体験場所:島根県の実家
これは、私が島根県の実家で実際に体験した話です。
私は幽霊を見たこともありませんでしたし、その手の話を信じるタイプでもありません。もちろん、特に霊感もありませんでした。
そんな私が、高校2年生の頃、突然毎晩のように金縛りに遭うようになったのです。
金縛りに遭う時は、決まって自分の部屋のベッドに入り、身体も温まってきてそろそろ寝れそうだなあ…というタイミングでした。
キーンと高い音の耳鳴りが頭の中に響いてきて、段々と身体が痺れ全く動かなくなるのです。
指を動かそうにも動かない。目を開けようにも開かない。右を向こうにも頭がガチガチに固まっている。まるで何かで固定されているようでした。
するとその後、「ハッ!」と急に動けるようになる時がきます。
時計を見ると、それは決まって午前2時でした。
初めて金縛りに遭った時は、とても不思議な感覚で、何だか特別な体験をしたようで少し嬉しかったような気持ちもありました。
しかし1ヶ月もの間、毎晩金縛りが続くので、流石に嬉しいなどという気持ちもなくなり、不眠と気味の悪さで精神的に参ってきてしまいました。
そこで母に相談すると、「疲れが溜まってるんじゃない?疲れていると金縛りに遭うって聞いたことがあるわよ。」と言われました。
当時、運動部に所属していた私は、放課後は毎日部活動に励んでいたので、自分でも疲れが溜まっているのは分かっていました。
(なんだ、疲れが溜まっているだけか…。)と納得して、多少安心もしたのですが、それからも半月程、毎晩金縛りは続きました。
人間は不思議なもので、こうも毎晩金縛りに遭うと『慣れ』てくるんですね。
その頃の私は金縛りに遭う前の前兆が分かるようになり、身体が痺れてくる感覚がくると「ああ、またかあ。」と思いながら、その流れに身を任せるようになっていました。
もはや金縛りに遭っても驚くことも怖がることもなかったです。
ただ、金縛りが解けて身体が動くようになった後、時計を見るといつも午前2時だったことは不思議に思っていました。
そんなある日のことです。
その夜は次の日が休みだったこともあり、母と私と妹の3人で、母の部屋で夜遅くまでDVD鑑賞をしていました。感動系の映画で、3人とも涙ぐんでいた記憶があります。
そして感動の余韻に浸ったまま、その夜は1階の母の寝室でそのまま3人で寝ることにしました。
布団に入ったのは午前1時頃だったと思います。
でも、私は何故だか寝付くことができず、目を瞑ったまま何とか寝ようとしていました。
横からは母の大きなイビキが聞こえてきます。
(…うるさいなぁ)と思いつつ、ようやく身体も温まってきてウトウトし始めた時でした。
また、キーンと高い耳鳴りが頭に響き始めたのです。
2階の自室ではなく、1階の母の寝室で金縛りに遭うのは初めてのことだったので少し戸惑いましたが、1ヶ月半も金縛りに遭っている私にはやっぱり怖いという感覚はありませんでした。
(段々身体が痺れてきて、身体が動かなくなってきて…。そうこれ…この感覚。)
少し我慢すれば治まるだろうと普段通りにしていたのですが、その日は何かが違いました。
お腹の上が、重いのです…
身体が動かないのはいつも通りですが、重さを感じるのは初めてのことでした。
その時、ふと気付いたのですが、さっきまでうるさかった母のイビキが全く聞こえません。
それに、今日は何だか、『目が開けられそう』な感覚があるのです。
他の部分は全く動かせそうな感じはしないのですが、何故か『目』だけは開けられる、そんな気がしました。
(でも、目を開けて何かいたらどうしよう…)と、怖い気持ちもあったのですが、そうしてもお腹の上の重さが気になって、私はゆっくりと目を開きました。
目の前にはぼんやりと白い天井が見えます。
視線を徐々に下に移し、『重さ』を感じるそこを見ると、私のお腹の上には正座をしたお婆さんが乗っていました。
白い髪を下の方でお団子に結っていました。
一見、全体的にぼやっとした白い影の塊なのですが、私にはハッキリとそれがお婆さんに見えました。
初めて見た『幽霊』にゾッとして、横にいる母を起こそうと試みましたが、横も向けず、叫ぼうにも声が全く出ません。
それに横で寝ているはずの母や妹の寝息さえも聞こえなくなっています。
為す術なく、私はどうなってしまうのだろうかと恐怖で怯えていると、それまでずっと私のお腹の上に座っていたお婆さんが、そのままの態勢で私の頭の上を通過するように越えて行き、もの凄い速さで飛んで行ったのです。
その瞬間、ハッ!と身体が動くようになり、母の大きなイビキも再び聞こえてきました。
時計を見ると、やはり午前2時でした…
疲れのせいなどではない、明らかに何か意味のある金縛りに私は改めて恐怖を感じ、次の日、母と父に昨晩あった出来事を話しました。
すると、私の話を難しい顔して黙って聞いていた父が、重そうな口をゆっくりと開け、こんな話を始めたんです。
「怖がってもいけないからと思って、黙っていたのだけど、実はこの家は霊道にかかっているそうなんだ。お父さんもそんなこと、信じてなかったんだけどなぁ…」
そう言って、誰から聞いたのかは分からないように、父が口ごもりながら話すには、家の裏山に神社があるのですが、ちょうど我が家はその神社へ向かう霊の通り道になっているようなのです。
また、後で調べて分かった事なのですが、午前2時は丑の刻(午前1時~午前3時)と呼ばれる時間帯で、現世が常世へと繋がる時刻だということを私は知りました。
あの日、私が見たお婆さんは、神社へ向かう途中の『何か』だったのでしょうか?
でも、何故かその日を境に、金縛りに遭うことはすっかりなくなりました。
あのお婆さんが何処かに飛んで行ったからだと思っていましたが、我家が霊道である以上、またあの世の何かが私の上を通って神社に向かうのかと思うと、あの頃は寝付けない日もしばしばありました。
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