体験場所:奈良県奈良市
私の家族には、いわゆる霊感を持っている人間はいません。
私自身もオカルトの類は好きなのですが、やはり霊感はなく、これまでも、そしてこれから先も、一生幽霊などを見ることはないと思っています。
しかし霊感とは別に、父方の家系には昔から不思議な現象が世代をまたいで発生しており、それを私たち家族も否応なく目にするため、怪異の存在自体は信じざる負えないと思っています。
どういうことかと言うと…
私の一番初めの記憶では、当時、奈良県の奈良市に住んでいた小学校2年生の時のことです。
ある朝、父の車に突然大きく凹んだ痕が出来ていたんです。
昨晩までは絶対になかった痕です。
車は車庫の中に入れシャッターを下ろしていたので、外部の者の悪戯とは考えずらく、また凹み痕の周辺には擦った形跡も全くなく、それは不可解な凹み方でした。
それを見た父は、
「これはイタズラとか泥棒じゃないから。」
と、青ざめながらも何かを悟ったような様子で言い、すぐに田舎で一人暮らしをしている母親に電話を掛けたんです。
しかし、父の母親は電話に出ません。
更に青ざめた父が実家の近所の人に連絡し、確認してもらったところ、父の母親は亡くなっていました。
「…やっぱりか」と、半ば納得したような表情の父。
私が「驚いてないの?」と聞くと、「パパは霊感とか全然ないけど、この世に不思議なことはあるんだよ」と言っていました。
次に覚えているのは、父方の叔母が亡くなった時です。
叔母は乳がんを患っていて、私が小学3年生の時に亡くなりました。
末期がんで余命宣告を受けていたので、そろそろかもしれないなと思っていた頃のこと、突然、我が家の網戸の一つが勝手に外れて倒れたことがありました。
今までそんなことは一度もありませんでした。
誰かが触れたわけでもなく、強い風が吹いたわけでもありません。
本当に突然です。
先述の出来事もあったので、私たち一家は顔を見合わせました。
父が叔母の家族に連絡をすると、やはりつい少し前に叔母が亡くなったということでした。
私が中学生に上がった頃、父にこう聞いたことがありました。
「パパの家系で人が亡くなると、いつも不思議なことが起きるの?」
すると父曰く、父が物心ついた頃から親戚や家族の誰かが亡くなる時には、必ず身近な物が不可解な壊れ方をしたそうです。
中学生時分の私も『虫の知らせ』という言葉は聞いたことがありました。でも、父方の家系に続くその現象は少し感じが違っていて、もっと露骨でストレートな不気味さを私は感じていました。
父方の家系は代々神社の家系です。
もしかすると、そういう事が何か関係しているのかもしれないと父は言っていました。
(ちなみに、父たち兄弟の代には神職がいないそうなのですが…)
さて、ここまでが父の家系に纏わる不思議な話なのですが、この話には少し続きがあります。
私が高校2年生の時です。
またしても、父の車に不可解な凹み痕が付いていたんです。
父は「またか…」と、すぐに父方の親戚に連絡を入れました。
しかし血縁者に亡くなった方はおらず、父は不思議そうな顔をしていました。
そんな時、母方の親戚から一報が入ってきました。
母方の祖父が亡くなったそうです。
その知らせを聞いた瞬間、私たち家族の間に妙に重たく気味の悪い感覚が走りました。
父方の家系で引き継がれていた現象が、母方の家系に伝染したのだと…
その時の家族の引き攣った顔は、今も嫌な感覚と一緒に思い出します。
それから現在に至るまで、親戚の中で亡くなった人はいません。
ですが、今後は父方母方に関わらず、誰かが亡くなったらまた何か物が壊れるのだろうと思います。
ある一家に引き継がれてきた不可解な現象が、結婚という曖昧な契約により、もう一方の家系に伝染する。
私はまだ未婚ですが、将来結婚することになった時、相手の家系に…と思うと、少し怖いです。
(害は一切ないので別にいいのかもしれませんが…)
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