【怖い話|実話】短編「蠅取り紙」心霊怪談(長野県)

長野県:蠅取り紙
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投稿者:かる さん(50代/男性/会社員)
体験場所:長野県軽井沢町の某コテージ

これは私が学生時代の頃、アルバイト先にいた社員のAさんから聞いた話です。

Aさんは大学生の時、テニスサークルに所属していました。

大学三年生のある時、サークルで仲が良かった友人4人で、軽井沢のコテージを予約して旅行に行ったそうです。

車1台に4人で乗り込むと、行きの車中からワイワイ楽しく、現地まではあっという間だったそうです。

チェックインは15時以降なのですが、昼前に到着してしまった4人は、とりあえずテニスコートを借りて軽く汗を流してから宿泊予定のコテージへと向かったそうです。

受付を済ませ、4人用コテージの中に入ってみると、広い部屋の両サイドに二段ベッドが設置してあり、真ん中には大きなテーブルが置いてあります。

「お!いい部屋じゃん!」

そう言って荷物を下ろすと、4人ははしゃぎながらそれぞれのベッドを決めました。

改めて部屋の中を見回すと、少し高めの天井に、何枚かの蝿取り紙がぶら下がっているのに気が付きました。

【怖い話|実話】短編「蠅取り紙」心霊怪談(長野県)-画像01
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だらしなくぶら下がったそれは、なんとなく綺麗なこの部屋には似つかわしくないと感じましたが、高原の夜は蚊や蠅も多いのだろうと、別段気にすることもありませんでした。

一通り部屋を見終わり、ちょっとゆっくりしようとした時、友人のB君がどことなくソワソワして居心地悪そうにしていることに気が付いたそうです。

「どうかした?」

そう声を掛けると、B君は、

「うーん…なんかこの部屋、ちょっと変な感じしないか?」

と、B君本人も何が変なのかは分からないような感じで、ただどことなく落ち着かな様子なのです。

ですが、Aさんも他の2人も特に部屋に対する違和感などなく、

「いや、別に?」

と答えると、

「そう、だよな…」

と、B君はどこか納得いかないような、歯切れの悪い返事をします。

…部屋に一瞬、妙な沈黙が走りました。

ですが結局、原因も何も分からないような感覚を気にしていても仕方ないということで、気を取り直して4人はお酒を飲みながら色々な話をしたり、ゲームをしたりして、とても楽しい時間を過ごしました。

夜も更けてきた頃、Aさんは立ち上がり、

「ちょっとトイレ行ってくるわ」

そう言って外に出ました。

このコテージに一点だけ難があるとすれば、部屋にトイレが付いていない事でした。

トイレは外の共同トイレを使う必要があり、そこはコテージから少し離れた場所にありました。

Aさんはトイレで用を足し、数分後にコテージに戻ってきたのですが、玄関を開けた瞬間、妙な違和感を感じました。

さっきまでみんなでワイワイ騒いでいたはずの部屋が、まるで水を打ったかのように静かなんです。

「…どうした?もう寝たのか?」

と声を掛けながらAさんが部屋に入ると、残っていた3人は皆一様に怯えた表情で天井を見上げています。

「…え?どうしたの?」

と、その妙な雰囲気に尻込みしてAさんがもう一度聞くと、

「うえ…上を見てみろ…」

そう答えた友人が指差す方を見上げると、来た時にはユラユラぶら下がっていたはずの蠅取り紙が、全部天井にべたーっと張り付いているんです。

【怖い話|実話】短編「蠅取り紙」心霊怪談(長野県)-画像02
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窓は少し開けていたものの、蠅取り紙が天井に張り付くほどの強い風は吹いていません。

そもそも、それぞれの紙は一定の方向ではなく、全部がバラバラの方角を向いて張り付いており、風による現象とは考えにくい状態です。

「なに…これ?一体いつからこうなってたんだ?」

とAさんが聞くと、

「分からない…Aが出て行ったあと、ふと天井を見たらもうこうなってたんだ…」

誰かがそう話す間も4人は天井を見上げたまま、みんな同じことを考えていたとAさんは言います。

到着した時にBが言っていたこと。
「この部屋、変な感じしないか?」

4人とも急に気味が悪くなり、

「もう…寝ようぜ」

と、誰からともなく、それぞれベットに潜り込んでいきました。

翌朝、なんとなく昨晩の気持ち悪さを引きずったまま、4人は早々にコテージを出て家路に付いたのだそうです。

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それから数日後。

また4人で集まって話していると、話題は当ぜん先日の旅行の話になります。

気味の悪い体験ももはや過去のことで、「あの時は少し怖かったよなぁ」などと笑っていると、

「そういえば、旅行の写真持ってきたよ!」

と、旅行中、使い捨てカメラで勝手にパシャパシャと写真を撮っていた友人が言いました。

「お!いいじゃん!早く見せて!」

と、みんなで写真を見ながら旅行のことを思い出して笑っていると、

「あれ?これ、すごくいい感じじゃない?」

と、一枚の写真を指差して友人が言いました。

「お、ホントだ!いいじゃん!」

みんながそう口々に言いながら見ている写真には、4人がカメラを意識することなく自然な感じで会話している様子が写っていたそうです。

「写真を撮られてるって、誰も気づいてない感じだよね。」

と誰かが言うと、Aさんはあることに気が付いて背筋が凍りました。

「でも、これ・・・誰が撮ったの?」

「え?・・・」

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笑顔のまま固まったみんなの顔から、どんどん血の気が引いて行くのが分かりました。

写真には、旅行に行ったメンバーの4人全員が写っています。
使い捨てカメラなので、タイマー機能などもありません。

一瞬であのコテージで感じた不穏な空気が4人を包み込みました。

後日、みんなで写真を持参してお祓いに行ったそうです。

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