【怖い話】心霊実話|長編「非常階段5階」静岡県の恐怖怪談

投稿者:いちご さん(40代/女性/主婦/静岡県在住)
体験場所:静岡県S市 某大学
静岡県:非常階段5階

これは、私が大学時代に体験した話です。

静岡県内の大学に入学した私は、その敷地内にある女子寮に入りました。

そこは50人近い女の子達が共に生活する大きな寮で、寮生同士もとても仲が良く、本当に楽しい日々を過ごしたことを今でも懐かしく思い出します。

そんな寮には毎年恒例となっている行事がありました。
それは、大学敷地内にある幾つかの心霊スポットを歩いて回る『肝試し大会』でした。

肝試しと聞くと『夏』の風物詩と想像しますが、大学の夏休み中は殆どの寮生が田舎に帰省してしまうため、寮では毎年『秋』に肝試しが行われることが恒例となっていました。

広い大学でしたから、敷地内には森や池があり、そんな中を寮の同級生と2人1組になって進み、最後に『第2研究棟』という建物の非常階段を5階まで上り、そこに置いてあるお札を取って寮まで戻ってくるというルールでした。

森では行方不明事件、池には数々の心霊体験談など、各所にそれぞれ曰くがあり、特に最後のチェックポイントである『第2研究棟』では、度々飛び降り自殺が発生していると言われ、大学内でも有名な心霊スポットとされていました。

夜6時に開始する肝試しの前に、そんな話を4年生から聞かされるのも恒例となっており、1年生はスタート前から半泣き状態で出発し、それをニヤニヤしながら先輩が見送るというのが毎年恒例の風景でした。

寮生全員の参加が鉄則だった肝試し大会は、その年の秋も例年通り開催され、1年生だった私は同じ部屋の香織(かおり)とペアになって参加したんです。

例年通り先輩たちから大学敷地内の恐怖話を聞かされ、1年生みんなの顔が青ざめたところで、いよいよ肝試しが始まります。

夜の大学内はやはり薄暗く、小さな懐中電灯の灯りだけが頼りです。
そんな中を、先輩たちの期待通り、私たちもビクビクしながら出発したんです。

最初のチェックポイントだった森は、本当に真っ暗な山道だったのですが、随所で男子寮の男の子たちがオバケ役で登場し、その本格的な肝試しムードが逆に私と香織にとって、怖がると言うより楽しめるものになっていました。

森を抜けると心霊体験談が多発する池があり、そこでも先輩たちが水面を叩いたりして、気味の悪い雰囲気を演出してくれていて、その程よい恐怖を私たちは楽しんでいたんです。

そこまで30分くらいだったでしょうか。
終始、緊張と楽しさで高揚していた私達は、さすがに少し疲れてしまい、最後のチェックポイントである第二研究棟は早めに切り上げようと決めたんです。

そして遂に飛び降り自殺が度々発生すると噂される第二研究棟に到着し、私たちは足早に非常階段を上り始めたのですが、その途中から、香織の様子に異変が見え始めたんです。

全く会話をしなくなり、その息遣いも階段のせいとは思えない程に早く浅いものにいになっています。

「香織、疲れた?私1人でお札取ってこようか?」

気を使ってそう声を掛けると、

「絶対に離れちゃダメ。」

真剣な声色でそう言うんです。

妙な緊張感を抱えたまま、私と香織は階段を足早に上がり続け、ようやく5階まで来た時です。

「絶対手すりに触らないで!とにかく早く下に行くよ。離れないで!」

突然香織が声を荒げてそう言ったのです。

私は香織の言葉に驚くと同時に引ったくるようにお札を取ると、香織と一緒に非常階段を駆け下りて、ゴールの女子寮まで走りました。

その間、香織は私の手を離しませんでした。

転がり込むように寮に戻ると、そのままの勢いで香織が4年生の先輩に向かってこう言うんです。

「あの研究棟、自殺があったんですよね?あそこかなりヤバいですよ!本当に危なかったんですよ!」

怒りを露にしてそう訴える香織の表情に、先輩も目を見開いて驚いています。

私も唖然としてその光景を眺めていましたが、ハッと我に返り、落ち着くように香織をなだめた後で、何があったのかワケを聞いたのです。

すると香織は一呼吸してから、こんなことを話し始めました。

第二研究棟が目前に迫った辺りから、研究棟の下に1人の女性が立っているのが見えたのだそうです。ちなみに私には女性の姿は全く見えていませんでした。

最初は道案内に先輩が立ってくれているのだと思ったそうですが、ところが徐々に近づくに連れ、その女性に違和感を感じ始めたのだと言います。

女性の服装は時代遅れのワンピースで髪はボサボサ。
顔や手の色も青白く、寮にはそんな先輩はいません。
香織にはそれが、どうしても生きている人間には見えなかったそうです。

ただ、とても優しい笑顔でこちらを見つめ続ける女性の目に、香織はブルッと寒気がし、直感的に「この人は危ない」と感じたと言います。

香織はそれから終始無言で、緊張しながら女性の前を通り過ぎ、第二研究棟の非常階段を上り始めました。

出来るだけ早くそこを去りたくて、震える足を無理にでも前に出しながら、ようやく4階を過ぎた辺りでした。

どうしても女性のことが気になった香織は、手すりから顔を出し、下を覗き込んだそうです。

すると、その女性は優しい笑顔のままこちらを見上げ、『おいでおいで』と手招きしていたそうです。

その瞬間、ざわッと首元まで粟粒だった香織は、

「絶対手すりに触らないで!とにかく早く下に行くよ。離れないで!」

と、私にも忠告するために声を荒げて叫んだのだと言います。

「絶対に手すりに触らないで」とは、「絶対に下を覗かないで」と言う意味だったのでしょう。

そこにいた寮生は皆、終始青い顔をして香織の話に耳を傾けていました。

4年生の話によると、やはり第二研究棟の前に道案内役は用意していおらず、それにその日、寮生の中にワンピースの女性は一人もいませんでした。

それどころか、非常階段で5階まで上るのは大変だろうと考えた4年生たちは、お札は非常階段の2階に置いたと言います。

そしたら私が5階で手にしたお札は一体何だったのか…

寮内は一気に大騒ぎになり、その日の肝試しも当然そこで中止されました。

一体あの体験はなんだったのか、どうしても気になった私達は、その後、寮にいる大学院生の先輩に、第2研究棟に関する話を詳しく聞いてみました。

すると、第2研究棟の非常階段からの飛び降り自殺は、事実、昔から度々あったそうで、その原因について大学内では昔からこんな話があったそうです。

「非常階段を最上階の5階まで行き、そこから下を見下ろすと、綺麗な花畑が見え、その中心に手招きをする人がいる。すると、そこが5階だという事も忘れて思わずそちらに飛び降りてしまう」

そんなことがずっと以前から、この大学内で語り継がれているのだと言っていました。

その一件以来、寮で毎年恒例とされていた『肝試し大会』は無くなりました。

ただ、第2研究棟は今でもあり、曰く付きの非常階段もそこに存在しています。

香織が見た女性は、そこで亡くなった女性だったのでしょうか…

それは結局分からないままでしたが、もしもあの時、私達が非常階段の5階から下を覗き込んでいたら…

それを思うと、今でも背筋が凍り付きます。

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