【怖い話|実話】短編「不動産屋の悩み」心霊怪談(神奈川県)

神奈川県:不動産屋の悩み
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投稿者:komaki さん(40代/女性/主婦)
体験場所:神奈川県茅ケ崎市の住宅街

私が不動産屋さんのバイトをしていた時の話です。

私は不動産会社から依頼を受け、入居者が転居後のアパートやマンションの室内写真や外観写真を撮影するアルバイトをしていました。

撮った写真は不動産サイトに掲載され、それを参考にして次の入居者が決まるため、いかに綺麗に撮るかというセンスも問われ、時給もそれなりに良いものでした。

ある時、バイト先から神奈川県茅ケ崎市にある一戸建て物件を撮影して来るように依頼を受けました。
鍵はその物件の近所にある不動産屋さんに寄って借りるように言われ、私はすぐにカメラを持って現地に向かいました。

到着して言われた通り現地の不動産屋さんに寄り、鍵を貸して頂けるようにお願いしました。
すると、店長の高橋さん(仮名)というぽっちゃりした体型の男性がこう言うのです。

「あれ?1人で来たの?しょうがないなぁ、僕も一緒に付いて行くよ」

それは、この仕事をしてこれまで言われた事のない意外な言葉でした。

「いえ、写真を撮るだけなので1人で大丈夫ですよ。」

と、私は不思議に思いながらもそう伝えましたが、

「いや、ちょうど時間あるから一緒に行くよ」

と、なぜか高橋さんは私が1人で行くことを拒むような雰囲気でした。

仕方なく私は高橋さんと一緒に車に乗り込み、5分ほど車を走らせその一戸建てに到着しました。

そこは閑静な住宅地に立つ一軒家でした。
聞くと、築5年だということで、その外観もとても綺麗なものでした。

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まずは外観写真を数枚撮った後、私はそのまま家の中の撮影に向かいました。

ところが、玄関から中に入ったところで私は驚きました。

家の中に広がっていたのは、綺麗な外観とは全く別の異様な光景だったのです。

まるで怒りに任せて破られたようなビリビリの壁紙、キッチンのシンクには割れたカップやお皿が放置され、部屋の奥には仏壇がそのまま置かれていました。

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あまりに異様な光景に、私はしばらく言葉が出ませんでした。

「高橋さん…これは?」

気もそぞろに高橋さんにそう聞くと、

「かなり異様な光景で気持ち悪いでしょ?だからあまり1人で入って欲しくなくてさ…」

部屋を見回しながら高橋さんは引き攣った笑顔でそう言いました。

「はあ。でも仏壇付きの家なんて売れませんよ。もうちょっと片づけたり、リフォームしないと…」

そう言うと高橋さんはコチラを振り返って、

「それがさ、家主がとにかく3カ月以内には売りたいらしくてさ、半額でも良いって言うんだよ。リーフォムも好きにやってくれってさ」

と、困り顔で言うんです。

どういう経緯があったのかは知りませんが、とりあえず私は自分の仕事をこなそうと、写真が撮れそうな所を探しました。

窓から見える海と綺麗なままのバスルームを写真に収め、寝室に向かおうと2階に上った時でした。

急に空気が重くなり、家の中が異常に暗くなったのを感じました。

(うわっ、なんか…変…ここ…)

2階から明らかに異様な雰囲気を感じ取り、私は精気を吸い取られるような倦怠感を覚えました。

目的の寝室は、2階の一番奥にある和室です。

私はとにかく一刻も早く2階の写真を撮って仕事を終わらせようと、奥の寝室の襖を思い切り開けました。

その瞬間、空間が歪んだような気がして目が眩んだんです。

なぜならその寝室は、これまで見た部屋とは全く違い、なぜか真新しい壁紙に、新品の畳が敷かれた綺麗な部屋だったから…

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「…この部屋だけ、どうしてこんなに綺麗なんですか?」

綺麗であることが、逆にこの家に相応しくないような禍々しさを感じ、私は思わず高橋さんにそう聞きました。

「…とにかく、早めに写真撮っちゃってよ」

高橋さんは私の質問には答えず、そう急かすだけでした。

寝室の写真と、2階の窓から見える景色、他に2階の洋室の写真を撮って、急いで1階に降りようと廊下に出た時、ふと私は見たのです。

高橋さんの後ろに、年配の女性が立っているのを…

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「た、高橋さん、後ろ…」

「え?」

高橋さんが慌てて振り返った時には、女性の姿はもう消えていました。

「・・・・・な、何?」

そう言って、高橋さんは怯えた目で私を見るのですが、

「いや…見間違いでした。」

私はそう答え、とにかく急いでその家を後にしたんです。

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その夜のことです。
私のスマホに非通知の着信がありました。

