【怖い話|実話】短編「山手線で見た女性」不思議怪談(東京都)

投稿者:こぶらくだ さん(40代/男性/会社員)
体験場所:東京都 JR山手線(新宿駅〜池袋駅間)

私の体験した不思議な出来事をお話しさせていただきます。

今でも時々思い出しては、あの時は何だったのだろうと考え込んでしまいます。

当時、残業続きの日々を送っていた私は、その日も夜遅くまで会社に残っていました。

やっと仕事が一段落して、新宿駅から上野・池袋方面の山手線に乗り込んだのは23時45分頃だったと思います。

遅い時間のせいか、その日の山手線はいつもより空いていました。

私が乗り込んだ車両には、向かい合わせに並んだ座席にサラリーマン風の男性が2人と、若い女性が1人、それぞれ離れた場所に座っているだけでした。

私も空いている座席に座り、スマートフォンを取り出してLINEやメールのチェックを始めました。

隣の新大久保駅で先ほどの若い女性が降りていき、新たに40代くらいの女性が乗ってきました。

特に気にも留めず、私はそのままスマートフォンに目を向けていたのですが、なんとなく違和感を覚えて顔を上げると、その女性が私の斜め前の座席に座っているのが目に入りました。

最初に違和感を覚えたのは、その女性の服装でした。

11月末という寒い時期だったのに、薄手のワンピース姿で、上着も着ていません。

髪は肩くらいの長さで、若干湿っているように見えました。

そして、その女性の姿勢がどこか不自然でした。

背筋をピンと伸ばしたまま、両手を膝の上に置き、まるで人形のように動きがありません。

顔だけは、首をひねって後ろの窓を向いていたので、表情までは分かりませんでした。

見るともなく、その不自然な女性の様子を気にかけている間に、電車は次の高田馬場駅に到着し、サラリーマン風の男性2人が降りていきました。

車両の中には私とその女性だけが残されました。

やはりなんとなく気になって、とはいえ女性を直に凝視するのもためらわれます。
ですので私は、私の後ろの窓ガラスに映る姿を見て、その女性の様子を確認しようと後ろを振り返ったのですが、変なのです。

窓ガラスには私の姿しか映っていません。
その女性が座っているはずの場所に女性の姿がないのです。

慌てて直接その女性の方を見ると、確かにそこに座っています。
それなのに、窓ガラスには映っていないのです。

背筋が凍る思いがしました。
冷や汗が出てきて、手の震えが止まりません。

車両にはその女性と私の二人っきりです。

動揺しているのを悟られたくなくて、私はその場から動くことができませんでした。

そのうち、電車が次の目白駅に到着すると、その女性がゆっくりと首をひねらせ顔を前方に戻すと、私の方を向きました。

その顔を見た瞬間、私は思わず目を閉じてしまいました。

不思議なのですが、私はその表情を思い出すことが出来ません。
顔の輪郭ははっきりと覚えているのですが、その表情だけが今も思い出せないのです。

目を開けた時には、女性の姿はもうそこにはありませんでした。

目白駅に停車している電車のドアはまだ開いたままでしたが、誰かが降りて行った様子もありません。

目を閉じていたのは恐らくほんの2,3秒で、人が降りて見えなくなるほどの時間は経過していません。

まるで、最初からそこにいなかったかのように消えていたのです。

以上が私が遭遇した不思議な体験です。

その翌日、からかわれることを覚悟して、勇気を出して昨日の体験を会社の同僚に話してみると、実は似たような体験をした人が他にもいることが分かりました。

特に、遅い時間帯の山手線では、このような不思議な体験をした人が少なくないようです。

私自身、それまで幽霊や超常現象を信じる方ではありませんでしたが、この体験は私の中で「説明のつかない出来事」として明確に残っています。

都市伝説になっているような事故や事件との関連も調べてみましたが、決定的な手がかりは見つかっていません。

あれから1年以上が経ちましたが、時々夢に出てくることがあります。

その度に、あの女性の正体や、なぜ私の前に現れたのかを考えてしまいます。

窓ガラスに映らなかった女性の姿、そして記憶から消え去ってしまったその表情。

今でも遅い時間に山手線に乗る時は、つい車両の中を見回してしまいます。

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