【怖い話|実話】短編「知らない男」人間が一番怖いと思う話(埼玉県)

【怖い話】人間が一番怖いと思う実話|短編「知らない男」埼玉県の恐怖怪談
投稿者:もっちー さん(20代/女性/主婦)
体験場所:JR高崎線

これは数年前に私が実際に体験した話です。

あの日は普通自動車免許の学科試験当日でした。

試験の合格率を少しでも上げるため、私は試験前に鴻巣市にあるウルトラ教室を受ける予定でした。なのでその日は大分早起きして、朝5時台の始発に合わせて最寄りの熊谷駅へと向かいました。

駅のホームに着いてから電車が来るまでの間、私はベンチに座りながらアプリを使って試験勉強をしたり、友達とLINEでメッセージのやりとりをしていました。

10分ほど経って、反対側の下り方面の始発電車が到着しました。

(こっちもそろそろ来るかな。)

そう思い、荷物をまとめ電車に乗る準備をしている時でした。

「可愛いね」

そう聞こえました。
振り向くと、一人の男性が私に向かって近付いてきています。
30代後半ぐらいの男性でした。

(朝から気持ち悪いな…)

そう思い、私は男性を無視して乗車位置の白線に向かうのですが、その男性も私の後を無言で付いて来ます。

すごく気味が悪かったのですが、私は男性を無視したまま白線の前に並びました。

「お姉さん可愛いね」

また話しかけてきました。

これから受ける運転免許試験の前に、私は気持ちを乱したくありませんでした。
ですが、あまりにその男が気味悪かったので、万が一を考えて、もし何かあった時に助けてくれそうなサラリーマンの男性3人組が並んでいる乗車位置へ私は移動しました。

すると、男はいつの間にかいなくなっていて、私は心の底からホッとしました。

電車が到着し、3人組サラリーマンの後に続いて私も乗車。

その3人が座った目の前の座席に私は座りました。
なんだか心強く感じます。

「電車が発車します」

というアナウンスが鳴り、電車が走り出しました。

鴻巣駅までは片道20分程。
私は再びアプリを開き勉強を再開しました。

すると、左の方から車内を歩いてくる人の足元が視界の隅に入りました。
走行中に車内を歩く人は珍しいけど、(空いてる座席を探してるのかな?)と思う程度で、特に気にしませんでした。

それから直ぐのこと。

(ん?何か視線を感じる…)

そう思い、スマホの画面から視線を上げ、何気なく周囲を見回しました。

すると、私の同列シート右側3m程先に、さっきの薄気味悪い男が座っていたんです。
しかも粘り気のある不快な目でこちらをジッと見ています。

さっき車内を歩いていたのはこの男だったんだ。もしかして私を探していたのかと思うと、何だか吐き気が込み上げてきました。

熊谷駅で声を掛けられた時から、私はこの男が怖くて堪りませんでした。

鴻巣駅まで残り10分程。

(何も起きませんように…何もされませんように…)

私は心の中で何度もそう唱えました。

(もしかして…知り合いなのかな?)

そう感じてしまう程、男はずっと私のことを見ていました。

10分がこんなにも長く恐怖に感じたのは人生で初めてでしたが、とりあえず何事もなく無事に鴻巣駅に到着。

運良く目の前に座っていた3人組のサラリーマンも同じ鴻巣駅で下車。
私は怖くて男の方を見ることも出来ずに、3人組のサラリーマンに付いて電車を降り、そのままさり気なく3人の後ろに身を潜めながら改札をくぐりました。

そこからウルトラ教室までは3分程。
私は改札を出た直後、ダッシュで目的地へ向かいました。

駅の階段を急いで駆け下りると、

『カタカタカタカタ…』

後ろから、私が下りるスピードと同じくらいの早さの足音が聞こえました。

(まさかね…)

そう思って足を止め、私は恐る恐る後ろを振り返りました。

すると10段ほど上の階段に、あの男がニヤニヤして立っていたのです。

血の気が引きました。
あまりの恐怖にとにかく私はなりふり構わず全力で走りました。

そのままウルトラ教室の前に到着。男が追ってくることはなくホッとしました。
またしても人生で初めてとも思えるほど、怖くて長い3分を経験しました。

朝からこんなに猛ダッシュをする大人なんてきっと居ないだろうなと思いながら、息を切らしたまま受講の手続きをしました。

手続きが終わり教室に入る際、駅の方に再び目を向けると、駅の階段の下にまだあの男が仁王立ちで立っていて、私に向かって手を振っていました。

本当に怖くて鳥肌が立ちました。
周りには知らない人しかいないし、何かされたわけでもないから誰かに訴えることも出来ませんでした。

その後、運転免許試験には無事に合格し、免許を取得できた嬉しさからか、朝の出来事はもう大分忘れかけていました。

ウルトラ教室の受講から運転免許試験を受け、そして各種手続き等を澄ませた後、約8時間振りに鴻巣駅に戻って下り電車に乗り込みました。

そして無事に熊谷駅に到着した時、ふっと朝の出来事を思い出したんです。

「あれは何だったんだろ?」

朝のことがまるで現実とは思えず、もしかして夢でも見ていたのかと思いながら、私は駐輪場に向かいました。

そこに居たんです。
あの薄気味悪い男が。
またニヤニヤとこちらを見ているんです。

忘れかけていた朝の出来事が一瞬にして蘇り、あの恐怖が再び現実として思い出されました。

自転車を取りに行くことも出来ず、私は踵を返してダッシュで駅に戻り、駅員さんに事情を説明。そして同棲中だった彼に連絡して迎えに来てもらうことに。

10分程して、たまたま仕事が休みだった彼が車で迎えに来てくれました。

彼と一緒に再び駐輪場に向かい、私の自転車を車に運び込みました。
私が彼と居るところをどこかで見ているのか、既にあの男の姿は駐輪場にありませんでした。

咄嗟の判断とはいえ、駐輪場で引き返して彼に連絡して本当に良かったと思います。

「もしあの時引き返さなかったら…」

そんなことを思うと、今も背筋がゾッとします。

あの日以来、私は1人で電車に乗ることはなくなりました。
主に車で移動しています。

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