心霊スポット:京都府京都市東山区 将軍塚
当時、念願の車の免許を取ったばかりだった私は、早々に車を購入して、付き合っていた彼女を乗せてドライブデートを楽しんでいました。
ある日、彼女と夜景を見に行こうということになり、京都に住んでいた私は『京都 夜景』と調べ、検索サイトで一番上に出てきた『将軍塚』という夜景スポットに行くことになりました。
後になって知ったのですが、『将軍塚』とは、その土地を治めるために甲冑を着せた将軍の像が埋められた場所で、その像が地中で鳴動するとか、近くには首無しライダーで有名なトンネルがあったりと、京都ではわりかし知られた心霊スポットだったようなのです。
そんなことは知らずに、心躍らせながら彼女と暗い山道を車で走って行くと、大きな駐車場が見えてきました。
その駐車場に車を止め、夜景スポットまで歩いて行くと、やっぱり有名な夜景スポットなのでしょう、既にたくさんの人たちが夜景を楽しんでいました。
そこから見える夜景は本当に綺麗で、私たちも心地よい夜風に吹かれながら楽しい時間を過ごしていました。
1時間ほどした頃でしょうか。
彼女がトイレに行きたいと言うので、夜風で冷えたのだろうと思い、じゃーそろそろ戻ろうと駐車場にあったトイレを目指して歩き始めました。
戻る道中、来る時には気が付かなかったのですが、道の脇にひっそりと佇む寂れた鳥居が目に入り、少々薄気味悪く感じたことを覚えています。
トイレに到着して、外で彼女を待っていると、突然中から「キャー」という彼女の悲鳴が聞こえてきました。
「ど、どうしたん!?」
そう言って、トイレの外から声を掛けると、
「血!血!血!」
と声を上げながら彼女が慌てた様子で外に飛び出して来ました。
彼女を落ち着かせながら中で何があったのか訳を聞くと、
「入った時は絶対になかったの!それなのに用が終わってトイレのフタを下ろしたら、表面にベットリと血が付いてて…」
ゾッとした彼女は思わず悲鳴を上げ外に飛び出したのだと言います。
そんなこと本当にあるのかと思い、私は確認しようと女性用トイレに入ろうとしたのですが、
「見ない方がいい…」
と腕を掴まれ、青くなった唇を震るわせている彼女のその表情を見て、私は中に入るのを思い留まりました。
何だか気味が悪いので「早く帰ろう…」と、足早に車を目指して駐車場を歩いていると、ふと私は奇妙なことに気が付いたのです。
私たちの車の他に、車が1台も止まっていないのです。
あんなに沢山の人が夜景を見に来ていたのに、車が全くないなんて絶対におかしいんです。
歩いて来れないこともないのかもしれませんが、夜景スポットのそこは当然小高い山の上にあり、しかもあんなに沢山の人がみんな歩いて来ただなんて絶対に考えられません。
(もしかしたら、あの夜景を見ていた人達はみんな、『人』ではなかったのか…)
そんなことがふッと脳裏をよぎり、私はぶるりと身震いしました。
しかし、さっきのトイレの一件で完全に怯え、私の横で青い顔をしている彼女にこのことが伝わってはいけないと、私は極力平静を装い、車に戻ると直ぐに発車させその場を後にしました。
帰りの山道を走る道中、ところどころに山小屋の様なものが目に入り、
(もしかしたら夜景を見ていた人たちは皆この辺りに住む人なのかもしれない。それなら歩いて来てもおかしくないもんな。)
(と言うか、そもそも少し暗かったから人と木を見間違えてしまっただけかもしれない。)
などと、無理に自分を納得させようと私は必死でした。
そんな出来事からしばらくたったある日、再びあの日の話をしていた彼女がこんなことを言うんです。
「あの時は怖くて言えなかったけど、あんなに沢山の人が夜景を見ていたのに、駐車場に車が一台もなかったよね。」
彼女も私と同じことに気が付いていて、私と同じくただそれを口にしなかっただけなのだと。
つまり、私一人の勘違いではなかったのです。
更に彼女は続けてこんなことを言うんです。
「女性用トイレには個室が三つあったんだけど、そのうち二つは使われてて、中から水が流れる音がしてたんだよね。それなのに車が一台もないって…おかしいよね?」
私たちが夜景スポットで見た人々や、彼女がトイレで体験した出来事って一体何だったのでしょうか?
全部が私たちの勘違いだったとはとても思えず、やっぱりあの場所には何か異質な空気が立ち込めているのだろうと思っています。
みなさんも夜景を見に行く時は、事前にその場所について確認してから訪れることをお勧めします。
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