体験場所:新潟県三条市
それは、当時私は9歳、まだ小学生の頃、98歳の誕生日を迎えた母方のひいおばあちゃんが亡くなってしまった時のお話です。
家族からとても好かれていた愛嬌のある可愛いひいおばあちゃんでした。
バタバタとした雰囲気の中、無事にお通夜を終え、そのまま親戚一同で、式会場で食事をすることになりました。
遺体の入った棺桶は、みんなの視界に入る場所で、沢山の蝋燭に飾られ置かれていました。
悲しみを慰め合うように和気藹々と食事をし、その後それぞれの自宅に帰りました。
私たち家族も自宅に帰ると、黒い服を脱ぎ、いつも通りお風呂に入りパジャマに着替え、家族でお茶を飲みながら、しんみりと今日の話をしていたその時です。
「えっ、、、大丈夫、、?!?、どうしよう、、、大丈夫なの?!?!」
急に母が慌てふためいたかと思うと、涙を流しながら大きな声を出し始めたんです。
父も私も何が起こったのか分からずパニック状態でした。
「どうしたんだ恵子(母)!!」
そう言って父が肩を叩くと、顔面蒼白の母がこう言いました。
「ひいおばあちゃんの声が聞こえるの!!!熱い、痛い!!助けて恵子ちゃん(母)!!って、何度も言ってるの!!どうしよう…怖い!!」
幼かった私は、こんなにも錯乱している母親の姿を目の当たりにし、ただひたすら震えていたと思います。
母の状態は一向に落ち着かず、パニックは10分以上も続き、流石にそれは演技とも思えず、考えあぐねた父が母に言いました。
「大丈夫か?ひいばあちゃんは痛がってるんだな?何が痛いのか分からないけど、式場に確認とって、俺がもう一度親戚たちと一緒に遺体の確認に行ってくるよ…」
そう言って父は、腰の抜けている母と私を置いて、先程まで一緒にいた親戚たちをもう一度迎えに行き、そのまま遺体の置いてある式会場へと車を走らせました。
当時、私は子供ながらに、なぜか分からないけど怯えている母をとにかく落ち着かせなければいけないと思い、震える母の背中をひたすら撫でていました。
それから20分ほど過ぎた頃、母がまた泣きながら叫び始めました。
「ねえ、、まって!!また声が聞こえる…やだ…怖いどうしよう!!!」
錯乱している母と二人きり。頼れる父もおらず、もう私はメンタルが限界でした。
「怖いどうしよう、、、もう大丈夫だよありがとう、ありがとうって何回もひいおばあちゃんがお礼を言ってる、、、うっ」
その母の姿は、本当に誰かの声が聞こえているようにしか見えませんでした。
その直後です。
『プルルルル、、、プルルルル、、、』
携帯電話が鳴りました。
父からでした。
「さっき式場の人に事情を説明して、遺体の確認をさせてもらったんだ。そうしたら、ひいばあちゃん、上にも下にも大きなドライアイスで挟まれていて、もしかしたらこれが痛みの原因かと思って、親戚みんなで全部どかしてみたんだよ。これが良いのか悪いのか分からないけど、どのみち明日は埋葬だから、会場のスタッフにお願いして、棺桶にはドライアイスを入れないようにしてもらったよ。」
すると母が言いました。
「そうなの?!ありがとう、あなたから連絡が来る数秒前に、私、また声が聞こえたのよ、、」
と、母は必死に、ひいおばあちゃんが感謝しているという気持ちを父に説明していました。
これは本当にあった話です。
亡くなった方の魂が、生きている人間にテレパシーを送るなんてことは、にわかには信じられないことですが、あの経験をした私たち家族は、どうしてもこの日の出来事を忘れられません。
私にとっても現実とは思えないような、不思議な思い出です。
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