体験場所:東北のとある高速道路
私が4歳頃のことです。
私はよく覚えていないのですが、母から聞いた私たち家族の体験談です。
我が家は以前、東北地方に住んでいました。
当時、父の仕事が休みの日などは、家族で車に乗って色んなところに出掛けていたそうです。
中でも父の好きが高じてか、東北中の温泉を巡ることが特に多かったようです。
その時も温泉旅行からの帰り道だったそうです。
温泉で体も暖まっていて、旅の疲れもあったせいか、私は後部座席で、母は助手席でウトウトと眠っていました。
そのため車内はとても静かで、その時は父も大分眠かったと聞いています。
そんな時、夢うつつの母がふと目を開けて、そのまま前方に目をやると、何やら異様な視線を感じたそうです。
前に目を凝らすと、前方車両の後部座席から、満面の笑み浮かべて私たちの車を見ている女がいたそうです。
女の口はまるで裂けているかのように端を大きく広げて笑っており、その不気味な表情をただただコチラに向けています。
全身から血の気が引くのを感じた母は、これはおそらく普通のヒトではないと直感したそうです。
「スピードを落として!出来るだけあの車から距離をとって!なんだか嫌な予感がするから…」
母はすぐに前方車両を指差し父にそう伝えました。
「なぜ急にそんなことを?」と妙なリクエストに驚いた父も、突然目を覚ましたかと思うと恐怖の色を浮かべてそう訴える母を見て、不測の事態を察し、ハンドルを切って別車線に移動すると、ゆっくりとブレーキを掛けました。
先程の車から10台分以上の距離をとると、改めて父は母に理由を訪ねたそうですが、「今は運転に集中して」と、母はそれ以上何も語らなかったそうです。
数十分後、先程まで私たちが走っていた車線の動きが鈍り始めました。
嫌な予感がしながら、別車線をそのまま進んでいくと、先ほどの車を先頭に、後方数台の車両が玉突き事故を起こしていました。
先頭車両からすぐ後ろ何台かはぺしゃんこになっていたそうです。
もしも車線を変えず、後方にも下がらずあのまま走っていたら、最もひどく潰れていたのは私たちの車のはず。
その時、父も母も青い顔を見合わせ、後ろで眠る私を見て安堵すると同時に鳥肌が立ったそうです。
母は当時の事を今ではこう話します。
「もしかしたらあの日、あの女の人が見えたおかげで私たちは助かったのかもしれない。注意して運転するようにというお告げだったのかなぁ。ああ、生きてて良かった。」
そんな体験談を聞かされて育った私ですから、車の助手席に乗る時はなるべく眠らずに前方に注意し、運転手にもちょくちょく声を掛けるようにしています。
今のところ私自身は後部座席の不気味な女に出会ったことはありません。
出来れば会いたくないものですが、いざという時、事故に遭うくらいならその女が現れてくれた方がマシかもしれません…。
みなさんも車を運転される際は、くれぐれも安全運転を心がけてくださいね。
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