【怖い話|実話】短編「遠くの足音」心霊怪談(熊本県)

投稿者:ヘモ太郎 さん(38歳/男性/主夫)
体験場所:熊本県K市の某ホテル

私がその体験をしたのは約5年前。
現在住んでいる広島から、九州の熊本・大分を旅行した際のことでした。

当時私は、妻と二人の小さな子供がおりました。
子供たちが4歳と2歳になったので、そろそろ少し遠くても行けるかなと、初めて子供二人を連れて旅行に行ったのです。

家族で九州旅行
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旅行1日目は、大分県別府市で温泉を堪能した後、高級な温泉旅館に泊まり、風呂に入って美味しい海産物に舌鼓し、かなり奮発しました。そのため、2日目は少し予算を抑え、熊本に移動して観光を楽しんだ後は、安いビジネスホテルに泊まる予定でした。

迎えた2日目。熊本に移動し、K市の中心部にある有名なアーケード商店街を楽しみ、その日は予定通り、その商店街の一角にあるビジネスホテルに宿泊することにしました。

商店街の先のホテル
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ホテルが建つのはK市の中心部にある商店街。とはいえ、地元の広島市の繁華街に比べると人通りは少なく、夜になるとホテルの周囲からは騒ぎ声や車の嫌な騒音なども聞こえず、「このホテル、安いけど当たりじゃない?」と、妻と共に満足していました。

部屋にはダブルベッドとテレビが置いてあるだけでしたが、民法放送の他、BSも映り、運よくJリーグ中継も見られ、スポーツ観戦が好きな私にとっては暇を持て余すこともありませんでした。
もともと期待していなかっただけに、とても良いホテルに感じたのです。

家族みんなシャワーだけの入浴を済ませ、旅行中かなり歩き疲れていたこともあり、その日は22時前には家族みんな就寝したと思います。疲れのせいか、かなり深い眠り就いた感覚がありました。

ぐっすり眠る
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ですが、その深夜…

室内が乾燥していたせいか、私は夜中に目が覚めてしまいました。
のどの渇きを潤そうと、枕元に置いたペットボトルの紅茶に手を伸ばしました。

すると、ドアの外、廊下のずっと向こうの方から足音が聞こえてくることに気が付きました。

ドアは決して分厚いとはいえず、床との間には少し隙間があり、そこから廊下の明かりが漏れてくるくらいの粗い造りだったので、(同じフロアの人が廊下を歩く音も聞こえるのか…)と思いました。

ドアの隙間
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ただ、その足音が、フロアの廊下の一番端の奥から、ゆっくりゆっくりとこちらに近づいてくる感じがなんだか不気味で、しかもゆっくりとした歩調なのに、なぜかその足音はハッキリと聞こえてくるのです。
理由もなく若い女性の足音のように感じました。

女性の足音
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段々段々と、足音は確実に私たちの宿泊する部屋に近づいてきます。
私は言い知れぬ不安を抱きながら、とにかく何事もなく足音が部屋の前を通り過ぎてくれることを祈りました。

ですが、ゆっくりと近付いてきたその足音は、私たちの部屋の前でピタッと止まったのが分かりました。

部屋の前で止まる女性
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(あ、これはやばいやつだ!)
そう確信した私は、しばらくドアを凝視していました。

…何分経過したか分かりません。
ですが、足音は全く動く様子もなく、間違いなくまだドアの前にいると思いました。

(どこか行け!)
何度も念じましたが、一向に気配は去りません。
布団にくるまったまま緊張と恐怖に耐え切れず、私はそのまま意識を失うように眠ってしまったのだと思います。

気を失う
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恐怖の余韻が残っていたせいか、再び目が覚めたのは、まだ5時位だったと思います。

「なにも…なかったんだよな…」
ほっと緊張が途切れ、安心してペットボトルに手を伸ばした瞬間、

視界の隅に見えたんです。

部屋の中に女性
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(ドアの内側に足がある…)
細く白い2本の足。女性の細さだと思いました。

「うわっ」
と思い、足の上部まで確認できずに恐怖で目をつぶったその時、

足音がドタドタドタ!
家族が眠るベッドのすぐ傍まで近づいてきました。

怖くて目が開けない
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怖くて目が開けられませんでした。

布団にくるまったまま、しばらく恐怖に晒され続けた後、またしても私はそのまま気を失ってしまったようでした。

次に目が覚めたのは、妻が私に声を掛けてきた時でした。

妻はすでに起きていて、鏡の前で化粧をしていました。

化粧をする妻
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私はすぐにドアの方を確認しました。
足はありません。

恐る恐るドアを開けて、廊下を見回してみましたが、特におかしな点はありません。
部屋に戻り妻に足音のことを話してみると、妻は全く気付かなかったようで、一度も目が覚めることはなかったと言っていました。

一体あの女性は何だったのか…
このホテルに因縁のある何かなのか…
全ては分からないままです。

これが、私が人生でたった一度だけ経験した恐怖体験です。

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