何だか怪しいなと思いながらも一応出ようとした時、手が滑ってスマホを落としてしまったんです。

着信もそのまま切れてしまい、「もしかしてバイト先だったかな?」とも一瞬思ったのですが、私はそれよりもスマホが割れてしまったショックが大きく、着信の事はあまり深くは考えませんでした。

その翌日、昨日の写真を確認してもらおうと、バイト先の不動産会社に行くと、突然担当からこう言われたんです。

「昨日一緒に写真撮りに行った高橋さんっていただろ?その人、昨日急に事故に遭ったみたいで、入院しちゃったんだよ。」

「え!?大丈夫なんですか?」

「命に別状は無いみたいなんだけどね。ちょっと悪いんだけどさ、病院までお見舞いに行って来てくれない?」

そう言われ、私は急いで病院に向かったんです。

到着して実際に高橋さんに会ってみると、足の骨折で入院したみたいなのですが、案外元気そうで安心しました。

「大丈夫でしたか?昨日何かあったんですか?」

「いや実はさ、昨日の夜、外を歩いてたら非通知の着信があってさ、電話に出たら何かボソボソと女の声がしてね。それが何を言ってるのか全然聞き取れなくて、そっちに気を取られてばかりいたら、気付かないで赤信号の横断歩道を渡っちゃってたみたいで、あっと思った時には避ける間もなくバイクに跳ねられちゃってたんだ。」

と、高橋さんは苦笑いで言いました。

「あれ?そう言えば昨日の夜、私のところにも非通知の着信がありましたよ。けど…出ようとしたらスマホを落としちゃって」

と、私も昨夜の出来事を思い出して話すと、高橋さんは突然曇った顔をしてこう言うんです。

「それ、出なくて正解だったと思うよ。たぶん、あの物件のせいだからさ…」

「え?それってどういう事ですか?」

不思議に思ってそう聞くと、高橋さんはあの一戸建ての物件について詳しく話してくれたんです。

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高橋さんの話によると、あの物件には以前、年配の夫婦が二人で住んでいたそうです。

ですが、その旦那様に別の女性が出来て、そのまま奥様だけを残して家を出て行ってしまったのだそうです。

怒り任せに破られたような壁紙や、割れたままのカップやお皿など、あの家の惨状を見れば独り残された奥様の精神状態は相当なものだったのでしょう。

その後、もともと持病を患っていた奥様は、あの寝室で孤独死してしまったそうなのです。

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発見されるまで随分時間が経ってしまったそうで、奥様の遺体は大分腐敗が進んでいたと言います。

その染みが、旦那様への恨みを残すかのように部屋に色濃く残ってしまったようで、寝室だけが壁も畳も綺麗だったのは、その形跡を消すためだったそうなのです。

「じゃあ、あそこは…事故物件ってことですか?」

あの寝室の異様な空気を思い出しながら、恐る恐る高橋さんにそう聞くと、

「いや、病死扱いだから事故物件にはならないみたい。でも、うちの従業員がさ、あの家に入ると亡くなった奥さんが見えるとか話しててね…。」

私は昨日高橋さんの背後に見た年配女性の姿を思い出してゾクッとしました。

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そのことを知らない高橋さんは更にこう続けます。

「しかも、その奥さんを見てしまうと、その後に変なことが起こるって噂なんだ。」

「じゃあ…もしかしたら、昨日の夜の非通知電話も?」

「…うん。そうかも」

と、高橋さんは少し申し訳なさそうにしながらも、無理に笑顔を取り繕って話してくれました。

それから2カ月後のことです。
あの物件は別の不動産会社に破格の値段で買われて行ったそうです。
その後、中は綺麗にリフォームされ、倍の値段で売りに出されたと聞きました。

それから直ぐに私はバイトを辞めてしまったので、その後のことは詳しく知りません。

ですが、今になってインターネットで少し調べてみたのですが、あの物件、今でもあの場所に建っていて、次の入居者を待っているみたいなんです…

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