
体験場所:東京都大田区・京急○○駅から徒歩10分の古いマンション
これは、私が昨年の秋に自宅マンションで体験した出来事です。
場所は東京都大田区、京急線のとある駅から徒歩10分ほどの古いワンルームマンションでした。
夜は人通りの少ない静かな場所にあり、それぞれの部屋への出入りは外廊下と外階段を使うタイプの建物です。私の部屋は3階でした。
その日も仕事で遅くなり、帰宅したのは夜23時を過ぎていました。
コンビニで買った夕食を片手に、外階段を上がって3階の外廊下に着いた瞬間、なぜか空気がひんやりしているように感じました。季節的に寒い時期でもないので、ただただ妙な違和感があったのを覚えています。
外廊下を歩いて自室の305号室の前まできて、鍵を取り出した時でした。
背後から小さく、しかしはっきりと声が聞こえました。
「……確認、お願いします」
驚いて振り返りましたが、廊下には誰もいませんでした。
階段の方を見ても人影はなく、物音もしません。
最初から誰もいないつもりで廊下を歩いていたので、一瞬どきりとしましたが、気のせいかと思い直し、もう一度ドアに鍵を差し込もうとした瞬間でした。
「……305、確認お願いします」
今度もはっきりと、しかも自分の部屋番号まで呼ばれたのが聞こえました。
その時はさすがに背筋が冷えました。
「何ですか?」
思わず私もそう声を返したのですが、返事はありませんでした。
ちょうどその時、隣の部屋の住人の方がドアを少し開けて、「今、声がしませんでしたか?」と私に尋ねられました。
どうやらその方にも声が聞こえたそうです。しかも、「305」という言葉も聞いたと。
やはり私の聞き違いではない、と思うしかありませんでした。
二人で廊下や階段まで確認しましたが、結局誰もおらず、スピーカーのような音を出す装置なども見当たりませんでした。
翌日、念のため管理会社に連絡しましたが、「私たちも特に夜間の巡回などしていませんので分かりかねますが、もしかしたらですが、建物が古いので、配線の誤作動や音の反響かもしれませんね」という説明でした。
理屈としては納得できなくもありません。
ただあの声は、すぐ近くから直接発せられた人の肉声にしか聞こえませんでした。
それに業務連絡のような、まるで感情のこもっていない言い方だったことも、今も妙に引っかかっています。
それ以来、私は夜に帰宅してあの外廊下を歩くたび、無意識に周囲を気にするようになりました。何かしらの答えを見つけないと落ち着かなかったのだと思います。
特にあの体験から数日間は、廊下で一度立ち止まり、静かに耳を澄ませたりもしましたが、自分が何か怖いことをしているような気がして、余計に落ち着きませんでした。
結局、声を聞いたのはあの一度きりでした。
直接的な被害があったわけではありませんが、「説明はできるけれど、納得はできない出来事」という印象だけが強く心に残っています。
今振り返ると、もしあの時録音でもできていれば何か分かったのかもしれませんが、あの場ではとてもそんな心の余裕も時間の猶予もありませんでした。
誰かのいたずらだとしても、全く足音も気配もありませんでしたし、もし設備の誤作動なら同様の現象がたまに再現されてもいいと思うのですが、結局あの声を再び聞くことはありませんでした。
その半年後、私は部屋の更新をせずに引っ越しました。直接の理由は仕事や生活の都合ですが、あの廊下での体験が頭の片隅に残っていたのも事実です。
今でもあの外廊下と似たような場所を歩いたりすると、無意識に背後が気になってしまいます。

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