【怖い話|実話】短編「水溜り」心霊怪談(茨城県)

【怖い話|実話】短編「水溜り」心霊怪談(茨城県)
投稿者:うさまる さん(40代/女性/主婦)
体験場所:茨城県 某所

これは知り合いのAさんから聞いた話。

Aさんは外国車がとても好きで、BMWやベンツなどといった車をよく買い換えていた。

ある時、Aさんは知り合いの社長さんから言われたそうだ。

「Aさん、新車ばかり買っていたら勿体ないよ。良い中古車屋さんもたくさんあるから、試しに一度、中古車も乗ってみたら?」

その社長さんの言う通り、確かにAさんは今まで新車ばかりを購入していた。

しかも、初回の車検を通す事ないまま3年待たずに売ってしまい、また新車に買い替えてしまう。

いくらお金に余裕があるからといっても、確かにこれでは勿体ない。

そんな訳だから、社長さんが言うならとAさんは試しに中古車も検討してみる事にした。

とりあえずネットで中古車を探し始めると、沢山の外国車がweb上に掲載されていた。

「2017年型がもうこんなに値落ちしているのか!」

外国車特有の激しい価格変動に少し衝撃を受けながらも、見ているうちに何だかAさんは中古車探しが楽しくなっていた。

しばらくするとAさんの目に一台の車が留まった。

ベンツEクラス、2011年型。

少々古いが驚くほど安い上、しかもフロント部分が後期型にカスタマイズされている。

Aさんはこのベンツが何故かとても気になったのだと言う。

もし乗ってみて気に入らなければすぐに売ればいい。

決断の早いAさんは早速その場で販売店に電話を掛けた。

販売店の人の話を聞くと、やはりこのベンツはお買い得との事。

販売店の社長さんの人柄も良く、Aさんは即決でこのベンツの購入を決めた。

数日後、Aさんの元にベンツが届いた。

システムは古いものの、年式の割にとてもキレイな状態。

早速乗ってみると、走り心地も上々。

Aさんはすぐにそのベンツの事が気に入ったのだそうだ。

翌日、仕事が休みだったAさんは、その日は朝からベンツでドライブしようとワクワクしながら自宅の駐車場に向かった。

「…ん?なんだ、これは?」

駐車場に停めてあるベンツを改めて繁々と見ていたAさんは驚いたと言う。

それというのも、しゃがまないと気付かないのだが、車の真下のコンクリート部分に、大体直径30センチほどの液溜りが出来ていたのだ。

昨日は快晴だったし、もちろん雨など降っていない。

だとしたら考えられる原因はオイル漏れだった。

「3日ほど前に車屋の方で車検を通してくれてるはずなのに、なんて事だ……」

Aさんはガックリと膝を突き、車の下に広がるオイル溜りを改めて確認した。

すると、どうやら液溜りの正体はただの水のようだった。

「え~?なんだ、そうか。良かった。焦っちゃったよ!」

そう思いホッと胸をなで下ろすAさんだったが、実はこれが奇妙な出来事の始りだったと言う。

二日後、乾いたはずのコンクリートが再び濡れていた。

「またか。一体なんなのだろう?やはり雨なんか降っていないのに…まさか、誰かのいたずらか?」

一時はそう考えたが、それにしてもわざわざこんな手の届きにくい車の真下にだけ水を撒くとも考えにくい。

仕方なくAさんは、一応念のために購入したお店に相談し、再度点検をしてもらう事にした。

店の担当も「こんなに早く?」と驚いていたが、親身に対応してくれた。

結果は異常なし。
不具合等は一切見つからなかったそうだ。

別にその店を信用しない訳ではないが、心配症のAさんは一応という事で別の店にも点検を依頼してみた。

予想通り、そちらでも結果は異状なし。

それを聞いてようやく安心できたAさんは、きっと謎の水溜りも深く考える事ではなく、たまたま何か別の原因があったのだろうと思うようにしたそうだ。

けれども、車の下のコンクリートが乾く度、翌日には再び水溜りが出来ている、そんな日が何日も続くのだそうだ。

流石にAさんもいよいよ気味が悪くなり、ある日の夜、自分の目で原因を確かめるためにベンツを見張る事にした。

とは言え、夜通し張り込んで見張るのは流石に大変なので、とりあえずポイントにセンサーライトを設置し、反応があればすぐに駆け付けるという形で様子を窺う事にした。

その夜の21時。
いつでも外に出られる体制をとり、ライトの点灯が最も確認しやすい部屋で待機した。

しかし、すぐにセンサーが反応を示すことはなく、暫くは何もする事の無いまま、なんとなくスマホを眺めている内に電子書籍を読み始めたAさんは、不覚にもウトウトとし始めた。

時刻が23時を回った頃だった。
と、その時、駐車場のセンサーライトが点灯した。

Aさんの目は一瞬で覚め、急いで駐車場に向かった。

すぐさま車に駆け付け車体の下をライトで照らす。
すると、ライトの光を飲み込むような黒く濡れたコンクリートが確認された。

ひと気のない深夜の駐車場。
もちろん足音も聞こえなかった。

「どうしたものか…」

呆然として立ち尽くすAさん。

2、3秒程そうしていると、センサーライトが消えた。

その時、Aさんは気が付いたと言う。

自分のベンツの後部座席に、誰かが座っている事に。

明らかにそれが人ではないことは一目で分かったとAさんは言う。

何故なら、その人物の顔は真っ黒く、その不鮮明な輪郭の中は、まるでブラックホールの様にグルグルと渦を巻いて顔の中心に向かって引きずり込まれていくのだと言う。

次にAさんが気が付いた時には、辺りは既に明るくなっていた。

どうやらいつの間にか気を失っていたそうだ。

その後、Aさんはそのベンツを手放した。

購入先の中古車屋に出元を聞くと、このベンツは3ヶ月程前にオークションで落札した物なのだそう。

修復歴は無かったと言うが、Aさんはやはりこの車に何か問題があったと、今もそう疑っているらしい。

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