【怖い話|実話】短編「バリ島の幽霊」心霊怪談(海外・インドネシア)

投稿者:Rahasia さん(60代/女性/主婦)
体験場所:海外(インドネシア バリ島 レギャン)

サーフィンで初めて訪れて以来バリ島に魅せられた私は、バリ島で結婚し、現在もバリ島で生活をしています。

そんな私が旅人としてバリ島を訪れるようになり始めた30年ちょっと前の、怖い体験談をお話しします。

インドネシア バリ島
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当時OLだった私はバリ島の魅力にはまって以来、年に2~3度は島を訪れていました。

その時は、私を含めた女友達3人で、ウキウキ気分でバリ島に遊びに来ていました。
他の2人を仮にA子とB子とします。

その頃、まだまだのどかな雰囲気だったバリ島には、それこそ一般的な流しのタクシーなどもなく、昼間はレンタル自転車、夜は歩きか『ベモ』と呼ばれる乗り合いバスのようなものを移動手段として利用していました。

バリ島に来れば、朝は薄いカチカチに焼かれたトーストと、沈殿しないと飲めないバリコーヒーで朝食を摂り、その後は水着に着替えてビーチへ直行。

ランチにはビーチで安いローカルご飯を食べ、夜は近所のワルンと呼ばれる食堂でディナー、夜10時を過ぎる頃には繰り出せディスコが定番でした。

その日も当然のことながら、お気に入りの食堂で夕飯を済ませ、一番賑わっているクタエリアまで歩くこと15分。

まだ時間が早かったので、行きつけのバーでビールを飲みながら、人が大勢集まる時間を待ってから、当時人気のディスコに行きました。

このディスコは1階にダンスフロアがあり、2階には1階を見下ろせるちょっとしたラウンジ席がありました。夜も更けてくる頃には、そこにローカルの友達が集まって一緒にビールを飲みながら楽しく盛り上がっていました。

この日も、日本人に限らず外国人も含めて大勢の客がいました。
中でも毎晩出逢う日本人の男の子グループと一緒にわいわいと盛り上がっている間に、気が付くと既にシンデレラタイムの24時を回っていて、それに一緒に来ていたA子の姿が見えなくなっていました。

私もさすがに眠くなったので、仲良くなった男の子と一緒に私が泊まるホテルに帰って来ました。

因みにホテルでの部屋割りは、かなり大きめなソファ付きのツインルームに私とA子の二人。B子は隣室のシングルルームという形になっていました。

そのツインルームの部屋に戻ってもA子の姿はありませんでした。
おそらく他の男の子とどこかへ行ったのだろうと思いました。

私と一緒に帰ってきた男の子は泥酔してしまい、しぶしぶ私の部屋に泊まることになってしまいました。
さすがに私もビールをかなり飲んでいたので、A子の帰りも待たずにベッドに倒れ込みました。

どれだけ寝ていたのか、時間も定かではありません。
私は妙な気配にパッと目が覚めました。

すると、部屋のドアのところに黒い人影がぼんやりと見えたんです。

ドア前の黒い人影
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きっとA子が帰って来たんだと思って、「お帰り~」と声をかけました。

しかし、返事は返ってきません。

A子も酔っているのだろうと思い、私は気にすることなくまた眠りに就きました。

その後、私は再び何かの気配を感じ目が覚めました。

目を開くと私の上に馬乗りになった大きな人影があります。

馬乗りになった人影
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「ちょっと!だ…!?」

と声を上げる間もなく、その人影は私の上に覆いかぶさるように迫ってきました。

あまりの恐怖に再び目を閉じて、何かの見間違えだと願ってもう一度目を開けると、長い髪を垂らした女が手を伸ばし私の首を絞めようとしています。

何が何だか分からず、隣のベッドに眠る男の子の方に顔を向けると、そっちには大きな剣を振り上げた男が彼の上にまたがっていました。

剣を振り上げる男
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私は声も出ませんでした。
ただただ今目の前に見える恐怖をかき消すように目を閉じたり開けたりしていました。

その間にも、私の上には異様に髪の長い、顔すら分からない女が迫っています。
その手がいよいよ私の首に掛かろうとした瞬間、私はもうなりふり構わず必死でもがき、ベッドから起き上がることが出来たんです。

その瞬間、男女の黒い影が消えました。

慌てて電気を付け周囲を確認しました。
男の子は変わらず泥のように眠っています。

私は心臓がバクバクと波打ったまま、ただただ呆然として、何かがさっきまでいた虚空を見つめていました。

しばらくして帰って来たA子は、あまりにも怯えている私の姿を見て、

「あんたの方が怖かった」

と、後になって言っていました。

酔い潰れていた男の子は全く何も気が付かなかったそうです。

あまりの緊張のせいで、あれがどのくらいの時間の出来事だったのかも定かではありません。短い間だったのかもしれませんが、あの時の張り詰めた空気はとても長い時間だったように感じます。

あの人智が及ばない何かが、ゆっくりと迫りくる恐怖は、今でも忘れられないトラウマです。

翌朝、ホテルのスタッフに昨夜の一件を話したら、

「あぁ、見ちゃった?」

と平然と言われ私は驚きました。
どうやらこのホテルでは珍しい現象ではない様子でした。

スタッフにあれは何かと突き詰めたところ、以前あの部屋で浮気現場に乗り込んだ旦那が、相手の男を刺し殺し、自分の女房も首を絞めて殺したという事件があったそうです。

そんな惨劇があった部屋に普通に客を宿泊させるなよ、と思いつつ、部屋を変えてもらうように交渉。
交換は当然のこと、部屋のグレードもアップして貰うことが出来ました。

もちろん今の私なら当然ホテル自体を変えると思いますが、やっぱり当時は私も若かったのかもしれませんね。

現在ではそのホテルは解体されて存在しません。
ですが、その跡地には、また新しいホテルが建てられています。

私はちょっと、近づきたくないです。

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