体なんだったのでしょうか…
放課後の暗い学校のトイレで、靴も履き替えず電気も点けずに用をたしていた誰かだったのでしょうか?
それともやはり花子さんなのか?
もしくは花子さん以外の何かだったのか…
いずれにしても、返ってきた声は、
「遊ぼう」でも「呪ってやる」でもなく、「すみません…」でした。
あんなに煽ってしまった私に対して謝るなんて、なんて腰の低いことでしょうか。
これが小学生の時に私が体験した、ちょっと不思議で懐かしいお話です。
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