【怖い話|実話】短編「夢の森」心霊怪談(茨城県)

【怖い話|実話】短編「夢の森」心霊怪談(茨城県)
投稿者:雪氷 さん(20代/女性/イラストレーター)
体験場所:茨城県〇〇町にある橋の先の森

私がまだ小学生の頃の不思議な思い出です。

私は昔から同じような夢を見ます。

物心が着く前から見ていたせいか、それを不思議だとは思ったことがありません。

母親も私と同じような夢をよく見ると聞いていたので、高校の同級生に指摘されるまで、それがおかしな事だとは思っていませんでした。

その夢とは、一切の、草木の揺れる音も聞こえない森の中で、私がある一定の方向をただただ見つめているという夢です。

その森は見た事も行った事も無い場所なのに、なぜか私は毎回「あ、いつもの森だ。」と不思議がることもなく受け入れているのです。

ですが、なんとなく懐かしい感じを覚えつつも、私が見つめる先へは行ってはいけないのだと脳が警報を鳴らし続けるという夢でした。

ある年のお盆の日、母と二人で母の実家へ車で向かっていました。

ただ、その日はいつもと違う道を走っていました。

冒険好きの母は『なんとなくこっちに行って、どこの道に出るか試してみたい』というタイプなので、私は「最終的に着けばいいよ」と、特に文句を言うこともなく助手席に座っていました。

しかし、しばらくは順調に走っていたのに、山道に入ったとたん母は車を止めて、ジッと窓の外を見つめていました。

不思議に思って母の視線を追ってみると、目の前には夢で見た森が広がっていました。

すぐに夢の時と同じ感覚が体の中から湧いてきました。

「そっくり…」

「そっくりだね…」

「〇〇(私の名前)も同じ森?」

「うん。」

「…そっか」

少しだけ言葉を交わして車を降り、しばらく私たちは真っ直ぐ森を見ていました。

すると私の中に『立つべき場所はここでは無い』という思いが湧き上がり、それは母も同じだったようで、私たちは森の中へと進みました。

しばらく歩いて行くと、ある場所で母も私もピタリと足を止め、同じ方向を見つめていました。

「これ以上はいけない…」

『進んではいけない』ではなく『進むことが出来ない』。

道は先にもあるのに、私も母もそこから一歩も進むことが出来ませんでした。

しばらくそこに佇んでいると、体中から汗がジワリと湧いてきて、だんだんと草木の揺れる音も聞こえなくなってきました。

自分の吐く息の音すら遠のいてきた頃、

「戻ろ」

母の言葉にハッとして、それと同時に森の音も戻り、硬直していた体も自由になりました。

それから私たちは車へ戻ろうと歩き出したのですが、なぜか来た時よりも3倍近い時間がかかり、ようやく車に辿り着いた頃には足が悲鳴を上げていました。

車に乗り込みようやくホッと一息ついて、母の実家へ向けて走り出しました。

実家に付くと、到着を待っていた母の両親が、私達を見た瞬間、

「行ってきたのか・・・」

そう静かに呟きました。

なぜ分かったのかは分かりませんが、私達は塩を撒くよう言われ、自分たちの身体に塩を撒きました。

それから帰省の間は何事もなかったように過ごしましたが、自分たちの家に戻ってきてから母が教えてくれました。

「実は、あの森の奥でね、私たちのご先祖さまが亡くなったらしいの。」

母はそう静かに話し始めると、

「自殺とかではないのよ。あの森の奥に家があってね、ご先祖様はそこに住んでいたらしいの。あの森の近くに川があるでしょ?水位が上がると持ち上がる橋が掛かってる。あの川は昔からよく氾濫してね、だからあんな橋が掛けられたんだけどね。ある時の川の氾濫でね、そのご先祖さまが流されてしまったらしいの。」

母は悲しそうにそう話した後、

「私やあなたが、あの森の夢を見ていたのも、もしかしたらご先祖様が私たちに会いたがっていたのかもしれないね。」

母はそう言って、一連の不思議な出来事にも納得したようでした。

確かにその川には水位が上がると持ち上がる橋が架かっています。

川の流れを邪魔しないような仕様なのだそうです。

その後、私はあの森の夢を見ることはなくなったのですが、それから誰かと会話する夢を見るようになりました。

その相手の特徴を話すと、どうやらご先祖様に似ているそうです。

きっとご先祖さまは森の先の川に近づいてはいけないよと警告し、私達のことを守ってくれたんだと、今の私はそう思っています。

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