【怖い話|実話】短編「亡霊隊員」心霊怪談(大分県)

【怖い話|実話】短編「亡霊隊員」心霊怪談(大分県)
投稿者:gekco さん(37歳/男性/会社員)
体験場所:大分県〇〇市〇〇演習場

私が会社員になる前、陸上自衛隊にいた頃の話です。

その日は夜間演習で大分県にある某演習場にて野営地周囲の警戒任務に就いていました。

2人1組で行動し、定点に配置された監視ポイントの間を歩いてパトロールするという内容の演習でした。

夜間は目的地である監視ポイントが視認しにくく、警戒中という訓練内容であるため大声も出せません。

そのため、目的の監視ポイント付近まで来たら、駐在している監視隊員に無線連絡を入れ、ライトで合図を送り合った後に監視ポイントに赴くというルールでした。

私はこのパトロール任務に先輩と一緒にあたっていました。

その日は新月で、隣を一緒に歩く先輩の顔すら分からないほど暗い夜でした。

行路はこれもでも何度か歩いたことがあるルートでしたが、その夜はよほど暗かったこともあり、予定時間よりも行動が送れてしまった上に、気付くと私たちは少し道を外れていることを知ったのです。

「ルートを確認して来る」

そう言って、先輩はGPSを握り締め、道の先の暗がりへと一人消えて行きました。

直ぐに戻ってきた先輩は「かなり道を逸れているようだから戻ろう」と言うので、私も先輩の後に続いて歩きました。

しばらく行くと先輩から、

「この辺りが連絡地点になるから監視ポイントに無線を入れろ。ここからならライトも視認出来る。」

そう指示され、私は直ぐに言われた通り、

「現在地〇〇。ライト確認せよ、送れ。」

そう無線を入れ、ライトを点灯しました。

すると、監視ポイントのライトが点灯した事は確認できたのですが、どういうわけか無線が返ってきません。

「無線の調子が悪いんだろう。しょうがないな」

先輩はそう言って笑っているし、私もそうだろうと思い、そのまま監視ポイントへと向かいました。

すると、監視ポイントに到達した直後のことでした。

そこにいた監視隊員が、驚いた顔で私に銃を向け「誰か!?」と怒鳴るように聞いてきたのです。

監視中に正体不明の相手と遭遇した際の自衛隊の対応ルールです。

先程お互いに無線とライトで確認済みのはずだったので、私は監視隊員の反応に驚きながらも自分の所属と名前を伝えると、監視隊員は更にこう言って怒り出したのです。

「既定の時間より遅れている上に、無線も寄越さずに到達するとはどういうことか!」

私は戸惑いました。

連絡地点から無線は発信しましたし、相手もそれを受けたからこそライトを点灯したはずです。

しかし、そう伝えると監視隊員は「ライトなど点けていない!」と言うではありませんか。

どうもおかしい、話が噛み合わないと思い、私は傍らにいる先輩を振り返って「連絡しましたよね」と、声を掛けました。

そこに先輩が、いないのです。

「あれ?先輩?」

と言って辺りを見回した途端、

「そもそも2人1組が鉄則なのに、どうして勝手に単独行動で来たのか!」

と、監視隊員に再び怒鳴られました。

「いや、ここまで先輩と歩いてき…」

と言いかけた時、暗がりから先輩が現れました。

「お前、ルート確認してくるから待ってろと言ったのに、どうして勝手に行動した!」

そう言って、先輩も怒っているのです。

私はわけが分からないまま、とにかく先輩と監視隊員に事情を説明していると、監視隊員の無線が鳴りました。

すると、無線機から聞こえてきた声は、

「ライト確認、これより向かう」

そう合図を伝える『先輩』の声でした。

あまりの恐怖に私たちは三人とも声が出ませんでした。

結局その後、無線機の声の主が現れることはなかったのですが、その日は誰も仮眠をとる事が出来ないまま、まんじりともしない時間を過ごしました。

これは後から他の隊員から聞いた話ですが、昔、ちょうど私たちがルートを間違えた辺りの地点で、足を踏み外して滑落死した隊員がいたそうです。

その事故と私たちの体験に、何かの関係があるのかは不明ですが。

コメント

タイトルとURLをコピーしました