体験場所:神奈川県横浜市の賃貸マンション
以前私が住んでいた神奈川県横浜市の海の見えるマンションでの体験です。
そのマンションは築年数は古いものの、高台に位置していて眺めがよく、部屋には一年中心地よい海風が入る好物件でした。下見の時に一目惚れして直ぐに入居を決めたんです。

しかし、引っ越し直後から少し不思議なことが起こり始めました。
ピッタリ閉めたはずの部屋のドアがしばらくすると少し開いていたり、ふと見ると風もないのに電気の紐が揺れていたり、揃えたはずの靴が散らばっていたり……といった具合です。
また、夜中に度々金縛りに見舞われるようになりました。
別に疲れていたわけではありませんし、そもそも、どんなに疲れていても金縛りになる経験などそれまで一度もありませんでした。
金縛りになると、本当に寝返りも打てず身動き一つできないまま、終始キーンと耳鳴りが続きました。
自分ではどうすることもできず、ただ収まるのを待つしかありませんでした。

ある日、学生時代の友人が遊びに来た時のことです。
夕方から部屋で軽く飲みながらダラダラと話をしていると、気付いた頃にはずいぶん遅い時間になっていて、ようやく就寝したのは深夜3時頃だったと思います。
寝入って数分が経った頃でした。
「うあわああああーーー」
横に寝ていた友人が急に大きな呻き声を上げました。
私は驚いて飛び起き、
「どうした!?」
と直ぐに声を掛けたのですが、友人は両眼をカッと見開き、仰向けの姿勢のまま震えています。

その様子に不安を覚えた私は、慌てて部屋の電気を点けました。
すると友人は電気の光に反応したかのように、ハッと我に返ったようでした。
「・・・大丈夫か?」
と声を掛けると、
「夢の中で全く動けなかった・・・すまん。何だか怖くなったから帰る。」
そう言って友人はやにわに部屋を出ると、慌ただしく車に乗りみ、そのまま帰ってしまいました。
それから数日後のことでした。
マンションの管理人から、
「〇〇さん、夜中に叫び声を出すのはやめてくださいね」
と、やんわり注意されました。
私は先日の友人のことが思い当たり、
「ああ、それは先日、遊びに来た友人が……」
と、あの日のことを話すと、
「いや、その日だけでなく、度々夜中に呻き声や叫び声がするって、ご近所から苦情が入っていますよ」
「え!?」
私は管理人さんの言葉を聞いて驚きました。
つまり、どうやら私は身に覚えがないうちに、あの夜の友人と同じような行動を繰り返していたことを、その時初めて知ったんです。
それから数週間後のこと。
当時付き合い始めだった一回り以上年下の彼女を、自分の部屋に連れ込むことに成功しました。
もちろん下心ありだったわけですが、彼女が部屋に入ってすぐのこと。急に部屋の中の空気がピンと張りつめたように変化するのを感じました。
(まあ、気のせいだろう…)
と、あまり気にしなかったのですが、今度は二人で軽い食事を始めた時でした。
『ガシャーン』
突然食器棚からグラスが落ちて割れたんです。

「地震でもないのに変だね」
などと言って、私たちは笑っていました。
そして、カウチソファに体を寄せ、大画面テレビを眺めていると、突然フッと部屋の電気が全て消えて真っ暗になりました。
「…停電かな?」
と思いましたが、部屋の窓から見える近所の家々には明かりが灯っています。
それならこのマンションだけの停電かと考えて、玄関から顔を出すと……共用廊下や他の部屋の明かりも点いているのが分かります。
だんだん薄気味悪く感じながら部屋の中に戻ると、今度は彼女が寒気がするといってブルブル震えていました。季節は夏です。しかもさっきまでは何ともなさそうだった彼女が突然腕をさすって寒がっている。
(やっぱりこの部屋が原因なのか・・・?)
彼女になにかあったらマズいと思い、私はとりあえず車で彼女を自宅まで送ることにしました。
その後、一人で自分の部屋に戻ると、明らかに先ほどまでとは異なり、部屋の中は平穏な空気に戻っていました。
私は迷信とかに捕われるタイプではないですし、幽霊などに関しても半信半疑に思っています。ですが、この時ばかりは流石に恐ろしくなり、以前仕事で知り合った霊感が強いと言われる女性に連絡を取り、今回の一連の話を聞いてもらいました。
すると幸いにも、彼女はこの件に興味を持ってくれたようで、
「一度部屋に行ってみたい」
と言ってくれました。
そして翌週、彼女が部屋にやってきました。
廊下を通り、ダイニングに入った瞬間、
「そこにいる」
彼女は押し入れの方を指差しそう言いました。
「えっ?」
突然の指摘に驚いたものの、私には何も見えません。
「その角のところ。髪の長い、若い女の人がいる。」
彼女はそう繰り返し言いました。

次の瞬間、
『ガシャン』

また先日のように突然食器棚からグラスが落ちて割れたんです。
全身の血の気が一気に引きました。
恐ろしくなった私は、慌てて彼女とともに部屋を出ると、近くのファミレスに駆け込みました。
以下、彼女が語るところによると、
「あれは恐らく地縛霊。あなたが部屋に人を連れてくると、嫉妬して色々と悪さをするのよ。特に女性が来た時は尚更……」
私は即日退去を決め、遠く離れた地への引っ越しを決行しました。
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