【怖い話|実話】短編「拾ってはいけない物」心霊怪談(佐賀県)

投稿者:たっどぽーる さん(20代/女性/農業)
体験場所:佐賀県M郡 某お寺

私の住む佐賀県のとある町には、美しいツツジや紅葉で有名なお寺があるのですが…

11月も下旬のことでした。
当時、大学生で暇を持て余していた私は、この田舎のお寺に一人で紅葉狩りに出掛けました。

紅葉
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少し離れた有料駐車場に車を停め、お寺までのだらだらと長い坂道を登りました。
道の途中では、地元の人たちが家の前に簡単な台を設置して、お饅頭や家で採れた野菜、手作りの木工細工などを売っていました。

更に10分ほど行くと、目の前にはお寺へと続く長い長い階段が現われます。
階段の両端には下から上まで隙間なくツツジが植えられ、開花時期にはたいそう見事な景色だろうことが想像されました。

右手には迂回路の案内もありましたが、行き道くらいは正面から登っていこうと目の前の長く急な階段を進むことにしました。

手摺りにつかまって一段一段登っていたお爺さんを追い抜き、

「若いっていいねぇ~」

なんて言ってもらいながら(日頃の運動不足で本当はかなり辛かったのですが)、階段の中ほどまで登った頃でしょうか、ふと少し上の段にハンカチが落ちていることに気が付きました。

レースがついた薄水色のハンカチで、日傘のマダムが持っていそうなお上品なデザインです。

上品なハンカチ
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ここに置きっぱなしにしていると踏まれて汚れてしまうだろうし、社務所に届けてあげようと思い、私はそのハンカチを上着のポケットに入れ、そのまま上を目指しました。

そこから20段ばかり登った時でした。
風もなく昼過ぎの暖かい太陽に照らされているにも関わらず、私は急に体が寒くなったように感じました…

「山の上の方まで来たから気温が下がったのかな?」

その時はまだそんな風に呑気に考えていたのですが…

更に進んでいくうち寒気はどんどんひどくなり、ガタガタと手先が震え始めました。
それと同時に胸が締め付けられて苦しいような、一生懸命息をしているのに空気が肺に入ってこないような状態に陥り、小さい頃の喘息発作の辛い思い出が蘇って私はパニックを起こしました。

とりあえず、階段から転げ落ちないよう石段に手を突いてうずくまりましたが、症状は悪化する一方で、歯と歯が触れるカチカチという音が耳の中で妙に大きく聞こえました。

酸欠のせいか、視界が霞んで視野の端からぼんやりと暗くなり出した時、

「はは、追いつきましたよ」

と、後ろから朗らかな声がしました。

その瞬間、嘘のように呼吸が楽になり、顔を上げると、そこでは登り口で追い越したあのお爺さんが息を切らしながらニコニコと笑っていました。

登り口で追い越したお爺さん
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いつの間にかさっきまで感じていた寒気は消えていました。

(さっきのは一体何だったのだろう…)

まだ色づき始めたばかりの紅葉を通り過ぎ、拝殿へ向かいながら私は自分の体を確かめるように大きく伸びをしました。

ようやく拝殿に到着し、賽銭箱の前に立ち、ポケットから財布を出した時、先ほど拾ったハンカチが一緒に出てきてポトリと地面に落ちました。

屈んでそれを拾い上げると、階段で最初に拾った時には気が付きせんでしたが、中に何か包まれているような感じがあります。

何だろうとハンカチを開きかけると、風に吹かれてパラパラと白い小さなものが零れ落ちました。

参道の砂の上に落ちたそれをよく見てみると、どうやら爪切りで切った人間のツメのようでした。

爪
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「うわっ気持ち悪い!?」

と立ち上がり、手に取ったハンカチに目を移すと、その上には、生乾きの臍の緒のようなものが包まれてありました…

臍の緒のようなもの
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ぞくり、と背中に嫌な汗が流れました。

とにかくこのハンカチを今すぐ手放したくて、私は臍の緒を隠すように雑に折り畳み、賽銭箱の縁に置いて逃げるようにその場を後にしました。

ハンカチが落ちていたあの階段を再び通りたくなかったので、帰りは迂回路の坂道を下ることにしました。
迂回路といいながらも、こちらの道も傾斜のきつい長い坂道で、私は時間をかけながら休み休み下っていきました。

ようやく坂の終わりに辿り着き、(階段の方が距離がなくて楽だったかも)と、来た道を振り返ると、15メートルほど離れた民家の陰に、一人の女性がいることに気が付きました。

民家の蔭の女性
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かなり細身で、足首近くまである長いスカートをはき、若いような、若くないような容貌の人でしたが、離れていても分かるほどギョロリとした大きな目が、異様な雰囲気を放ち私に向けられていました…

ギョロリとした目
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「あのハンカチの持ち主だ」

私は直感的にそう思いました。

(誰かに呪いでもかけようとしているのだろうか…)

何にせよ絶対に関わりたくないと思い、私は小走りで車に向かいました。

女性はその場から微動だにせず、ただ異様な目から漏れ出る粘っこい視線だけが私の背中に向けられていました…

無事帰宅したその日の夜の事。
洗濯するために今日着ていた上着のポケットを探ると、2、3枚の爪が出てきました…

おそらくポケットの中でハンカチから零れ落ちていたのでしょう。

その時ふと思ったのです。

(もしかして…呪いの相手って…)

私には何も心当たりがありません…
けれど、その爪の切れ端を見た途端、寒気にも似た胸騒ぎを感じました…

私はすぐにそれを捨てようと思いましたが、家のごみ箱に捨てるのも気持ちが悪く、家の近くを流れている川まで行って投げ捨てました。

以上がその日に体験したことです。

一体あの女性は誰だったのでしょうか…
なぜ私のことをジッと見ていたのでしょう…

それにあのハンカチに包まれた爪の切れ端と湿った臍の緒…
もしかして、それが呪物なのだとしたら…

それを拾ってしまった私はどうなってしまうのでしょうか…?

現在のところまで特におかしな事は起きていません。
ですが、あの女性のギョロリとした異様な目を思い出す度、今も妙な寒気を覚えます…

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